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ピアノ・ソナタ(第15番)ハ長調 K.545
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新全集で第16番。
モーツァルト自身の作品目録に6月26日という同じ日付で4曲の作品
6月27日この手紙には、「ここに住んでいる10日のうちに、他の家にいる2カ月よりも多く仕事をしました」と書いているが、それが上記の4つの作品を含むものである。 この「初心者用」の小曲は既にいる弟子のためというより、稼ぐためにはピアノの生徒をもっと集める必要があり、その近い将来の弟子のための教材用とも考えられる。 なお、この曲は生前には出版されなかった。
今はとてもあなたの前に現れるだけの勇気がありません。 正直のところ、拝借したものをそんなに早くお返しすることがどうしてもできませんので、まだご猶予をお願いしなければならないからです! 目下私は、どうしてもお金を調達しなければならない事情にあります。 しかし、ああ、だれに頼ったらいいのでしょう? 最上の友よ、あなたのほかには一人もありません! せめて、ご友情をもって別途にお金をお世話下されば、ありがたいのですが![手紙(下)] p.139
作曲者の実生活の困窮を微塵も感じさせない優美なこの小曲は、一見やさしい技巧のため「ソナチネ・アルバム」に採用され、馴染み深い。 しかし作品は無駄のない透明な輝きとデリケートな美しさに溢れ、初心者にはその冴えきった表情を演奏するのは逆に無理だろう。 そのデリケートな曲想を表現するのには現代のピアノよりもモーツァルト時代のクラヴィコードの方が適していると久元は言う。
モーツァルト時代のピアノフォルテは5オクターヴの楽器が多かったが、クラヴィコードはもっと音域が狭く、5オクターヴある楽器は少なかった。 私が使っている楽器も4オクターヴ半で、モーツァルトのピアノ曲はこの音域に入らないことが多いのだが、この《ソナタ K545》は、ちょうど4オクターヴ半の音域に収まるのである。 クラヴィコードは鍵盤上でタッチを変えると直接弦に伝わるため、クラヴィコードでこのK545を弾くと、この音楽の微妙な色彩や表情の移ろいがより豊かに表現できるような気がする。微妙な色彩や表情の移ろいをつなぐ細かいパッセージが多い曲なので、軽いタッチの楽器で弾くなら「初心者用」かもしれないが、タッチの重い現代のグランドピアノでは演奏が難しい「上級者向けの作品」であるという。[久元] p.135
腕に自信のある奏者が、現代のフル・コンサート・グランドピアノで、バリバリと怒涛のごとく弾くとき、この音楽が持っている密やかさや微かな驚き、そしてこの音楽が持っている魅力は、そのほとんどが失われてしまうように思われる。これほど演奏の難しい曲があるだろうか。 また、これほどモーツァルトの音楽の真髄を物語るものはない。
この曲を弾くとき、ほんのちょっとした力みや自意識でもって、曲全体がいかに台無しになってしまうかを痛感する。 音の流れに身を任せ、響きを感じていくだけで音楽になるようにできている。 弾いている自分を見せつけようと余計な邪念が1グラムでも入ると、そこからモーツァルトの音楽が逃げていってしまうのだ。同書 pp.135-136
このソナータが「やさしい」のはただ名称だけのことである。 音の素材が薄手の陶器のようにもろくみえるこの小品の透明さを表現できるのは、きわめて偉大なピアニストだけなのだ・・・。ピアニストのギーゼキングはズバリ「モーツァルトのピアノ曲は、正しく演奏しようと思ったら、これほど易しく、しかもこれほどむつかしい音楽はない」と言った。 また、フィッシャーの「形式的よそおいはきわめて単純であるにもかかわらず、モーツァルトの曲の演奏がむずかしいのはそのためにほかならない」という言葉もこれに通じる。[オカール] pp.145-146
第1楽章ではイタリア・ヴェネツィアの音楽家アルベルティ(Domenico Alberti, ?-1740)が愛用したといわれるアルベルティ・バスの分散和音にのって提示される主題はサリエリのオペラの序曲から採られているという。 また、対する副主題にはモーツァルトの詳細不明なフルート四重奏曲(K.Anh.171 / 285b)の第2主題との類似が指摘されている。 第2楽章もアルベルティ・バスの分散和音にのって優美に流れてゆき、中間部はト短調で幻想的な曲想に変るのが印象的である。 第3楽章はタッタンタンと子供が喜びスキップするような主題が特徴的であるが、「決して騒がしい音楽ではなく、ごく簡潔な、締めの挨拶のようなもの」(久元)であり、最後には静かに何事もなかったかのように曲が閉じられる。
