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ピアノとヴァイオリンのためのソナタ 第42番 イ長調 K.526

  1. Allegro molto イ長調 6/8 ソナタ形式
  2. Andante ニ長調 4/4 ソナタ形式
  3. Presto イ長調 2/2 ロンド形式
〔作曲〕 1787年8月24日 ウィーン
1787年8月


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作曲に至る事情は不明であるが、このソナタが有名な「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」(K.525)と「ドン・ジョヴァンニ」(K.527)の間に位置することから、また、それらには父レオポルトの死(5月28日)との関連がいろいろ指摘されていることから、このソナタにもそのような性格を感じさせる。 オカールは「彼の作品目録のなかに、彼に衝撃をあたえたその死別への直接の反応を表した作品がないかと捜してもむだである」とことわりつつも、「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」と比較してこのソナタを次のように評している。

これよりももっと重要で深いのは、最後の『ヴァイオリンとピアノのためのソナータ』である。 セレナードにおけるのと同じような「古典的」な完璧さがそこにはある。 主要な楽章はアンダンテだが、そのニ長調は数多くの転調を経験する。 気高い孤独の、重々しくひっそりとした音楽のなかに、荒涼としていながら平静な悲しみの歌が立ち昇る。 だが、そんな憂愁も、典型的なモーツァルト的対位法がきわめて緻密で微妙になるこの二重奏の透明さのなかで和らげられることになる。 これはすでにモーツァルト最後の年の澄み切った書法だといってよく、それぞれの音がこのうえなく貴重に、正確なリズム的状況において響くのである。
[オカール] p.135
しかし一方で、このソナタはこの年の6月20日に亡くなったアーベルへの追悼のためとも言われている。 その理由は、終楽章の主題が彼の「ヴァイオリン・ソナタ イ長調」作品5-5からとられていることである。 アーベルは1725年にケーテンに生まれ、ライプツィヒでセバスティアン・バッハの教育を受けた。 その後ロンドンでヴィオラ・ダ・ガンバの名演奏者として活躍しつつ作曲活動も盛んに行っていた。 彼の音楽上の知識は卓越していて、また相当の自信家だったようである。 幼いモーツァルトの西方への大旅行(1763年6月9日から1766年11月29日まで)のとき、1764年ロンドン滞在中に両者の出会いがあったはずであるが、そのときどのような場面が繰り広げられたのか不明である。 モーツァルトがアーベルをどのように見ていたかもわからない。 レオポルトはザルツブルクの家主ハーゲナウアーに宛ててロンドンにおける奇跡を書いている。
1764年5月28日
国王はあの子の前にヴァーゲンザイルの曲ばかりでなく、バッハ、アーベル、それにヘンデルの曲も差し出されましたが、全部をあの子は初見で弾きとばしたのです。 あの子は国王のオルガンで、みんなが彼のオルガン演奏をクラヴィーアを弾くよりもずっと高く評価するほどみごとに演奏しました。
[書簡全集 I] p.157
もしこのような状況を目の前で見たとき、自信家のアーベルはどう感じたか知りたいものである。 わずか8歳の子供が自分(そのときアーベルは39歳)の力量に迫ろうとしているのを見た場合、内心穏やかではないはずだが。

この曲の評判は高く、アインシュタインは次のように絶賛している。

この曲においてモーツァルトは、ピアノとヴァイオリン・ソナタの分野でも完璧な《諸様式の融和》に到達しえている。 この曲はバッハ的であると同時にモーツァルト的である。 三声の対位法楽曲であり、同時にガラントである。 また緩徐楽章では、あたかもすべての善人に生存の苦い甘みを味わわせようと、父なる神が世界の一瞬間だけいっさいの運動を停止させたかのような、魂と芸術との均衡が達成されている。 このソナタはベートーヴェンの『クロイツェル・ソナタ』の先駆と呼ばれている。 しかしこのソナタは《劇的なもの》、情熱的なものを避けて、十八世紀の限界内にとどまっているのであり、そのためにいっそう完全度を高めているのである。
[アインシュタイン] p.354

〔演奏〕
CD [KICC-2205] t=20'59
ホルショフスキー (p), シゲティ (vn)
演奏年不明
CD [KICC-2205] t=18'27 ; mono
フェルデシュ (p), シゲティ (vn)
1943
CD [東芝EMI TOCE-6725-30] t=25'58 ; mono
クラウス (p), ボスコフスキー (vn)
演奏年不明
CD [・・・] t=21'36
ハスキル (p), グリュミオー (vn)
1956
CD [DENON COCO-9167] t=21'08
オルベルツ (p), ズスケ (vn)
1971
CD [LONDON POCL-2084/7] t=20'56
ルプー (p), ゴールドベルク (vn)
1974
CD [Calliope CAL.9665] t=21'08
Bogunia (p), Messiereur (vn)
1985
CD [キング KKCC-296] t=23'58
ヴェッセリノーヴァ (fp), バンキーニ (vn)
1993
CD [PILZ Vienna Master CD 160186] t=25'59
Molzer (p), Zwicker (vn)
CD [カメラータ東京 30CM-334] t=26'18
ランダル (p), インデアミューレ (ob)
1993
オーボエ演奏
CD [PHILIPS UCCP-1103] t=24'40
内田光子 (p), スタインバーグ Mark Steinberg (vn)
2004年6月 - 7月、スネイプ、モルティングス

〔動画〕

〔参考文献〕

 

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2016/10/09
Mozart con grazia