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K.525 アイネ・クライネ・ナハトムジーク ト長調セレナード 第13番 Eine kleine Nachtmusik in G for
〔作曲〕 1787年8月10日 ウィーン |
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自作目録第64番に「8月10日、アイネ・クライネ・ナハトムジーク、アレグロ、メヌエットとトリオ、ロマンス、メヌエットとトリオ、およびフィナーレから成る。 ヴァイオリン2、ヴィオラおよびバッシ」と記録されてある。 バッシとは低音弦のバスの複数形。 タイトル「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」は「小さな夜曲」という意味である。
この目録は大英博物館がインターネットで公開しているので見ることができる。 その中にある「Mozart's Thematic Catalogue - ff. 12v-13r」のページの一番下に記録されてあるのがわかる。
作曲の動機は不明。 また目録に記されていた第2楽章(メヌエットとトリオ)は、よく知られているように、行方不明であり、上記4楽章の形式で広く親しまれている名曲。 いつ、なぜ、という疑問が解決されず残ったままである。 作曲の動機について、アインシュタインは、直前に書いた『音楽の冗談』(K.522)で壊してしまった音楽の秩序を回復するための自分自身の内的衝動であると推測しているが、確証はない。 案外たわいもない動機だったのかもしれない。 ソロモンは、『音楽の冗談』や『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』などは、当時の遊び仲間だったジャカン家のサークルのために書かれたと見てもいいのではないかと考えている。
モーツァルトは作品にタイトルをみずから付けることが稀だったが、この曲には上記のように「Eine kleine Nacht-Musik」と自作目録に記載している。 しかし自筆譜にはそのようなタイトルはない。 また、目録では低音部をバッシと書いているだけだが、自筆譜では「チェロとコントラバス」となっている。 各パートが一人の奏者に割り振られているとすれば、5人の弦の独奏のための曲となり、そのような編成で演奏される例もあるが、弦楽合奏の曲と考えオーケストラ編成の演奏も可能である。 新全集は「第1、第2ヴァイオリン、ヴィオラが各2名、チェロ、コントラバスが各1名、つまり全部で8人程度の編成を提案している」という。
初版は1827年頃、オッフェンバッハの音楽出版者J.A.アンドレによる。 そのとき5楽章でなく、すでに4楽章になっていた。自筆譜は横長12段7葉13ページから成り、作者自身により枚数番号が付けられている。 それによると本来8葉のもので、初版のときに第3葉が失われていた。その自筆譜は1800年にコンスタンツェからアンドレに買い取られていたが、アンドレの死後、行方不明になった。 それが1943年にA.ゴルケという人物によって発見され、その後スイスのヴィルヘルム博士の所蔵となった。
第2楽章となるべきメヌエットとトリオの自筆譜は1800年以前にすでに失われていたと思われる。 アインシュタインは
おそらく四重奏曲の1楽章だった半ば偽作のピアノ曲「メヌエット 変ロ長調」K.Anh.136(Anh.C25.05)をト長調に移して挿入すれば、この作品の原型が見られだろう。と推測し、次のように続けている。[アインシュタイン] p.288
のちにライプツィヒのトーマス・カントル、アウグスト・エーバーハルト・ミュラーが黙って自分のものだとした変ロ長調のソナタの一楽章(K.Anh.136)を真作と考えるのである。 事件は多分次のように演ぜられたのであろう。 夫のフラグメントを売却したかったであろうコンスタンツェが、その一つ(この楽章のはじめの部分)をライプツィヒの出版者トーヌスに鑑定させるために送付した。 トーヌスはこれを完成させ、『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』の失われた第一メヌエット(どうしてか知らないが、とにかく彼はこれを手に入れた)をそのメヌエットとして使い、ミュラー作曲の2楽章を補って、モーツァルトの名のもとに世に送った。そしてアインシュタインは、カントルとミュラーが「聴衆をいくぶん愚弄したかごまかしたかしたのを、告白して正すべき時期を失したため」黙っていたのだと説明している。 しかし、その59小節から成るトリオつきの断片は弦楽四重奏曲としてはよくできているが、このセレナードの第2楽章としては違和感があるという意見がある。 なお、その「メヌエット 変ロ長調」K.Anh.136(Anh.C25.05)を演奏したCDがある。同書 p.342