〔演奏〕
CD[TOCE-13252] t=11'37 リヒテル (p) 1956年 |
CD [PHILIPS 17CD-8] t=9'37 ヘブラー Ingrid Haebler (p) 1965年10〜11月 |
CD [PHILIPS GPA-2009] t=9'54 ヘブラー Ingrid Haebler (p) 1965年 |
CD [PHCP-9012] t=12'22 グルダ Friedrich Gulda (p) 1965年2月、ウィーン |
CD [PHCP-20328] t=12'22 ※上と同じ |
CD [SONY SRCR 2625] t=5'43 グールド Glenn Gould (p) 1967年7月 ※弾き飛ばす演奏で、聴く価値がない。 |
CD [DENON CO-3861] t=9'07 ピリス Maria Joao Pires (p) 1974年1〜2月、東京イイノ・ホール |
CD [WPCC-5277] t=9'07 ※上と同じ |
CD [TKCC-15151] t=7'26 レーゼル Peter Rösel (p) 1975年、ドレスデン、ルカ教会 |
CD [ASTREE E 7704] t=13'06 バドゥラ=スコダ Paul Badura-Skoda (pf) 1984年4月、ウィーン ※ヨハン・シャンツ製、1790年頃ウィーンで使われたフォルテピアノで演奏 |
CD [ACCENT ACC 8853/54D] t=11'27 ヴェッセリノーヴァ Temenuschka Vesselinova (fp) 1990年1月 ※アウクスブルクのシュタイン・モデル(1788)によるケレコム製(1978)フォルテピアノで演奏 |
CD [PHCP-10370] t=12'26 内田光子 Mitsuko Uchida (p) 1991年5月 |
〔編曲演奏〕
CD [EMI CDC 7 54102 2] t=10'11 Ransom Wilson (fl), Manuel Barrueco (g) 1990年頃 ※演奏者による編曲 |
CD [BMG VICTOR BVCC-8825/26] 第1楽章 t=3'09 ゴールウェイ James Galway (fl), ゲルハルト指揮 Charles Gerhardt (cond), ナショナル・フィルハーモニー管 National Philharmonic Orchestra 演奏年・場所不明 ※ゴールウェイ&ゲルハルト編曲 |
CD [Teldec WPCS-21226] t=14'29 レオンスカヤ Elisabeth Leonskaja (p), リヒテル Sviatoslav Richter (p) 1993年8月、ヨハニスベルク城 ※グリーグ編曲(2台のピアノ用) |
CD [WWCC-7261] t=13'13 丸山淑子・丸山裕美子 Toshiko & Yumiko Maruyama (p) 1994年9月、武蔵野市民文化会館小ホール ※グリーグ編曲(2台のピアノ用) |
<編曲>
CD [Victor VICC-104] (1) t=3'33 モーツァルト・ジャズ・トリオ 1991年 |
〔動画〕
[http://www.youtube.com/watch?v=pD59nWEi4GI] (1) t=4'37 [http://www.youtube.com/watch?v=SDG199MRF-o] (2) t=7'02 [http://www.youtube.com/watch?v=1eMKxZWyyZM] (3) t=2'10 内田光子 Mitsuko Uchida (p) |
[http://www.youtube.com/watch?v=c-wpBFtMigw] (1) t=5'01 [http://www.youtube.com/watch?v=YCY3r2jJEfM] (2) t=7'53 [http://www.youtube.com/watch?v=2_EwOoY0QpA] (3) t=1'52 Sviatoslav Richter and Elisabeth Leonskaja (p) with freely added accompaniment for a second piano by Edvard Grieg. |
〔参考文献〕
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