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アリエット「寂しい森の中で」 K.308 (295b)
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モーツァルトは母と二人でパリを目指して旅立っていたが、その途中マンハイムでモーツァルトは5ヶ月半もの長居をして、ザルツブルクの父をいらいらさせていた。 そのとき当地のフルート奏者ヴェントリングの娘アウグステ(当時25か26歳、愛称グストル)のために、2曲のアリエット「鳥よ、年ごとに」(K.307)と「寂しい森の中で」(K.308)が書かれた。 裏付け資料として滞在地マンハイムからザルツブルクの父に宛てた手紙がある。
(1778年2月7日)ただしフランス語歌曲(ein französisches lied)が何なのかは不明である。 また2月14日の手紙で「ところで、フランス語の歌曲、いかがでしたか? wie gefällt ihnen die französische aria?」と父にたずねているが、やはりその曲を特定する手がかりはない。
ぼくはここに着いてすぐ、(娘さんの)グストル嬢のために、彼女のくれた歌詞でフランス語歌曲を作りました。 彼女はそれをたとえようもなく見事に歌います。 それをここにお贈りします。 ヴェンドリング家では、毎日これを歌っています。 みんなすっかり夢中になっています。[書簡全集 III] p.496Ich habe der Madelle gustl (die tochter) gleich nach meiner ankunft ein französisches lied, wozu sie mir den text gegeben hat, gemacht, welches sie unvergleichlich singt. hier habe ich die Ehre damit aufzuwarten. beym wendling wirds alle tag gesungen. sie sind völlig Narrn darauf.
(1778年2月28日)これらの手紙から、モーツァルトはマンハイム滞在期間の「1777年10月30日から1778年3月13日か14日までの間」に少なくとも2つのフランス語歌曲を書いたことがわかるのである。 そして「前の曲」とは「鳥よ、年ごとに」(K.307)であり、「きょう取りかかりました」というのがこの「寂しい森の中で」(K.308)と考えられている。
娘さんには数曲のフランス語のアリエッタも約束していて、そのひとつにきょう取りかかりました。 全曲が完成したら、前の曲と同様に、小さな紙に写して送りましょう。
このアリエット「寂しい森の中で」はド・ラ・モットの詩になるもので、内容は忘れたはずの恋に再び身を灼く破目になる男の話である。 モーツァルトはこれを詩の情景に応じて変化していく劇的な通作形式の歌曲に仕立てた。 しかしそれは
情景描写にとどまらず内面感情の心理的表現においてもきわめて優れており、その点でモーツァルトの比類ない傑作歌曲の一つにあげられる。[事典] p.200
〔歌詞〕
Dans un bois solitaire et sombre, Je me promenais l'autre jour, Un enfant y dormait à l'ombre, C'était le redoutable Amour. J'approche, sa beauté me flatte, Mais j'aurais du m'en défier. J'y vis tous les traits d'une ingrate, Que j'avais juré d'oublier. Il avait la bouche vermeille, Le teint aussi beau que le sien, Un soupir m'échappe, il s'éveille, L'Amour se réveille de rien. Aussitôt déployant ses ailes Et saisissant son arc vengeur, D'une se ses flèches, cruelles En partant, il me blesse au coeur. Va, va dit il, aux pieds de Sylvie, De nouveau languir et bruler, Tu l'aimeras toute ta vie, Pour avoir osé m'éveiller. |
人気のない、ほの暗い森の中を、 あるとき散歩していると、 ひとりの子供が木陰でまどろんでいた。 それはあの恐るべき愛の神だった。 その美しさに心ひかれて近付いたが、 私は避けるべきだったのだ。 その子は、私が忘れようと誓った、 あの恩知らずの女の面影をもっていた。 その子は朱色の唇をもち、 彼女にそっくりのつややかな顔色をしていた。 思わず溜息を洩らすと、 その子は目覚めた。 彼はすぐさま翼をひろげ、 恐ろしい復讐の弓を引き絞ると、 一本の残酷な矢が放たれ、 その矢は私の心臓に傷を負わせた。 さあ、シルヴィアのもとへ行け、と彼は言った。 もう一度身を焦がし、やつれ果てるがいい! お前は一生の間、彼女を愛するのだ。 厚かましくも俺を目覚めさせた罰として。 |
西野茂雄訳詞 CD[EMI Angel CC30-9018] |
〔演奏〕
CD [EMI TOCE-7589] t=2'58 シュワルツコップ Elisabeth Schwarzkopf (S), ギーゼキング Walter Gieseking (p) 1955年4月、ロンドン |
CD [EMI 7-63702-2] t=2'58 ※上と同じ |
CD [UCCG 4118] t=1'39 シュトライヒ (S), エリック・ヴェルバ (p) 1956年5月、ベルリン |
CD [EMI Angel CC30-9018] t=2'56 アメリンク Elly Ameling (S), デムス Jörg Demus (p) 1969年12月、ベルリン |
CD [PHILIPS 422 524-2] t=2'40 アメリンク Elly Ameling (S), ボールドウィン Dalton Baldwin (p) 1977年8月、オランダ、アーヘン |
CD [PHILIPS UCCP-4085/7] t=2'40 ※上と同じ |
CD [COCO-78062] t=2'51 白井光子 (Ms), ヘル Hartmut Höll (p) 1985-86年、ハイデルベルク |
CD [WPCC-4666] t=3'10 ボニー Barbara Bonney (S), パーソンズ Geoffrey Parsons (p) 1990年8月、ベルリン |
CD [WPCC-4279] t=2'51 シュリック Barbara Schlick (Ms), マトウ Tini Mathot (fp) 1990年5月、ユトレヒト |
CD [BVCO-37429] t=2'53 ジャーノット (Br), シュマルツ (p) 2005 |
〔動画〕
Antoine Houdart de la Motte1672 - 1731 |
アントワーヌ・ウーダール・ド・ラ・モットは、1672年1月17日にパリで生まれ、1731年12月26日に没した。
法律家、宗教家になる道を捨て、文学の道に入り、1710年にアカデミー・フランセーズ会員となる。
太陽王ルイ14世の時代に作家・思想家として大活躍。
〔参考文献〕
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