余談であるが、河出書房による「レコード付きの世界音楽全集」が刊行され、その第4回配本「モーツァルト 1」(1967年9月、左の写真)のレコードに録音された最初の曲がこの『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』だった。 すなわち、この曲はモーツァルトの代名詞とも言える最も有名な曲であり、したがって演奏の機会も最も多い作品である。 しかしこれほど有名な曲が書かれた事情がまったくわからないのは非常に残念であるが、父の死(5月28日)が遠因としてあるのだろうか。 ランドンが「18世紀文化のすべての美しさを代表し、古今のあらゆるセレナードの中で最も偉大な作品」と評したこの「セレナード」のわずか2週間後には「父なる神が世界の一瞬間だけいっさいの運動を停止させたかのような、魂と芸術との均衡が達成されている」と賞賛し、またアインシュタインが絶賛した「ピアノとヴァイオリンのためのソナタ イ長調」(K.526)とが書かれている。 ちょうどこのころモーツァルトは『ドン・ジョヴァンニ』(K.527)の作曲の真っ最中であり、そのため「とてもたくさん仕事がある」(8月1日)と言いながら、父の遺産相続について姉ナンネルと面倒な交渉を手紙で続けていた。 このような、作曲者にとって精神的に落ち着かない時期に「息を呑むような美しさと、高い完成度を持つ珠玉の作品」(ランドン)が書かれたことは驚きであり、奇蹟と言っても過言でない。
この天上の音楽を書いて貰ったのは誰だったのだろうか・・・。 モーツァルトの偉大な音楽といえば、『ドン・ジョヴァンニ』やハ短調のピアノ協奏曲、ト短調のシンフォニーなどのことばかり思い出す人は多いが、それは、モーツァルトの多重的な、あるいは万華鏡的な性格のうちの、明るい一面を身損じているものである。 『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』の持つ優しく温かい完成美は、そのみごとなほどに洗練された外観のもとに、ト長調の明るさとハ長調の高揚とを併せ持つが、同時にモーツァルトの常として、悲しみが表面のすぐそばに漂っている。[ランドン] p.48
〔演奏〕
CD [WPCC-4124] t=17'26, MONO ウィーン・コンツェルトハウスQ 他 Anton Kamper (1.vn), Karl Maria Titze (2.vn), Erich Weiss (va), Franz Kvarda (vc), Joseph Hermann (cb) 1953年頃、ウィーン・コンツェルトハウス |
CD [PHILIPS PHCP-20417] t=17'12 ゴールドベルク (vn) 指揮 オランダCO 1958年4月、アムステルダム |
CD [SONY SRCR 8830] t=22'33 カザルス指揮マールボロ音楽祭管弦楽団, Pablo Casals (cond), Marlboro Festival Orchestra 1967年7月16日マールボロ音楽祭ライブ |
CD [CLASSIC CC-1029] t=19'19 ベーム指揮ベルリンPO 1971年 |
CD [PHILIPS PHCP-10102] t=17'43 イ・ムジチ I MUSICI 1972年 |
CD [PHILIPS 420 816-2] t=17'47 イ・ムジチ I MUSICI 1982年 |
CD [PHILIPS 416 386-2 / GCP-1008] t=16'56 マリナー指揮アカデミー Neville Marriner (cond), Academy of St. Martin in the Fields' Chamber Ensemble 1985年11月、ロンドン |
CD [POCG 50023] t=17'13 オルフェウス室内管弦楽団 1985年12月, State University of New York |
CD [ERATO WPCS-11108] t=19'19 コープマン指揮アムステルダム・バロック管 1988年11月 ハールレム |
CD [SONY SRCR-8948] t=19'15 ヴァイル指揮ターフェルムジーク・バロック 1990 |
CD [AMCY-19010] t=17'25 クレメラータ・バルティカ Kremerata Baltica ; Gidon Kremer (vn), Eva Bindere (vn), Ula Ulijona (va), Marta Sudraba (vc), Danielis Rubinas (cb), Reinut Tepp (hc) 1999-2000年 |
<5楽章>
CD [ポリドール F35L-21020] t=25'59 ザロモンQ ; Simon Standage (vn), Micaela Comberti (vn), Trevor Jones (va), Jennifer Ward-Clarke (vc) ; Barry Guy (cb) 1983年10月, London, Kingsway Hall ※ アトウッドの練習帳の中からメヌエットとトリオを選びだし、第2楽章に挿入。ホグウッド編曲。 |
<編曲>
CD [KKCC-2035] t=24'11 ニーウコープ, オールトメルセン (og) ; Hans van Nieuwkoop, Jacques van Oortmerssen 1988年8月 オランダ ※ バハマン、オールトメルセン、ニーウコープによる四手のためのオルガン編曲。 |
CD [Victor VICC-104] (4) t=2'33 モーツァルト・ジャズ・トリオ 1991年 |
CD [PHCP-11026] (2) Romanza t=4'50 モダン・マンドリン・カルテット 1995年 |
CD [BICL 62193] 近藤研二、松井朝敬(ウクレレ) 2006 |
〔動画〕
「偽作・疑作」の部に置かれている。
〔演奏〕
CD [EMI TOCE-11559] t=4'27 ギーゼキング (p) 1950年代 |
〔参考文献〕
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