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アリエット「鳥よ、年ごとに」 K.307 (284d)
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モーツァルトは母と二人でパリを目指して旅立っていたが、その途中マンハイムでモーツァルトは5ヶ月半もの長居をして、ザルツブルクの父をいらいらさせていた。 そのときに2曲の歌曲が書かれたが、そのうちの第1曲であり、マンハイム到着後まもなく作られた。 すなわち、当地のフルート奏者ヴェントリングの娘アウグステ(当時25か26歳)のために、彼女の求めに応じて、フェラン(Antoine Ferrand, 1678-1719)によるフランス語の詩に即座に曲をつけたものと思われている。
マンハイムからザルツブルクの父への手紙(1778年2月7日)ここでグストルとはアウグステの愛称である。 ただしフランス語歌曲(ein französisches lied)が何なのか不明であり、それがこの曲であるという確証はない。 そのため、この曲の成立はモーツァルトのマンハイム滞在期間の「1777年10月30日から1778年3月13日か14日までの間」というあいまいなものになっている。 また2月14日の手紙で「ところで、フランス語の歌曲、いかがでしたか? wie gefällt ihnen die französische aria?」と父にたずねているが、やはりその曲を特定する手がかりはない。 さらに2月28日の手紙には
ぼくはここに着いてすぐ、(娘さんの)グストル嬢のために、彼女のくれた歌詞でフランス語歌曲を作りました。 彼女はそれをたとえようもなく見事に歌います。 それをここにお贈りします。 ヴェンドリング家では、毎日これを歌っています。 みんなすっかり夢中になっています。[書簡全集 III] p.496Ich habe der Madelle gustl (die tochter) gleich nach meiner ankunft ein französisches lied, wozu sie mir den text gegeben hat, gemacht, welches sie unvergleichlich singt. hier habe ich die Ehre damit aufzuwarten. beym wendling wirds alle tag gesungen. sie sind völlig Narrn darauf.
娘さんには数曲のフランス語のアリエッタも約束していて、そのひとつにきょう取りかかりました。 全曲が完成したら、前の曲と同様に、小さな紙に写して送りましょう。と書いている。 ここで「そのひとつ」とはアリエット「寂しい森の中で」(K.308)のことであり、「前の曲」とはこの「鳥よ、年ごとに」であると思われている。 こうして、モーツァルトはマンハイム滞在中に2曲のフランス語歌曲を作り、ザルツブルクの父に急かされるようにパリに向けて旅立つことになった。[書簡全集 III] p.564
余談であるが、アウグステの父ヨハン・バプティスト・ヴェントリングはマンハイムで選帝侯カール・テオドールにフルートを教え、モーツァルト母子がマンハイムに訪れた1777年よりはるか以前の1751年頃に宮廷楽団のフルート奏者を勤めていた。 一家はみな音楽家で、一人娘のアウグステも宮廷劇場の歌手だった。 彼女はなかなかの美人で、ヨハン・クリスティアン・バッハが結婚相手に考えていた。 しかしモーツァルトが「彼女は選帝侯の寵愛を受けていた」と父に伝えていたように、さらに「愛妾だった」とさえ言っていたように、そのためにヨハン・クリスティアンとの結婚が実現しなかったのだろう。 他方、モーツァルトにとって「クラヴィーアをかわいらしく弾く」彼女は恋愛の対象外であり、ピアノとヴァイオリンの二重奏曲を3曲も愉快に演奏したあと気軽に抱擁することもあり、そのときのようすを父に
(1777年11月8日)と伝えている。
その娘さんの場合、ぼくには全然いやなことではなかったのです。 というのも、彼女は全然ブスではありませんでしたから。
〔歌詞〕
Oiseaux, si tous les ans vous quittez nos climats, dès que le triste hiver dépouille nos bocages, ce n'est pas seulement pour changer de feuillages, ni pour éviter nos frimas. Mais votre destinée ne vous permet, d'aimer qu'à la saison des fleurs, et quand elle est passée, vous la cherchez ailleurs, afin d'aimer toute l'année. |
小鳥よ、お前たちが 来る年も来る年も、さびしい冬が 木立を裸にしてしまうと、 すぐさまほかの土地に飛び立ってゆくのは、 ただ、ちょっとねぐらを変えてみたり、 霜を避けたりする ためばかりではない。 そうじゃなくて、お前たちの運命が、 花の季節にしか 愛の営みを許さないからなのだ。 この季節が過ぎると、 お前たちはほかの場所を捜し求める。 一年中絶え間なしに愛を営み続けるために。 |
西野茂雄訳詞 CD[EMI Angel CC30-9018] |
〔演奏〕
CD [EMI TOCE-7589] t=1'17 シュワルツコップ Elisabeth Schwarzkopf (S), ギーゼキング Walter Gieseking (p) 1955年4月、ロンドン |
CD [EMI 7-63702-2] t=1'17 ※上と同じ |
CD [UCCG 4118] t=1'39 シュトライヒ (S), エリック・ヴェルバ (p) 1956年5月、ベルリン |
CD [EMI Angel CC30-9018] t=1'26 アメリンク Elly Ameling (S), デムス Jörg Demus (p) 1969年12月、ベルリン |
CD [PHILIPS 422 524-2] t=1'27 アメリンク Elly Ameling (S), ボールドウィン Dalton Baldwin (p) 1977年8月、オランダ、アーヘン |
CD [PHILIPS UCCP-4085/7] t=1'27 ※上と同じ |
CD [COCO-78062] t=1'20 白井光子 (Ms), ヘル Hartmut Höll (p) 1985-86年、ハイデルベルク |
CD [WPCC-4666] t=1'39 ボニー Barbara Bonney (S), パーソンズ Geoffrey Parsons (p) 1990年8月、ベルリン |
CD [WPCC-4279] t=1'27 シュリック Barbara Schlick (Ms), マトウ Tini Mathot (fp) 1990年5月、ユトレヒト |
CD [BVCO-37429] t=1'31 ジャーノット (Br), シュマルツ (p) 2005 |
〔動画〕
〔参考文献〕
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