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ソナタ 第24番 ハ長調 K.296
〔作曲〕 1778年3月11日 マンハイム |
この曲はもともとはピアノの生徒テレーゼ・ピエロン(Therese Pierron, 当時15歳)のために作った。 ピエロン嬢はマンハイム宮廷顧問官ゼラリウス(Serrarius)の養女であった。 1777年9月23日、就職活動のためモーツァルトは母と二人でザルツブルクを旅立ち、10月30日にマンハイムに到着した。 ザルツブルクに残った父の苛立ちをよそに、モーツァルトはその地に長居し、その年の「冬をマンハイムですごす」ことにした。 しかも仕事を得て「マンハイムに留まるために」活動しようとさえしていることに父は怒り心頭であった。 安心して頼れるつてもなく、金もなく、その地に留まろうとする息子にレオポルトはその怒りをぶつける。
1777年12月8日それでも若いモーツァルトは動こうとしない。 いろいろな意味でマンハイムが気に入ったからであった。 そばにいる母と、遠くにいる父の両方の機嫌をとりながら、その地で何とかしようとする一人の才能ある若者の姿が見える。 そんなときにフルート奏者のヴェンドリングが親切に助け舟を出してくれたのだった。
もうたくさんだ! 私にはもう、事情に通じていないことと疑念、それにそこからどうしても生まれてくる、私の命よりも私にはもっと心にかかっているおまえたちがいったいどうなっているのかという不安以上に、私の心にかかり、しかも自身をたいへんな心の動揺に陥れるものはなにもないのだ。[書簡全集 III] p.335
1777年12月10日こうしてモーツァルトは宮中顧問官ゼラリウスの世話になることになった。 母マリア・アンナはザルツブルクへ報告している。
食事は昼も夜も遠慮なく私どものところでとるのです。 あなたの宿は宮中顧問官のところにすればいい。 費用はいっさいなしですみます。 お母さんのためには、あなたがこれらのことをすっかりお宅へ報告するまで、二か月の間、小さな安宿を探しましょう。 それからお母さんはお宅へ帰り、ぼくらはパリへ行くのです。[書簡全集 III] p.341
1777年12月14日マリア・アンナもこの地にとどまることを願っていたのだろう。
いま私たち、さいわいなことに、とうとう宿屋を引き払い、ある宮中顧問官のお宅に、きれいなベッドが二つと小部屋のついた子ざっぱりした部屋をもらいました。 このお方のお名前はまだ存じませんが、しっかり者の奥様に、15歳になるお嬢様がいて、お嬢様はもう8年もクラヴィーアを弾いています。 この方をヴォルフガングはお教えしなければなりませんが、その代わりに、住居とそれに薪や明かりもただなのです。
1777年12月18日しかしレオポルトにはその気持ちは伝わらない。 彼には愛妻マリア・アンナとザルツブルクで慎ましく暮らすことより、息子の立身出世の方が大事であり、そのためには愛妻を犠牲にしてもよいという道を突き進むのだった。
私たちは今とてもすばらしい住居をもっています。 立派な寝台が二つあり、サービスもそろっています。 宮中顧問官様はゼーラリウスというお名前で、奥様は私たちにとっても親切です。 毎晩、私はお二人のお宅で食事をし、奥様とお嬢様と10時半までおしゃべりをします。 午後はほとんどお二人のところにいなければならないくらいです。 息子がこの方がたからとても大切にされていて、申し分ありません。
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長居するマンハイムで息子の定職が見つからず、ますます父レオポルトの不安と不信が増すばかりであった。 一刻も早くマンハイムを離れ、目的地に向かうように命じられたモーツァルトは、ようやく1778年3月14日に母とマンハイムをたってパリへ向かうことになった。 マリア・アンナは、自分に言い聞かせるように、ザルツブルクの夫に次のように書いている。
1778年3月7日この曲は出発前の3月11日に、世話になったマンハイム宮廷顧問官ゼラリウスの養女ピエロン嬢のために書かれた。
今週はびっくりするくらい忙しくて、全部整理がつくまでほんとに天手古舞いでした。 万事私次第で、私も十分に考えることがありますが、あなたにも御想像なされることです。 それでも神さまの御加護で万事うまく行き、私たちが元気で無事にパリに着けるよう願っています。 この長旅はたしかに私たちにはとても骨が折れそうですが、でも神さまがそうお望みなのですから、神の名においておこなわれなくてはなりません。
