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ピアノとヴァイオリンのためのソナタ 第43番 ヘ長調 K.547
〔作曲〕 1788年7月10日 ウィーン |
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モーツァルトの最後のピアノとヴァイオリンのためのソナタ。 自作目録には「ヴァイオリンを伴う初心者用のクラヴィアのためのソナチネ」とあるが、「ピアノソナタ第15番ハ長調」(K.545)と同じく、皮肉なことに高度な演奏技術と表現力が要求され、初心者には難しい。 自筆譜は行方不明。 姉ナンネルに送ったのかもしれない。
よく知られているように、この年から死の年まで、モーツァルトは盟友プフベルクにさかんに借金を乞うようになるが、直前の6月27日に
このごろ、自分から市内に出かけて、お示し下さった友情に対して、じかにお礼を申し上げることができるものと、いつも思っていました。 ところが今はとてもあなたの前に現れるだけの勇気がありません。 正直のところ、拝借したものをそんなに早くお返しすることがどうしてもできませんので、まだご猶予をお願いしなければならないのです! 現在の状況もそうですが、あなたが私の望みどおりに援助して下さることができないということは、いろいろと心配の種になります! 目下私は、どうしてもお金を調達しなければならない事情にあります。 しかし、ああ、だれに頼ったらいいのでしょう?と書いたばかりだった。 しかも17日に「千ないし2千グルデンを1年か2年の期限でお貸し下さい。 せめて明日までに数百グルデンだけでも」と書いていたあとのことであり、そのときプフベルクは200グルデン分の用立てを即日応じていたが、モーツァルトには急場を何とかしのぐことしかできなかった。 1786年にオペラ『フィガロの結婚』を、そして1787年には『ドン・ジョヴァンニ』を完成したが、その作曲報酬と公演配当を合せて、どちらも1000グルデンほども収入があったが、予約演奏会や楽譜出版からの収入が激減し、1788年になると作曲の注文もなくなり、さらに経済的な困窮は深刻となってきた。 ようやく1787年12月になって念願の宮廷作曲家のポストを得ることができたが、その年俸は前任者グルックの半額以下の800グルデンでしかなく、そしてよく知られているようにモーツァルト死後コジェルフはモーツァルトの倍の年俸でそのポストに就いたという曰く付きの安月給だった。 しかしそれ以外の収入は一定せず、子供の誕生、妻の長引く病気などがあり、市外の家賃の安い家に引っ越しても、ウィーンのような金のかかる都市で生活してゆくのは困難だった。 6月27日の手紙で「利子も含めて自分の給料から返すことができる」と保証しているが、もちろん返済できなかった。[手紙(下)] p.139
1786年と1787年にはモーツァルトの収入はいちじるしく落ち込み始める。 86年には2600グルデンしか収入がなかったと推定できるが、84年に比べると30パーセントの落ち込みである。このように家計が非常に苦しいときに何の目的があってこの「初心者のための」愛らしいソナタを書いたのだろう? 「純粋な気晴らし」という説もあるが、そうだろうか? モーツァルトが意味もなく「初心者用」とことわるはずがなく、誰か弟子すなわち「特定の初心者」のために作曲されたものかもしれない。 それによってモーツァルトはいくらかの収入を得たと考える方が自然である。
(中略)
しかし、88年に始まる2年間はさらに急落してしまう。 88年はウィーンに定住するようになってから最低の収入で、2000グルデンに及ばず、全盛期の66パーセント減となるが、89年はそれにも及ばず、およそ1500から2000の間となる。[ソロモン] pp.653-654
3つの楽章とも同じ「ヘ長調」で書かれている。 アインシュタインは「まるで再びパリかロンドンの時代の、彼の最初のピアノ・ヴァイオリン・ソナタに帰っているように見える」と評している。 第3楽章(その第4変奏をカットして)をモーツァルト自身がピアノ・ソナタに改編し、それが別の作品「K.54 (547b)」としてみなされている。 さらに、他楽章のピアノ・ソナタ編曲版もあり、最初から「ピアノとヴァイオリンのためのソナタ」として作曲されたものかどうか疑われていた。 たとえば、アインシュタインは
