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ヴァイオリン協奏曲 第5番 イ長調 K.219

  1. Allegro aperto イ長調 4/4 ソナタ形式
  2. Adagio ホ長調 2/4 ソナタ形式
  3. Tempo di menuetto - Allegro イ長調 3/4 ロンド形式
編成 vn, 2 ob, 2 hr, 2 vn, 2 va, bs
作曲 1775年12月20日 ザルツブルク
1775年12月




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5曲から成る一連のザルツブルク協奏曲(変ロ長調 K.207、ニ長調 K.211、ト長調 K.216、ニ長調 K.218、イ長調 K.219)の最後の作品。 作曲の動機は不明であり、モーツァルト自身またはザルツブルク宮廷楽団のヴァイオリン奏者ブルネッティのために書いたと思われている。 モーツァルトのヴァイオリン協奏曲は、習作的とも言われる第2番からわずか半年で急速に進歩し、様々な工夫を凝らした魅力的な作品となって完成し、アインシュタインの言葉によれば「クライマックスに達した」のであった。 1774年から75年にかけて、モーツァルトは「ギャラントリー」に傾倒していたといわれているが、同時に

夢想が控え目なノスタルジーに限りなく近くなる。 強度が節度に比例するといったような、ひたすら半濃淡な照らし方の秘密を、モーツァルトだけが手に入れることができたのだ。 円熟期の傑作のなかで決定的な役割を演ずることになるこの事柄は1774年からはっきりと現れるのである。 たとえば、『ファゴット協奏曲』(K191)のアンダンテと、K216 と K219 の『ヴァイオリン協奏曲』の展開部など。
[オカール] p.48
と指摘されているように、この作品において、明るく陽気なフランス風の様式と翳りのあるドイツ的な表現とがバランス良く混じり合い、それをザスローは「すばらしい第1楽章に満ちあふれた陽気な気分は、潜在する詩情を隠しはしない」と言っている。 また、アインシュタインも「イ長調コンチェルトの光輝、情のこまやかさ、機智は凌駕することのできないものである」と高く評価していた。

のちに第2楽章の代用として、1777年に新しくやはりホ長調のアダージョ K.261 を作っている。 それはモーツァルトが母とともにマンハイム・パリ旅行に出たとき、レオポルトが 「ブルネッティ用のアダージョの楽譜もあります。この一曲は彼にはすこし技巧的すぎたからです。」 と書いた手紙(1777年10月9日)にあるものと見なされている。 ちなみにホ長調はモーツァルトにとって珍しい調性である。 第3楽章は「トルコ風」とも呼ばれているが、それについてアインシュタインは次のように評している。

終楽章においては、まえの二曲のロンドの引用楽句の代りに、《トルコ風》に見せかけた激越さのユーモラスな爆発がある。 この《トルコ風》の間奏部のなかのイ短調の騒がしいトゥッティはモーツァルトが自分自身から借りたものである。 すなわち、彼が1773年にミラノで自分の『ルチオ・シルラ』(K.135)につけて書いたバレー音楽『後宮の嫉妬』(Le gelosie del Seraglio)(K.Anh.109)から借りたのである。 それは偶数拍子でできており、主部の抗しがたく愛らしい《テンポ・ディ・メヌエット》と、不可解なほど自明的に結びついている。
[アインシュタイン] p.383
ただし、そのバレー音楽『後宮の嫉妬』はモーツァルトの作品ではなく、シュタルツァーらの既存の曲の寄せ集めであるといわれる。

当時の西ヨーロッパでは「トルコ風」の音楽が流行していたが、この曲でモーツァルトが聴衆に異国的な感じを伝えるために用いた特徴は

跳躍する旋律、打楽器的な連打音のあるドローン低音、旋律の奇妙な半音階的タッチ、たいていトリルやターンのかたちをとる渦を巻くような装飾、生き生きとした行進曲のようなテンポ
[全作品事典] p.189
であるといい、このような作曲に影響を与えた可能性が最も大きいのはザルツブルクにおける先輩ミヒャエル・ハイドンであったろうとザスローは見ている。 その根拠として、ハイドンはザルツブルクに来る前にハンガリーで活動し、上記の特徴を持った擬トルコ風要素で味付けした曲をいくつも書いていることをあげている。

