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アリア「岸辺近く願いぬ」 K.368〔編成〕 S, 2 fl, 2 fg, 2 hr, 2 vn, 2 va, vc, bs〔作曲〕 1781年1月 ミュンヘン |
詩はメタスタージオの「デモフォオンテ Demofoonte」の第1幕第4場から。 作曲の動機は不明であり、上記の成立日付はのちにニッセンが自筆楽譜に書き込んだものによる。 アインシュタインによれば、オペラ『イドメネオ』でエレクトラ役の歌手エリザベート・ヴェンドリングのために書かれたと推測されている。
「イドメネオ」(K.366)の完成後にミュンヘンで書いたのであるが、おそらく、彼のエレットラ役を勤めたエリーザベト・ヴェンドリングのためであろう。 より華やかで英雄的な声のために書かれているとはいえ、それはアーロイージアのためのものと全く同様に名人芸的(ブラヴーラ)である。 しかしその名人芸は最高の音にいたるまで純粋な熱情に満ちているし、また形式の自由は《記念碑的アリア》の片鱗もとどめないほどに推し進められている。 形式が魂の命令に従っているのである。ただし裏付けとなる資料はなく、もう少し早い時期の成立であるかもしれない。 プラートは筆跡鑑定から、「1779年から1780年の間にザルツブルクで作曲された」との可能性を指摘している。[アインシュタイン] p.497
詞の内容は、主人公ティマンテがフィリジアの王女クレウーザとの政略結婚を父デモフォオンテから命じられたが、すでに秘かにディルチェアと結婚しているため運命の不幸を歌うもの。
〔歌詞〕
Recitativo | レチタティーヴォ | ||
Ma che vi fece, o stelle, La povera Dircea, Che tante unite Sventure contro lei? Voi, che inspiraste I casti affetti alle nostr'alme; Voi,che al pudico imeneo Foste presenti, difendetelo, o numi; Io mi confondo. M'oppresse il colpo a segno, Che il cor mancommi, E si smarri l'ingegno. |
だが何をしたのだ、運命の星よ、 哀れなディルチェーアが これほどの不幸を 彼女に仕組むとは? 神々こそ私たち二人の心に 清らかな愛を授けられたお方 神々こそ汚れない婚姻をご照覧あそばしたお方 なればこれをお守り下さい、神々よ 私は取り乱すばかりです。 衝撃にあまりにひどく打ちのめされ 私は既に勇気も萎え 知力も失せてしまいました。 | ||
Aria | アリア | ||
Sperai vicino il lido, Credei calmato il vento, Ma trasportar mi sento Fra le tempeste ancor. E da uno scoglio infido, Mentre salvar mi voglio, Urto in un altro scoglio. Del primo assai peggior. Ma che vi fece, o stelle, La povera Dircea! Sperai vicino il lido. |
私は岸辺が近いと思い そして風も凪ぐと信じた。 だが今はまた連れ戻される思いだ、 再び嵐の真っ只中へ。 そこでは一つの危険な岩から 身をかばおうとする間に 別の岩に突き当たってしまう、 別のいっそう恐ろしい岩に。 だが何をしたというのだ、運命の星よ、 哀れなディルチェーアは! 私は岸辺が近いと思い・・・ |
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小瀬村幸子訳 CD[WPCC-4860] |
〔演奏〕
CD [WPCC-4860] t=9'46 グルベローヴァ Edita Gruberova (S), アーノンクール指揮 Nikolaus Harnoncourt (cond), ヨーロッパ室内管弦楽団 The Chamber Orchestra of Europe 1991年6月、グラーツ、ステファニエン・ザール ※ライヴ録音 |
CD [Brilliant Classics 93408/6] t=8'51 ? (S), European Chamber Soloists, Nicol Matt 2006年 |
〔編曲演奏〕
CD [PHILIPS 32CD-679] t=7'06 ホリガー Heinz Holliger (ob), シリトー指揮 Kenneth Sillito (cond), アカデミー室内管弦楽団 Academy of St.Martin-in-the-Fields 1986年6月、ロンドン、ヘンリーウッド・ホール |
ハインツ・ホリガー評(佐々木節夫訳)
19世紀の初めにおいて、モーツァルトの器楽作品は余りにも声楽的であり、逆に声楽作品での声の扱いは余りにも器楽的だと何回繰り返し非難されたことだろう!
器楽的であると同時に声楽的でもあるモーツァルトの熟練した書法は、2つのアリアK.538とK.368に明瞭であり、その独唱パートはオーボエと交換し得る。
もしモーツァルトが晩年にオーボエ協奏曲を作曲したなら、深遠な名人技と至高の抒情的な表情の完全な結合はこのようなものか、との印象を与えてくれる。
〔動画〕
〔参考文献〕
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