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ピアノ協奏曲 第23番 イ長調 K.488
〔編成〕 p, fl, 2 cl, 2 fg, 2 hr, 2 vn, va, bs |
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自作目録に上記日付で記載されている。 それはオペラ『フィガロ』(K.492)完成直前のことであった。 その忙しいときに、性格がまったく異なる2つのピアノ協奏曲が書かれた。 それがこの「イ長調」と「ハ短調」(K.491)である。 1786年3〜4月の予約演奏会のために作曲したと思われるが、いつ初演されたかは不明。 なお、この「イ長調」の自筆譜の初めの数葉は1784年3月から85年2月頃の紙であることから、タイソンは「1783〜84年か、または1784〜85年には作曲に取り掛かっていた」と推定している。
自筆譜の第1楽章で、オーボエのパートがクラリネットに直された跡があるという。 オーボエの代わりにクラリネットを使っている点で、第22番(K.482)、第23番(K.488)、第24番(K.491)の3つはモーツァルトのピアノ協奏曲の中で例外的な作品となっている。 第2楽章は珍しい嬰ヘ短調に転じ、またこれも珍しい「アダージョ」と指定されている。 彼の協奏曲の多くは「アンダンテ」であるが。 このアダージョ楽章は「短かいにもかかわらず、全曲の魂」(アインシュタイン)であり、ランドンは「薄絹の美しさ」と讃え、また久元は「モーツァルトが書いたアダージョの中でもっとも美しい」と言っている。 ただし次のように続けている。
この世のものとは思えない美しさと哀しみを湛えたこの雰囲気は、この曲でいきなり出てきたわけではなく、19歳のときに『ピアノ・ソナタ ヘ長調 第2番 K.280』をつくったとき、モーツァルトがすでに体現していたものだった。[久元] p.123
第1楽章にモーツァルト自身によるカデンツァがあるが、他の2つの楽章には用意されていない。 即興的な演奏が入り込む余地がないほどに、この作品は洗練されている(W.レーム)からであろう。 そのカデンツァはモーツァルトが残したもっとも完成度が高いカデンツァといわれる。
提示部経過句のパッセージを使って始め、転調させながらフェルマータが現れていったんは静まり、今度は、幻想曲風の動きがまた微妙な転調を伴いながら続き、右手が長いトリルを奏する間に左手は六連符で半音階的なパッセージを弾き、最後は右手のトリルで終える。 優雅な雰囲気とともに即興的なおもしろさも持っており、トゥッティの部分からの流れも自然で、ぴったりと曲のなかに嵌っている。自筆譜(第1楽章のカデンツァも)はパリ音楽院が所蔵。同書 p.186
余談であるが、8月8日、モーツァルトはドーナウエッシンゲンのヴィンター(Sebastian Winter, 1744-1815)に下の手紙を送り、自分自身の売り込みをはかった。
彼(42才)は元モーツァルト家の従僕であり、1763年6月のモーツァルト一家の西方への大旅行に伴っていたが、1764年3月3日にパリで別れ、生まれ故郷のドーナウエッシンゲンに戻り、フォン・フュルステンベルク侯ヴェンツェル(Joseph Wenzel Fürst von Füstenberg, 1728-83)に理髪師として仕えた。
モーツァルト一家の長い旅行中、11月にジュネーヴ、ローザンヌ、チューリッヒをまわってドーナウエッシンゲンに入り、そこに12日間も滞在していたが、フュルステンベルク侯の大歓迎を受け、モーツァルト姉弟は9日間も5時から9時まで演奏してみせたという。
それに対して父レオポルトは24ルイ・ドール、姉弟はそれぞれダイヤモンドの指輪を賜った。
ナンネルがもらった指輪は現在モーツァルテウム所蔵。
さて、その手紙とは
(1786年8月8日)手紙には作品のリストが書き出され、4つの交響曲、5つのピアノ協奏曲、ピアノとヴァイオリンのためのソナタ、ピアノ三重奏曲、ピアノ四重奏曲が曲首(インシピット)付きで並んであり、この中にこのイ長調のピアノ協奏曲が含まれていた。 モーツァルトの売り込みは不成功に終ったが、このとき6曲を除いてフュルステンベルク侯は買い取ってくれた。 そのうちピアノ協奏曲は「第16番ニ長調 K.451」、「第19番ヘ長調 K.459」、「第23番イ長調 K.488」の3曲。
もし侯爵様が、毎年、何曲かのシンフォニー、四重奏曲、いろいろな楽器のための協奏曲、あるいは侯のお好みの曲を注文してくださるお気持ちがあれば、そしてそのためになにがしかの年俸をぼくに与えてくださろうというお気持ちがあれば、いっそう早く、より本腰を入れて御期待にそえるでしょう。[書簡全集 VI] p.300
