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ホルン協奏曲 第1番 ニ長調 K.412 / 514 (386b)

  1. Allegro (K.412) ニ長調 4/4 ソナタ形式
  2. Rondo : Allegro (K.514) ニ長調 6/8 ロンド形式
〔編成〕 hr solo, 2 ob, 2 fg (I), 2 vn, 2 va, bs
〔作曲〕 1791年1〜10月? ウィーン

ロイトゲープのために書いた4つのホルン協奏曲の一つ。 その第1番にあたるこの曲は2つのアレグロ楽章(第1楽章は完成、第2楽章は独奏パート以外はスケッチのみ)からなる作品としてケッヘル初版(1862年)に K.412 として置かれていた。 それとは別に、1797年4月6日という奇妙な日付を持つホルン協奏曲のためのロンドがあり、K.514 という番号で位置づけられていた。

その後、旧全集(1881年)では、1782年末のスケッチ K.412 を第1楽章とし、K.514 を第2楽章とする一つの作品とされ、さらにケッヘル第6版(1969年)では K.386b という番号で1782年のホルン五重奏曲(K.407 / 386c)と同じ時期に位置づけられた。 そして、作曲の経緯については、1782年末に書き始め、第1楽章を完成させ、第2楽章はスケッチのままに放置し、そのスケッチを1787年4月(それは父レオポルト・モーツァルトが5月に没した年である)に書き直して完成させ、モーツァルトは冗談のつもりで「1797年」と書いたものとされていた。 1937年にケッヘル第3版をまとめたアインシュタインは以下のように述べている。

伝承は2つの楽章、ニ長調のアレグロとロンドを組み合わせて、一つのホルン・コンチェルトを作り上げた。 アレグロのオーケストラに入っているファゴットが、ロンドの方には欠けているという理由からすでに、この2つの楽章が関連を持ちえないことが明らかである。 第1楽章でモーツァルトが独奏者をからかっている冗談は、ときとすると楽想の案出にまで干渉している。 上のような(*)ヴァイオリンの伴奏音型は、まじめな気分のモーツァルトには見られないものである。 この楽章は《のんき》に、鈍感な独奏者にぴったりするように書かれている。 モーツァルトが1787年の4月にもう一度書きおろし、その際相当に変化を加えたロンドは、ライトゲープとは別の名手のために考えられたものと見えるが、やはりまだいくぶんは同じ性格を持っている。
[アインシュタイン] pp.387-388
(*)楽譜の一部を提示しているが、ここでは省略

しかし、その後さらに事情が大きく変更された。 完成されたロンド K.514 について、プラートによる筆跡研究で「自筆でない」と否定され、また、タイソンによる使用楽譜の分析研究で「K.412 の自筆譜は1791年の最後の10ヶ月」のものであることが分かったのである。 新全集では、1782年作と思われていたアレグロ K.412 は死の年の最後の10ヶ月に書かれた、モーツァルト最晩年の最後の未完の協奏曲としている。 また、ロンド K.514 はスケッチをもとに弟子のジュスマイヤーが完成させて一つの作品としたものであり、恩師の死を悼んで 1792年に書き上げたものと考えられている。 そして後世の人がその年を 1797年と読み間違ったものらしい。

なお、よく知られているように、スケッチのロンド楽章で独奏ホルンが演奏する部分には 「静かに、ロバ君、勇気を出せ、早く、つづけろ、元気を出せ、頑張れ、畜生、ああ、なんという調子っぱずれだ…」と楽譜に書いて、モーツァルトはふざけながらも親友ライトゲープを励ましている。
このふざけた落書き付きの楽譜はマーシャル著「モーツァルトは語る」(高橋英郎&内田文子訳、春秋社)pp.554-555 で見ることができる。 また、その演奏としてはCD[OLYMPIA OCD 470]が出ている。

〔演奏〕
CD [EMI TOCE-3042] t=8'16
ブレイン Dennis Brain (hr), カラヤン指揮 Herbert von Karajan (cond), フィルハーモニア管弦楽団 The Philharmonia Orchestra
1953年11月
CD [RVC R30E-1025-8] t=8'18
ヴェスコーヴォ Pierre Del Vescovo (hr), パイヤール指揮 Jean-Francsois Paillard (cond), パイヤール室内管弦楽団 Orchestre de Chambre J-F. P.
演奏年不明
CD [TKCC-30621] t=8'28
ダム Peter Damm (hr), プロムシュテット指揮 Herbert Blomstedt (cond), シュターツカペレ・ドレスデン Staatskapelle Dresden
1974年3月、ドレスデン・ルカ教会
CD [POCL-5139] t=23'57
タックウェル Barry Tuckwell (hr, cond), イギリス室内管弦楽団 English Chamber Orchestra
1983年6・7月、ロンドン Henry Wood Hall
※タックウェル補筆
CD [PHCP-10597] t=8'58
バウマン Herman Baumann (hr), ズカーマン指揮 Pinchas Zukerman (cond), セント・ポール室内管弦楽団 St. Paul Chamber Orchestra
1984年10月、ミネソタ、セント・ポール
CD [ミュージック東京 NSC166] t=8'40
ハルステッド Anthony Halstead (natural hr), グッドマン指揮 Roy Goodman (cond), ハノーヴァー・バンド The Hanover Band
1987年7月、トゥーティング、オール・セインツ教会
※ジョン・ハンフリー補筆
CD [PHILIPS 422 509-2] t=9'08
ダム Peter Damm (hr), マリナー指揮 Sir Neville Marriner (cond), アカデミー室内管弦楽団 Academy of St Martin in the Fields
1988年1月、ロンドン
CD [OLYMPIA OCD 470] t=8'43
Herman Jeurissen (hr), グッドマン指揮 Roy Goodman (cond), オランダ室内管弦楽団 Netherlands Chamber Orchestra
1996年11月、アムステルダム The Beurs van Berlage
※Jeurissen補筆。ロンド楽章の落書き(Giorgio Mereu の声)との共演(t=3'55)もある。
CD [Grammofon BIS-CD-1008] t=8'13
Christian Lindberg (hornbone = alto trombone), カントロフ指揮 Jean-Jacques Kantorow (cond), タピオラ・シンフォニエッタ Tapiola Sinfonietta
1998年11月、フィンランド The Tapiola Concert Hall
CD [BICL 62193] I. t=4'34
近藤研二、松井朝敬(ウクレレ)
2006年、編曲

〔動画〕


 

ホルン協奏曲のためのロンド K.514

  • Allegro ニ長調 6/8

自筆譜に「1797年4月6日」なる日付があるが、それはモーツァルトの冗談とみなされ、ホルン協奏曲K.412 (386b)の第2楽章とされていた。 しかし最近、ジュスマイヤーが残されたスケッチから独自に書き上げた創作(1792年)と結論づけられている。

〔動画〕


 

〔参考文献〕


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2015/03/29
Mozart con grazia