ごきげんよう。 お二人ともお元気でお暮らし下さい。
美しいマンハイムの少女のための曲は、挿入された緩徐楽章アンダンテ・ソステヌートのなかに、ヨーハン・クリスティアーンへの最も強い回想を含んでいる。 それは器楽のアリエッタで、その主題と伴奏の仕方はほとんどそっくりロンドンの楽匠のアリア(『甘いそよ風』Dolci aurette)から取られている。3月12日に知人たちとのお別れコンサートが開かれ、モーツァルトはこの曲をピエロン嬢への餞別としたのだった。 そしてパリへ、退屈で耐えきれない9日半の馬車旅行、しかも終りの2日間は息がつまりそうな暴風雨で母子は洗濯物のようにずぶ濡れになり、ようやく23日月曜日午後4時に目的地到着。 モーツァルトの最初の仕事はザルツブルクの分からず屋で頑固な父に経過報告することであり、その中で精一杯の悔しさを伝えている。[アインシュタイン] p.349
1778年3月24日策士レオポルトにとって目的地到着までの9日間はあれこれ戦略を練るのにもってこいの時間だろうが、社交的な母と子にとっては死ぬほど退屈なものであり、したがってモーツァルトの不平不満は父には届かなかっただろう。 さて、この曲の特徴について、フロトホイスは次のように評している。
生まれてこのかた、こんなに退屈したことはありません。 マンハイムを立ち、あんなにもたくさんの愛すべき親友たちと別れて、それも9日半、その親友たちばかりでなく、つき合ったり話し合ったりできるひと、誰ひとりにも会わずに過ごさなくてはならないなんて、どんなにつらいことかすぐおわかりでしょう。
<中略>
ぼくらは14日、土曜日に出発したわけですが、その前の木曜日の午後、カンナビヒ邸で演奏会があり、ぼくの3台のクラヴィーアのための協奏曲が演奏されました。 ローザ・カンナビヒ嬢が第1を、ヴェーバー嬢が第2を、そして(わが家の妖精)ピエロン・ゼーラリウス嬢が第3を弾きました。 3回練習して、とてもうまく行きました。[書簡全集 IV] pp.14-15
第1楽章の活力と熱意に溢れた冒頭は、輝かしいハ長調という調性とまさに合致し、その気分は最後まで維持される。
<中略>
(最後のロンドは)この生き生きとした楽章は、数週間後にパリで書かれた《フルートとハープのための協奏曲》K.299のフィナーレに向けた出発点となったのである。[全作品事典] p.362
後に5曲のソナタK.376〜380とまとめて6曲セットにした。それをウィーンのアルタリア社から「作品2」として1781年11月に出版し、アウエルンハンマー嬢(オーストリアの実業家アウエルンハンマー氏の令嬢ヨゼファ)に献呈したので、これらは「アウエルンハンマー・ソナタ」と呼ばれている。 その中で、この曲は第2番におかれた。
〔演奏〕
CD [U.S.A. Music and Arts CD-665] t=15'14 クラウス (p), ゴールドベルク (vn) 1937年、SP復刻版 MONO |
CD [東芝EMI TOCE-6725-30] t=16'39 クラウス (p), ボスコフスキー (vn) 演奏年不明 |
CD [COCQ 83885-88] t=16'00 シゲティ (vn), ホルショフスキー (p) 演奏年不明 |
CD [Polydor POCG-90177] t=16'11 シュナイダーハン (vn), ゼーマン (p) 1954年 |
CD [ポリドール LONDON POCL-2084/7] t=16'24 ルプー (p), ゴールドベルク (vn) 1974年 |
CD [Deutche Grammophon 415 102-2] t=16'32 バレンボイム (p), パールマン (vn) 1984年 |
CD [キング KKCC-268〜9] t=19'37 ヴェッセリノーヴァ (fp), バンキーニ (vn) 1993年7月 |
■プレイエル版による演奏
1815年頃にパリのプレイエルが出版した「フォルテピアノのための、フルートまたはヴァイオリンとチェロの伴奏つきソナタ集」による。
CD [Camerata 25CM-116] t=17'41 ガッゼローニ (fl), カニーノ (p) 1977年11月、入間市民会館 |
CD [BMG VICTOR BVCC-643] t=17'09 ゴールウェイ Lames Galway (fl), モル Phillip Moll (p) 1993年4月16日、ロンドン、The Hit Factory |
〔動画〕
〔参考文献〕
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