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ヴァイオリンのためのロンド K.269 (261a)
〔作曲〕 1775-77年 ザルツブルク |
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1777年9月23日、モーツァルト(21才)は母マリア・アンナ(57才)と二人で就職活動のためパリを目指してザルツブルクを旅立った。
父レオポルト(58才)と姉ナンネル(26才)にとって、これはマリア・アンナとの最後の別れとなった。
彼女は翌年7月3日パリで客死し、帰らぬ人となるからである。
その別れの日、レオポルトは自分を落ち着かせるだけで精根尽き果て、出発する息子に父親としての祝福を与えるのを忘れるほどで、2階に上がり椅子に倒れ伏してしまった。
気がついて窓に駆け寄ったときには既に二人の姿は見えなかった。
ナンネルはと言えば、すっかり元気を失い、レオポルトが慰めるのに苦労するほど泣き崩れ、頭痛を訴え、吐き気を催し、雨戸を閉めた部屋で寝込んでしまった。
そのそばで飼い犬のビンベスが寄り添っていたという。
余談であるが、ビンベス Bimbes(愛称ビンバールまたはビンベルル Bimberl)はフォックステリア種の犬で、カナリアとともにモーツァルト家の一員だった。
のちにモーツァルトがザルツブルクを離れウィーンで自立したときもやはり小鳥と犬を飼っているが、犬には同じ名前ビンベスをつけている。
彼の心の中には幸福だった頃の一家4人とカナリアとビンベスの生活がいつまでも忘れられずに残っていたのである。
なお、モーツァルトは姉に対して「カナリア姉さん meine schwester die Canaglie」と言っている。
それに対して自分は屈託なく陽気なビンベスと同じように思っていたのだろう。
家族が笑っているときはハメをはずすほどはしゃぎ回り、悲しんでいるときにはおどけて見せて慰めるのが自分たちの役割だとモーツァルトとビンベスは思っていたのかもしれない。
二人が旅立ってすぐ、父はミュンヘンの宿泊先の息子に手紙を書き送っている。
1777年9月25日ここに書かれた曲がアダージョ(K.261)とこのロンドだと思われている。 自筆譜には「ロンドー」とだけ書かれ、日付はない。 アダージョの方にはレオポルトが「1776年」と記し、またアダージョとロンドーの2曲が「作品99」として出版されたことから一組の作品と扱われることが多い。 しかしモーツァルトがこの2曲を同じ目的・意図で書いたかどうかはわからない。 ロンドについては新全集は1775年から1777年の作曲としている。
ところでカマス色の灰色のズボンを置いていってしまったね。 もしほかに機会がなければ、このズボンは、『アントレッター音楽』、いくつかの『コントルダンス』、ブルネッティのために作られた『アダージョとロンドー』、それにまだほかにも私の手に入るものがあればそれと一緒に配達夫に渡そう。[書簡全集 III] p.43
〔演奏〕
CD [BMG 74321 21278 2] t=6'03 スーク (vn), プラハ室内管弦楽団 1972年 |
CD [POCL-3632/3] t=6'17 藤川真弓 (vn), ヴェラー指揮 Walter Weller (cond), ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団 Royal Philharmonic Orchestra 1980年、ロンドン |
CD [グラモフォン 415-958-2] t=6'11 パールマン Itzhak Perlman (vn), レヴァイン指揮 James Levine (cond), ウィーンフィル Wiener Philharmoniker 1985年6月、ウィーン |
CD [claves KICC-9308/10] t=6'42 グッリ Franco Gulli (vn), ジュランナ指揮 Bruno Giuranna (cond), パドヴァ室内管弦楽団 Orchestra da Camera di Padova 1989年5月、パドヴァ |
CD [POCL-4178/9] t=6'28 スタンデイジ Simon Standage (vn), ホグウッド指揮 Christopher Hogwood (cond), エンシェント室内管弦楽団 Academy of Ancient Music 1990年8月、ロンドン ※スタンデイジ使用のヴァイオリンは、ストラディヴァリ1708年製「ダンクラ」のコピー(1987年ディヴィッド・ルビオ製作) |
CD [Virgin Classics, 7243 5 61576 2 0] t=7'00 ハジェット Monica Huggett (vn, cond)指揮, Orchestra of the age of enlightenment 1991年3月、ロンドン |
〔動画〕
〔参考文献〕
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