Mozart con grazia > ホルンのための曲 >
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ホルン協奏曲 第3番 変ホ長調 K.447

  1. Allegro 変ホ長調 4/4 ソナタ形式
  2. Romance : Larghetto 変イ長調 2/2 三部形式
  3. Allegro 変ホ長調 6/8 ロンド形式
〔編成〕 hr, 2 cl, 2 fg, 2 vn, 2 va, bs
〔作曲〕 1787年? ウィーン

モーツァルトはホルン協奏曲を4つ残しているが、どれも彼とは大の親友で、冗談と悪ふざけの相手として有名なロイトゲープのために書いている。 この曲の場合も、自筆譜の終楽章にその名前が書かれているという。 ただし、編成楽器を見ると、独奏ホルンと弦楽器以外は

となっていて、ほかの3曲とは違う工夫がなされている。 その楽器編成について、ロジャー・ヘルヤーは次のように作曲者の意図を指摘している。
これらの楽器の温かい音色に抒情的な音楽様式が加わり、また「ロマンツェ」と題された緩徐楽章は下属調の変イ長調であるため、他の協奏曲に比べて外面的な派手さが少ないが、非常に美しく親密な作品となっている。
[全作品事典] p.202
ほかの3曲は、演奏者ロイトゲープをからかうような悪ふざけが見られるのに対して、この曲の充実した真面目な内容から、4曲あるホルン協奏曲のうちの最高傑作と言われるほどであるにもかかわらず、いつ作られたのか不明である。 かつてドゥ・サンフォワは曲の様式から、1788-89年前の作曲ではないと言っていたが、1784年からの自作目録には載っていないので、1783年におかれていた。 また、この曲のもつ悪ふざけとは無縁な性格から、ドゥ・サンフォワは「協奏交響曲変ホ長調 K.297B」にも名前が出てくるプントのために書いたのではないかと推測していた。 アインシュタインもドゥ・サンフォワの側にたって
もしこのような作品をモーツァルトがその『主題による作品目録』に入れるのを忘れたなどということが考えられるとしたら、むしろもっとあとの成立時期を仮定したくなるのである。 それは全く独自のものである。 そして独奏者には、モーツァルトが《驢馬》のライトゲープには期待しなかった要求がなされている。 また楽器編成法も稀有で、さらに繊細であり、オーボエとホルンの代りにクラリネットとファゴットがはいっている。 中間楽章のロマンツェが下属調を取っていることは意味深長である。
[アインシュタイン] p.388
と評していた。

その後、自筆譜の研究から成立時期について大幅な見直しがなされた。 プラートは筆跡から1787年と推定し、タイソンは紙の研究から同じ結果を得たのである。 ただしタイソンによると、第2楽章ロマンツェはそれより早い時期かもしれないという。 この結果、筆跡、使用された自筆譜の紙、そして作曲様式が矛盾なく一致し、現在では「1787年または1788年ウィーン」成立説が定説となっている。 タイソンによると、この曲の自筆譜と同じ用紙で書かれているのは『ドン・ジョヴァンニ』だけだというが、すると父レオポルトの死を直面し、モーツァルトは冗談抜きでロイトゲープのためにこの曲を書いたのだろうか。 しかし、このような傑作がなぜ1784年2月9日から記録し始めた自作目録には載っていないのかは謎のまま残っている。 ヘルヤーによると

奇妙なことに、第1楽章と他の楽章にそれぞれ別のタイトル・ページとページ番号付けがなされていることから、モーツァルトが最初はロマンツェとフィナーレを作曲し、ようやくあとになってから第1楽章を付け加えて、3楽章の協奏曲にしたのではないかという明確な可能性が示唆される。
[全作品事典] p.202
演奏の機会がないのに作曲することはモーツァルトの流儀ではないので、1787年頃、ロイトゲープのためにホルン協奏曲を書かなければならない事情が生じたのだろう。 何らかの理由で、先に書かれていたロマンツェとフィナーレをもとに協奏曲を完成し、私的な演奏会でロイトゲープが初演したのかもしれない。 そのため、モーツァルトは自作目録にこの曲を記載することを忘れたのかもしれない。 ロイトゲープがこの謎のような曲をどのように演奏したのか興味が尽きない。

なお、第2楽章のロマンツェは1802年ウィーンで、ミハエル・ハイドンがホルン5重奏に編曲して出版したという。

〔演奏〕
CD [EMI TOCE-3042] t=15'39
ブレイン Dennis Brain (hr), カラヤン指揮 Herbert von Karajan (cond), フィルハーモニア管弦楽団 The Philharmonia Orchestra
1953年11月
CD [TKCC-30621] t=15'46
ダム Peter Damm (hr), ブロムシュテット指揮 Herbert Blomstedt (cond), シュターツカペレ・ドレスデン Staatskapelle Dresden
1974年3月、ドレスデン、ルカ教会
CD [POCL-5139] t=13'54
タックウェル Barry Tuckwell (hr, cond)指揮, イギリス室内管弦楽団 English Chamber Orchestra
1983年
CD [PHCP-10597] t=16'06
バウマン Herman Baumann (hr), ズカーマン指揮 Pinchas Zukerman (cond), セントポール室内管弦楽団 St.Paul Chamber Orchestra
1984年10月、ミネソタ
CD [RVC R30E-1025-8] t=15'47
ヴェスコーヴォ Pierre Del Vescovo (hr), パイヤール指揮 Jean Francsois Paillard (cond), パイヤール室内管弦楽団 Orchestre de Chambre Jean Francsois Paillard
1987年頃?
CD [ミュージック東京 NSC166] t=14'15
ハルステッド Anthony Halstead (natural hr), グッドマン指揮 Roy Goodman (cond), ハノーヴァー・バンド Hanover Band
1987年7月
CD [PHILIPS 422 509-2] t=15'58
ダム Peter Damm (hr), マリナー指揮 Sir Neville Marriner (cond), アカデミー室内管弦楽団 Academy of St Martin in the Fields
1988年1月、ロンドン
CD [OLYMPIA OCD 470] t=14'17
Herman Jeurissen (hr), グッドマン指揮 Roy Goodman (cond), オランダ室内管弦楽団 Netherlands Chamber Orchestra
1996年11月、アムステルダム
CD [Grammofon BIS-CD-1008] t=14'00
Christian Lindberg (hornbone), カントロフ指揮 Jean Jacques Kantorow (cond), タピオラ・シンフォニエッタ Tapiola Sinfonietta
1998年11月、フィンランド、タピオラ

<編曲>
CD [BVCF-5003] (3) t=2'27
ニュー・ロンドン・コラール
1984年
CD [Victor VICC-104] (2) t=2'43
モーツァルト・ジャズ・トリオ
1991年

〔動画〕

〔参考文献〕


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2014/10/26
Mozart con grazia