ザルツブルク協奏曲の前4曲の自筆譜が失われているのに対して、この自筆譜はワシントンの議会図書館に所蔵されている。

演奏
CD [TC-004] t=26'12
ハイフェッツ (vn), サージェント指揮室内管弦楽団
1963年
CD [BMG 74321 21278 2] t=29'51
スーク (vn), プラハ室内管弦楽団
1972年
CD [COCO-84526] t=28'29
ヴァルガ (vn, cond), ティボール・ヴァルガ室内管弦楽団
1976年?
CD [CLASSIC CC-1001] t=30'52
ムター Anne-Sophie Mutter (vn), カラヤン指揮 Herbert von Karajan (cond), ベルリンフィル Berliner Philharmoniker
1978年
CD [POCL-3632/3] t=29'06
藤川真弓 (vn), ヴェラー指揮 Walter Weller (cond), ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団 Royal Philharmonic Orchestra
1979年
CD [DENON 28C37-32] t=29'35
スーク Josef Suk (vn), プラハ室内管弦楽団 Prague Chamber Orchestra
1985年
※カデンツァは、ゲルマン、バドゥラ・スコダ、ヨセフ・スーク
CD [SRCR-9275] t=29'58
リン Cho-Liang Lin (vn), レッパード指揮 Raymond Leppard (cond), イギリス室内管弦楽団 English Chamber Orchestra
1986年5月、ロンドン
CD [claves KICC-9308/10] t=28'01
グッリ Franco Gulli (vn), ジュランナ指揮 Bruno Giuranna (cond), パドヴァ室内管弦楽団 Orchestra da Camera di Padova
1989年5月、パドヴァ
CD [POCL-4178/9] t=25'43
スタンデイジ Simon Standage (vn), ホグウッド指揮 Christopher Hogwood (cond), エンシェント室内管弦楽団 Academy of Ancient Music
1990年8月、ロンドン
CD [TELDEC WPCS-6135] t=26'02
ツェトマイアー Thomas Zehetmair (vn) 指揮(cond), フィルハーモニア管弦楽団 Philharmonia Orchestra
1991年
CD [Virgin Classics, 7243 5 61576 2 0] t=27'27
ハジェット Monica Huggett (vn) 指揮(cond), Orchestra of the Age of Enlightenment
1991年、ロンドン
CD [WPCS-12354/5] t=27'34
ギドン・クレーメル (vn), クレメラータ・バルティカ
2006年8月ザルツブルク音楽祭でのライブ
※カデンツァは R.D.レヴィン

参考文献

動画
[http://www.youtube.com/watch?v=tO7kZOa8Izc] (Part 1) t=4'58
[http://www.youtube.com/watch?v=xsGbvEe9Gqw] (Part 2) t=5'25
[http://www.youtube.com/watch?v=ULSLkLwYEOE] (Part 3) t=4'29
[http://www.youtube.com/watch?v=KcPydWaoVuQ] (Part 4) t=5'48
[http://www.youtube.com/watch?v=L9iS5a4SBA8] (Part 5) t=8'55
メニューイン (vn), カラヤン指揮、ウィーン交響楽団
[http://www.youtube.com/watch?v=nSF_4gGItHo] (1) t=9'56
[http://www.youtube.com/watch?v=IDQHw9OnxpE] (2) t=10'46
[http://www.youtube.com/watch?v=7XZTpf6MyBE] (3) t=6'37
ハイフェッツ Jascha Heifetz (vn)
[http://www.youtube.com/watch?v=5yO1ZnmKE5E] (Part 1) t=4'53
[http://www.youtube.com/watch?v=9qOV6v1-Aj8] (Part 2) t=4'23
[http://www.youtube.com/watch?v=LrBY1Avz368] (Part 3) t=6'26
[http://www.youtube.com/watch?v=T_89ZjjTGZM] (Part 4) t=8'50
ムター Anne Sophie Mutter (vn)
 


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2011/10/30
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