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聖墓の音楽 K.42 (35a)

Grabmusik for soprano and bass
  1. アリア「岩よ、お前たちの口を開けよ Felsen, spaltet euren Rachen」 Allegro ニ長調
  2. アリア「この胸を眺めて Betracht dies Herz」 Andante ト短調
  3. 二重唱「イエスよ、私は何をしたのでしょうか Jesu, was hab'ich getan?」 Andante 変ホ長調
  4. 合唱「イエスよ、真の神の子よ Jesu, wahrer Gottessohn」 ハ長調
〔編成〕 S, Bs, SATB, 2 ob, 2 hr, 2 vn, 2 va, vc, bs
〔作曲〕 1767年4月頃 ザルツブルク
1767年4月


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ザルツブルク大司教の依頼により、4月17日の聖金曜日に上演する目的で作曲された受難カンタータ(パッション・カンタータ)である。 すべての曲にレチタティーヴォが付いている。 この作品は「ジャンル的にも用途的にも独特の位置を占めている」と言われ、レーモント・ディトリッヒは次のように解説している。

ドイツ語による受難カンタータであるこの作品は、少なくとも中世以降広く行われていた慣行である「セポルクロ sepolchro」の一例といえる。 セポルクロとは、聖週間(復活前の1週間)に、絵画または立体の形に作られた「聖墓」(復活するまでキリストが横たわっていた墓を表す)を教会の付属礼拝堂か主祭壇の脇にしつらえ、その前で捧げられた祈祷のことをいう。 セポルクロは元々はキリストの生・死・復活を扱った神秘劇という形で行われていたが、やがてバロック期には「サクラ・ラップレゼンタツィオーネ」と呼ばれる神秘劇となり、もっと後には非舞台的な音楽であるオラトリオやカンタータとなっていった。
栗田 洋訳 CD[WPCS-4566]
ザルツブルクでも復活祭に、教会の礼拝堂などにキリストの埋葬を型どった「聖墓」が作られ、そこで聖金曜日にキリストの受難と復活の宗教劇が演じられていた。 この曲はそのために作られたと思われている。 上演に関する確かな記録はないが、1767年4月17日の聖金曜日に大聖堂で演奏されたであろう。 テキストの作者は不明。 なお、1772年頃再演する機会があり、モーツァルトは新たに終りの4部合唱を追加して改訂したという。

この曲には次の有名な逸話がある。 すなわち、ザルツブルク大司教ジギスムント(69歳)の依頼によりモーツァルトは先にオラトリオ「第一戒律の責務 K.35」(第1部)を作曲していたが、大司教は11歳の子供がこのような作品を本当に独力で作曲できるものか怪しみ、僧院の一室に閉じこめて作らせたというのである。 ロンドンの法律家兼自然科学者であったバリントン卿(Daines Barrington, 1727-1800)は少年モーツァルトの天才ぶりを記した貴重な資料を残している人物であるが、彼は次のように報告しているという。

大司教はこれほど見事な曲がほんとうに幼児のものだとは信用せず、彼を一週間のあいだ閉じ込め、この間だれにも会わせずに、五線紙とオラトリオの歌詞だけ与えてひとりにしておいた。 この短い期間に、彼は非常にすばらしいオラトリオを作曲し、これは上演されてまことに烈しい拍手喝采を得たものだった。
[全作品事典] p.49
こうして作曲されたものであるが、「11歳の作曲家としては注目すべき優れた作品である」と評価は高い。
一例を挙げればソプラノのアリアで、彼はト短調という調性を用いているが、それによって類型的なイタリア趣味をはるかに越えた、個性のある作風をみせている。 彼は歌詞をその言葉の流れにまかせて作曲したのではなく、むしろ厳密ななかにも表情のある音を与えることによって、歌詞そのものにも品位をもたせた。
[ド・ニ] p.15
歌詞の内容は、墓から出てきた霊魂(バス)と天使(ソプラノ)の対話になっている。
 
Felsen, spaltet euren Rachen,
trauert durch ein kläglich's Krachen,
Sterne, Mond und Sonne flieht,
traur'Natur, ich traure mit.
. . .
 
 
Betracht dies Herz und frage mich,
wer hat die Kron'gebunden,
von wem sind diese Wunden?
Sie ist von dir und doch für mich.
. . .
(霊魂)
岩よ、口を開け、
悲しい音をたてて嘆け、
星々、月、太陽よ、逃れるのだ、
自然よ嘆け、私とともに。
・ ・ ・(略)
 
(天使)
この腕を眺めて、私に問いかけてください、
誰がこの冠を編み、
誰がこの傷を追わせたのかを?
これは私が負わせた傷で、しかも私のための傷なのです。
・ ・ ・(略)
岡本稔訳 CD[WPCS-4566]

〔演奏〕
CD [PHILIPS PCD-15〜16] t=23'48
マレイ Ann Murray (S), ヴァーコー Stephen Varcoe (Bs), マリナー指揮, 南ドイツ放送合唱団, シュトゥットガルト放送交響楽団
1988年、シュトゥットガルト
CD [UCCP-4084] t=23'48
※上と同じ
CD [WPCS-4566] t=24'10
マクネアー Sylvia McNair (S), ハンプソン Thomas Hampson (Bs), アーノンクール指揮, アルノルト・シェーンベルク合唱団, ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス
1991年12月、ウィーン

〔動画〕

〔参考文献〕

 

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2015/07/26
Mozart con grazia