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弦楽四重奏曲 第6番 変ロ長調 K.159
〔作曲〕 1773年初 ミラノ |
1772年10月モーツァルト父子は第3回イタリア旅行(滞在地はミラノ)に出かけ、73年3月に帰郷するが、この間に(退屈しのぎに書いた)「ニ長調 k.155」から「変ホ長調 K.160」まで6曲の弦楽四重奏曲を連作し、1冊の自筆譜にまとめられてあることから「ミラノ四重奏曲集」と呼ばれている。 6曲の調性の配列も考え合せると、作曲にあたり父レオポルトの指示があり、出版そして献呈の意図があった(しかし実現しなかった)のかもしれない。
その連作中でこの「変ロ長調」は第5作にあたる。 このシリーズ中唯一緩除楽章から始まり、緩・急・急という構成(各楽章のテンポ指示は父レオポルトによる)になっている。 それについてアインシュタインは「これらの四重奏曲においてモーツァルトの感情の振幅がどんなに広いかを示す」ものだと言っている。
非常に節度を持ってはいるが独特なアンダンテと、官能性に富むロンド(アレグロ・グラツィオーソ)とのあいだに、雄大な、暗い、熱情的なト短調のアレグロがある。第1楽章アンダンテの節度とは、主題が第2ヴァイオリンが奏でる(節度をもった)旋律であるという。[アインシュタイン] p.246
この悠揚迫らぬ第2ヴァイオリンの旋律には、どこにも気負いや作為が見られない。 モーツァルトの心の中に自然に歌いはじめた旋律が、極くありふれてはいるがこれ以上の姿をとりようがない自然さでもって、ヴィオラの八分音符とチェロの二分音符の伴奏を伴って流れてゆく。 第1楽章からこのような内面の世界が自然に歌いはじめるのは、この曲が最初である。 つまり弦楽四重奏という室内楽のあり方が、この曲で、モーツァルトと完全に馴染んで来たという感じがするのである。17歳の少年にしてこの節度とは驚くしかないが、ところが、それに続く中間楽章は力強い短調で「力の集中された怪物的な楽章」(プラート)とまで言われ、その節度を吹き飛ばすほどの「反抗的な表現」になっている。[井上] pp.87-88
この作品はゆっくりした中間楽章の代わりに平行短調(ト短調)による第2の主要楽章をもっており、作品全体の調性の一貫性、構造の一貫性をまさに覆さんばかりの攻撃的なエネルギーに満ちた特大の規模をもっている。決まった枠の中に納め込もうとする父(あるいは因習)に対する若い作家の反抗の現れか。 しかし彼はこのシリーズの最後の曲「変ホ長調 K.160」で何事もなかったかのように再び因習的なスタイルに戻る。[全作品事典] p.327
〔演奏〕
CD [WPCC-4116] t=14'30 バリリ四重奏団: Walter Barylli (vn), Otto Strasser (vn), Rudolf Streng (va), Richard Krotschak (vc) 1955年2月, the Mozartsaal of the Konzerthaus, Vienna |
CD [Claves CD50-8916] t=12'15 ソナーレ四重奏団: Jacek Klimkiewicz (vn), Laurentius Bonitz (vn), Hideko Kobayashi (va), Emil Klein (vc) 1989年7月、ダルムシュタット |
CD [NAXOS 8.550542] t=12'54 エーデル四重奏団: Janos Selmeczi (vn), Peter Szuts (vn), Sandor Papp (va), Gyoergy Eder (vc) 1991年4月、ブダペスト、the Sashalom Reformed Church |
〔動画〕
〔参考文献〕
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