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三重奏曲 変ホ長調 「ケーゲルシュタット」 K.498
〔作曲〕 1786年8月5日 ウィーン |
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楽器編成から「クラリネット三重奏曲」とも「クラヴィーア(ピアノ)三重奏曲」とも呼ばれるこの曲は、友人ゴットフリート・ジャカン(1767-92)の妹フランチェスカ(1769-1850)のために作った(ウィーンの女流作曲家カロリーネ・フォン・ピヒラー Caroline Pichler 伝)といわれている。
また、九柱戯 Kegelstatt の遊びに興じながら作ったともいわれ、「ケーゲルシュタット・トリオ」と呼ばれているが、それは「2本の管楽器のための12の二重奏曲」通称『ケーゲルデュエット Kegelduette』(K.487)の逸話と混同しているとも言われ、確証はない。
このころモーツァルトは友人ジャカンの家(そこにはフォルテピアノがあった)で打ち解けた時間を過ごしていた。
共通して美神に身を捧げ、合理主義の使徒となり、迷蒙を軽蔑し、正義への情熱を抱いていた。 そして彼らはみな遊びが大好きだった。 彼(ゴットフリート)と同様に妹のフランツィスカもモーツァルトのお気に入りで、歌手で、ピアノの弟子であった。 彼ら三人は毎週ジャカン邸に集まっておしゃべりし、ゲームに耽り、音楽をやるグループの核となる存在だった。そんな集まりにクラリネット奏者シュタトラーが加わり、この曲を楽しんだと思われる。 モーツァルトがヴィオラ、クラリネットは名手シュタトラー(33歳)、ピアノはフランチェスカ(17歳)で演奏したのだろう。 フランツィスカに対して、モーツァルトは[ソロモン] p.487
(1787年1月15日、プラハからウィーンのゴットフリート・フォン・ジャカンに)と言っているように、熱心に練習してくれれば一緒に演奏できる程度の能力を認めていた。 なお、ここでディニミニニミ嬢というのはゴットフリートの妹フランツィスカにモーツァルトがふざけてつけた名前であり、この手紙で自分も含めて友人たちに遊び半分のあだ名を書いて楽しんでいた。
妹さん(ディニミニニミ嬢)の手に100000回のキスを贈って、新しいピアノフォルテで一生懸命に勉強するように頼んでほしい。 でも、この忠告は要らないかもね。 だって、まさに彼女ほど熱心に専心する弟子を、まだぼくは持ったことがないのを告白しなくてはいけない。[書簡全集 VI] p.341
1788年9月27日の「ウィーン新聞」に「ヴァイオリンあるいはクラリネットを伴うクラヴィーアのためのソナタ、作品14、1フローリン20クロイツェル」という新譜広告が出た。 すなわち、クラリネットのかわりにヴァイオリンでの演奏が可能であることが示唆されている。 これについてアインシュタインは
しかしヴァイオリンのパートはクラリネットでしか演奏できないし、またクラリネットで演奏すべきものであろう。といい、さらに
(中略)
ほかのどんな楽器もクラリネットほどこの曲の旋律的な呑気、深くしなやかな伴奏音型を再現することはできない。[アインシュタイン] p.357
この(第一)楽章は中間楽章と同様に、モーツァルトの創造のなかで無比のものである。 両者とも幸福そうで、同時にやや反抗的である。 そしてさらに、人には学問的性格は少しも気づかれないが、対位法的、《学問的な》活気づけの奇蹟の一つである。 終始歌いつつ、短調のエピソードのあとに新しいモティーフを出し、このモティーフがやがてかすかな歓呼をもって最後の部分を支配するようにできているフィナーレのロンドについて、最後になにを言うべきだろうか! いまやモーツァルトは、聴く者をただ満足させて去らせるのでなく、魅了して去らせる旋律的、対位法的圧縮によって、一つの作品を単に終らせるのでなく、完結することをいかに会得していることか! 音楽が与えうる形式感情の終局のものが、ここでついに発言されているのである。と絶賛している。
〔演奏〕
CD [PolyGram POCL-4236] t=19'51 パンホーファー Walter Panhoffer (p), ボスコフスキー Alfred Boskovsky (cl), ブライテンバッハ Gunther Breitenbach (va) 1956年10月、ウィーン |
CD [東芝EMI TOCE-6815] t=21'06 クロウソン Lamer Crowson (p), ド・ペイエ Gervase de Peyer (cl), アロノヴィッツ Cecil Aronowitz (va) 1963年12月、ロンドン |
CD [徳間ジャパン TKCC-15109] t=20'52 カスパー Bernd Casper (p), シュラム Siegfried Schramm (cl), シューマン Manfred Schumann (va) 1986年、ドレスデン |
CD [EMI TOCE-6112] t=19'46 ヘル Hartmut Höll (p), マイヤー Sabine Meyer (cl), ツィンマーマン Tabea Zimmermann (va) 1987年 |
CD [EMI CMS 7 63810 2] t=19'46 ※上と同じ |
CD [GALLERIA 457 912-2] t=20'17 レヴァイン James Levine (p), ライスター Karl Leister (cl), クリスト Wolfram Christ (va) 1991年6月、ニューヨーク |
CD [UCCG-9142] t=20'17 レヴァイン James Levine (p), ライスター Karl Leister (cl), クリスト Wolfram Christ (va) 1991年6月、ニューヨーク |
CD [POCG-1176] t=20'38 アファナシェフ Valery Afanassiev (p), クレメル Gidon Kremer (vn), カシュカシャン Kim Kashkashian (va) 1984年5月、ウィーン |
CD [ミュージック東京 NSC207] t=20'16 カイト Christopher Kite (fp), ローソン Colin Lawson (cl), ターリング Judith Tarling (va) 1990年頃 ※フォルテピアノはシュタイン製1784年のコピー(1978年ソレンソン作)、クラリネットは1790年頃のコピー、ヴィオラは1766年製のオリジナル。 |
CD [SRCR 9339] t=20'08 レヴィン Robert Levin (fp), ナイディック Charles Neidich (cl), クスマウル Jurgen Kussmaul (va) 1992年 |
CD [TELDEC 4509-99205-2] t=20'34 シフ (fp), シュミット (cl), ヘーバルト (va) 1996年 |
CD [EMI TOCE-55837/38] t=20'19 バレンボイム (p), グランダー (cl), シュヴァルツ (va) 2005年9月 |
〔動画〕
〔参考文献〕
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