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アリア「お前に別れを告げる、いとしい人、さようなら」 K.Anh.245

〔編成〕 B, 2 vn, va, vc, bs
〔作曲〕 1788年 ウィーン

39小節からなる作詞者不詳の謎の小品。 ケッヘル初版では K.Anh.245、第3版から最晩年の1791年プラハでの作 K.621a とされ、現在に至っているが、タイソンにより1788年と推定された。 成立時期が見直されたことから番号は530番近くに位置づけられるものと思われる。

1787年10月
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作曲については友人のゴットフリート・ジャカンとの約束があったと思われている。 1787年秋、『ドン・ジョヴァンニ』初演のためにプラハ滞在中、その約束が間に合わないことを10月15日の手紙で伝えていた。

1787年10月15日、プラハからウィーンのゴットフリートへ
次の月曜29日に、オペラは初演される。 翌日すぐに、その報告をしよう。 例のアリアについては、(いずれその理由は口頭で話すけれど)絶対に送ることは不可能だ。
[書簡全集 VI] p.423
ここでオペラというのはもちろん『ドン・ジョヴァンニ』(K.527)であり、「例のオペラ」というのがこの曲であろうと思われているのである。 初演は29日にあり、大成功だった。 余裕ができたせいか、11月4日の手紙では
1787年11月4日、プラハからウィーンのゴットフリートへ
10月29日にぼくのオペラ『ドン・ジョヴァンニ』が上演され、しかもたいへんな拍手喝采を受けた。 きのう、4回目の(しかもあがりはぼくの収入になる)上演が行われた。 12日か13日にはここを発つつもりだ。 帰ったらすぐに、きみの歌うアリアを手渡せるようにしよう。 でも注意、これはぼくらだけの内緒だよ。
[書簡全集 VI] p.432
と約束している。
1787年11月



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モーツァルトはプラハで大歓迎されていた。 そして彼を説得し、数ヶ月滞在を延ばしてオペラをもう一つ書いてもらおうとしていたらしい。 モーツァルト自身もその申し出を嬉しく思っていたが、なぜか引き受けようとせず、11月13日頃にプラハをあとにした。 1787年10月15日の手紙で
ここの劇場の人たちは、ヴィーンの連中のように器用じゃないから、こんなオペラをそう短期間に練習して覚え込むなんてできないんだよ。
当地ではなんでもが長びく。というのは歌い手たちが(怠け者で)オペラの稽古日に練習しようとしないし、興行主は(怖れと不安から)強いて彼らに稽古させようとしないからだ。
と不満を書いているように、プラハの音楽レベルはモーツァルトにとって物足りないものだったからだろう。 17日にウィーン着いてみると、15日に宮廷作曲家グルックが世を去っていた。 その後任としてモーツァルトは宮廷音楽家の称号を与えられたが、よく知られているように、年俸はグルックの半分にも満たなかった。 そしてウィーンでは『ドン・ジョヴァンニ』はほとんど上演されず、どん底の生活に追い込まれてゆくことになる。

この曲について、未亡人となったコンスタンツェはのちに(1799年)ジャカンの作(ゴットフリートが声部を、モーツァルトが伴奏のパートを書いた共作)だと言ったが、自筆譜もあり真作と認められている。 自作目録に記録がないのはジャカンとの約束のせいか。 なお、モーツァルトが「その生涯の残りの陰鬱な時期に、アリアの分野において、彼の歌手たちのために好意で」作曲したことについて、アインシュタインは

もし「ティートの慈悲」(K.621)の時期に属する、バスのための小さなアリア「わたしはお前を引きとめない、おお恋人よ、さらば」がなかったとしたら、あのような好意からの作曲に身をゆだねたモーツァルトの人の好さが悲しまれることであろう。 コンスタンツェは全く不当にも、右のアリアに偽作の疑いをかけている。 しかしこのアリアは実感された素朴さのためにこそ、モーツァルトのアリア作曲の連続を、どんな名人芸的アリアよりも繊細に、立派に終結するのである。
[アインシュタイン] pp.508-509
と、この曲の真価を認めている。

〔歌詞〕
Io ti lascio, oh cara, addio,
vivi piu felice e scordati di me.
Strappa pur dal tuo bel core
quell'affetto, quell'amore,
pensa, oh Dio, che a te non lice
il ricordarsi di me.
  あなたを残して行く、愛する人よ、さようなら
しあわせになり、私のことは忘れて下さい
その美しい心から、私たちの愛
私たちの恋を取り去って下さい
考えて下さい、ああ、あなたには
私を思い出すのは許されないことを
 
石井 宏訳 CD[RCA BVCC-715]

〔演奏〕
CD[RCA BVCC-715] t=4'51
シュトゥッツマン Nathalie Stutzmann (contralto), スピヴァコフ指揮 Vladimir Spivakov (cond), モスクワ・ヴィルトーゾ室内管弦楽団 Moscow Virtuosi
1994年7月、ノイマルクト、ライトシュタードル
CD[L'oiseau Lyre 458 557-2] t=5'33
スカルトゥリーティ Roberto Scaltriti (Br), ルーセ指揮 Christophe Rousset (cond), Les Talens Lyriques
1996年7・8月、パリ、ワグラム・ホール
CD [Brilliant Classics 93408/4] t=3'07
Ezio Maria Tisi (B), European Chamber Orchestra, Wilhelm Keitel

〔動画〕

〔参考文献〕

 

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2013/12/08
Mozart con grazia