少なくとも2つの楽章、アレグロと変奏曲は、もとはたしかにピアノ独奏用のものであった。 なぜなら、ここではヴァイオリンはほとんど《交替》の役割を果たしていないからである。 ただ第一楽章アンダンテ・カンタービレだけが、短いにもかかわらず純正な、コンチェルト的な楽章で、技術と楽想のなかにユーモアをたたえている。 ところが、つづく2つの楽章では《初心者》のことがほとんど考慮されていない (ことに、二、三の変奏曲はモーツァルトの《最後の様式》で作られた傑作に加えられる。 これらの変奏曲のうちの最もすばらしい短調のものは、ピアノの楽譜にしか見いだされない) このことは、ピアノ楽譜がこの作品全体の本来の形だったことの、もう一つの証拠となる。 この変奏曲はそれ自体としてきわめて完璧なので、ただ伴奏するだけのヴァイオリン・パートをもつけ加えることができなかったのである。と主張していたが、現在は、最初から「ピアノとヴァイオリンのためのソナタ」として作曲されたものと結論づけられている。[アインシュタイン] pp.354-355
〔演奏〕
CD [東芝EMI TOCE-6725-30] t=17'47 クラウス (p), ボスコフスキー (vn) |
CD [ポリドール LONDON POCL-2084/7] t=18'59 ルプー (p), ゴールドベルク (vn) 1974年、ロンドン |
CD [キング KKCC-296] t=20'45 ヴェッセリノーヴァ (fp), バンキーニ (vn) 1993年11月 ※バンキーニは1780年クレモナ製のバロック・ヴァイオリンで、ヴェッセリノーヴァはシュタイン・モデルのケレコム製フォルテピアノで演奏 |
CD [SONY SRCR 1789] t=19'02 ブロンフマン (p), スターン (vn) 1994年2月、アメリカ、カリフォルニア |
〔動画〕
アレグレットの主題による6つのピアノ変奏曲 K.54 (547b)〔作曲〕 1788年7月10日以後 ウィーン |
「ピアノとヴァイオリンのためのソナタ第43番ヘ長調」(K.547)第3楽章「主題と6つの変奏」のピアノ・パートとまったく同じであり、そのつもりで作曲したものの第4変奏をカットしてピアノ・ソナタ(主題と5つの変奏曲)に改編した。 したがって、この曲の成立時期は K.547 の後、すなわち 1788年7月10日以後ということになる。 ウィーンのホフマイスターから1788年に出版されたが、その後1795年にアルタリアから出版されたときに、誰かが第4変奏を追加して元の6つの変奏曲にした。
ケッヘル初版では K.54、第2版では K.Anh.138a、そして第3版では K.Anh.135 と合せて一つの作品 K.547a(の一部、第3楽章)となり、さらに第6版からは再び切り離され、単独のソナタとして位置づけられている。 ただし、番号は上記のように成立時期を考えると初版の番号にはならず、K.547 のあとの K.547b となる。
〔演奏〕
CD [EMI TOCE-11557] t=3'34 ギーゼキング (p) 1953年 |
CD [TOCE-7514-16] t=7'17 バレンボイム (p) 1991年, 6変奏で |
CD [NAXOS 8.550611] t=7'29 ニコロージ (p) 1991年 |
〔動画〕
ピアノ・ソナタ ヘ長調 K.547a
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K.547a はケッヘル第3版による番号。 3つの楽章ともモーツァルトの別の作品からの編曲であり、第1楽章は「ピアノとヴァイオリンのためのソナタ第43番ヘ長調」(K.547)の第2楽章をピアノ独奏に、第2楽章は「ピアノソナタ第15番ハ長調」(K.545)の第3楽章(ハ長調)を移調し、第3楽章は K.547 の第3楽章である。 それら3つの楽章から成る一つの作品としてここに示すのはケッヘル第3版(アインシュタイン)のものである。 現在(新全集)は偽作とみなされ、真正のピアノ・ソナタではないとされている。
[事典]によると、1799年ライプツィヒのブライトコップから出版されたとき、「第1・第2楽章」と「第3楽章」とが別のものと扱われていた。 そして、ケッヒェル初版(1862年)では前者を「K.Anh.135」とし、後者を「K.54」としていた。 次の第2版では後者は「K.Anh.138a」とされ、付録にまわされていたが、 第3版(1937年)でアインシュタインは一つにまとめ、3楽章から成る「K.547a」とし、1788年6月26日以降ウィーンでの作と推測した。 しかし1959年に新説(マルグレ)が現れ、偽作とされるようになった。 第6版では再び2つに分けられ、前者だけが「K.547a」、後者は「K.547b」と切り離されたものの、付録扱いにはなっていなかった。
〔動画〕
〔参考文献〕
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