1786年9月30日ただしモーツァルトは新たな写譜を作って売り渡したのではなく、写譜工房トレークがウィーンで販売していた筆写譜を入手し、それを相場より高い値段でフュルステンベルク侯に転売したといわれている。 そうしてモーツァルトが得た収入額は143.5フローリン。 なお、9月30日の手紙ではモーツァルトは演奏楽器についてヴィンターに次のように書いている。
御希望の楽譜は、あす、郵便馬車で当地を発つことになります。 この手紙の終わりに、写譜の総額を記しておきます。
(中略)
ぼくが自分のために、あるいは愛好家や音楽通の小さなサークルのために(そとへ洩らさないといいう約束で)手もとに置いている曲が、よそで知られることはありません。 なぜならヴィーンでさえこれらは知られていないのですから。 そういうわけで、今回は特に三つの協奏曲を侯爵殿下に送らせていただきました。 その際、写譜代のほかに、それぞれの協奏曲について、6ドゥカーテンのちょっとした謝礼を添えなくてはなりませんでした。 そして、やはり他人の手にこれらの協奏曲をお渡しにならないよう、殿下にお願いしなくてはなりません。[書簡全集 VI] pp.309-310
イ長調の協奏曲には2本のクラリネットがあります。 もしそちらの宮廷にクラリネット奏者がいないなら、第1奏者がヴァイオリンに、第2奏者がヴィオラによって演奏されるよう、もとの調に、有能な写譜屋なら移調してくれるでしょう。
〔演奏〕
CD [WING WCD 46] t=24'22 ; MONO シュナーベル (p), ロジンスキ指揮ニューヨーク・フィル 1946年3月3日 カーネギー・ホール ※ シュナーベルは第3楽章途中で記憶の混乱により演奏をストップし、しばらくした後、再び演奏を続けた。 |
CD [BMG 74321306202] t=24'31 ギーゼキング (p), Andreae指揮 Tonhalle-Orchester 1949 |
CD [PHILIPS 32CD-3139] t=25'57 ; MONO ハスキル (p), ザッヒャー指揮ウィーン・フィル 1954年10月 ウィーン |
CD [エラート R25E-1009] t=26'28 ピリス (p), グシュルバウア指揮リスボン・グルベンキアンCO 1973年 |
CD [harmonia mundi VD 77560] t=24'56 デムス (fp), コレギウム・アウレウム 1975年6月 Cedernsaal Schloss Kirchheim |
CD [CLASSIC CC-1085] t=26'26 ポリーニ (p), ベーム指揮ウィーン・フィル 1976年 |
CD [ANF S.W. LCB-137] t=26'45 カーゾン (p), クーベリック指揮バイエルン放送SO 1980年 ミュンヘン |
CD [WPCC-5317] t=26'03 グルダ (p), アーノンクール指揮コンセルトヘボウ 1983年9月 アムステルダム、コンセルトヘボウ |
CD [PHILIPS 28CD-3001] t=26'29 内田光子 (p), テイト指揮イギリスCO 1986年7月 ロンドン、セント・ジョンズ・チャーチ |
CD [COCO-78050] t=25'17 ニコルソン (fp), クレマー指揮カペラ・コロニエンシス 1989年2月 ビーレフェルト、ルードルフ・エトカー・ハレ |
CD [PHILIPS GPA-2009] t=25'45 ブレンデル (p), マリナー指揮アカデミー |
CD [PILZ 9302] t=24'40 ジウリーニ (p), リッツィオ指揮モーツァルト・フェスティバルO |
〔編曲〕
CD [PHCP-11026] II. t=6'10 ヴァルガーデナ (p) 1995年 |
CD [TOCP 67726] II. t=7'21 Mario Angelov (p), ほか 1997年 |
CD [TELARC UCCT-1146] t=26'46 ジャック・ルーシエ・トリオ、弦楽合奏付きJAZZ演奏 2005年6月、パリ |
CD [PCCY 30090] II. t=4'37 ディール (p), ウォン (bs), デイヴィス (ds) 2006年 |
〔動画〕
以下の断片が新全集に採り上げられている。
〔参考文献〕
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