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キリエ K.33

  • Largetto ヘ長調
〔編成〕 SATB, 2 vn, va, bs
〔作曲〕 1766年6月12日 パリ
1766年6月






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自筆譜に上記日付あり、モーツァルトが最初に書いたキリエ。 42小節から成る。

Kyrie eleison. 主よ、憐れみたまえ。
Criste eleison. キリストよ、憐れみたまえ。
Kyrie eleison. 主よ、憐れみたまえ。
モーツァルト一家の1763年6月9日から始まる西方への大旅行(帰郷は約3年半後の1766年11月29日)もそろそろ終りに近づいた頃、再度のパリ滞在中に書かれた。 その頃、父レオポルトはリューマチに悩まされていて、故郷の家主ハーゲナウアーに宛てた手紙には
右足の大腿部がリューマチに襲われまして、痛みで顔がものすごくゆがんでしまうほどでした。
(途中略)
四日も眠れない、痛みのひどい晩を過ごしましたが、昼間がもっと楽だったわけではありませんでした。 これはもうほとんど習慣になっています。 病んだ、あわれな男です!
[書簡全集] pp.262-263
と書いている。 しかしこの曲について何も書き残していないので、アインシュタインがいう「フランス風、リート風」なこのキリエの成立についてはっきりしない。 モーツァルトの初期の作品には父レオポルトの手が加わっていることはよく知られているが、プラートの筆跡鑑定により、このキリエにも二人の筆跡が見られ、最初のセクションはレオポルトのものであるという。 モーツァルトの宗教音楽に詳しいド・ニは、
フランス風のロマンスに似た、ほとんど通俗的ともいえるほどの、豊かな旋律をもった書法によっている。 韻律もリズムもきわめて正確である(優れた教師でもあった父親が、手とり足とり教えたにちがいない)が、まだ宗教音楽としての個性をもっているとはいえず、このヘ長調の小曲はシンフォニアのアンダンテ楽章といった印象を与えている。
[ド・ニ] pp.10-11
と評している。 また、この曲はレオポルトによる初期のモーツァルト作品目録に載っていない。 その理由もはっきりしないが、ド・ニが「彼がこの曲をミサと呼んでいるのは、おそらくミサの通常文のほかの部分も作曲するつもりだったからだろう」と言うように、完成された作品と見なしていなかったのかもしれない。

余談であるが、ちょうどこの頃、フランスの大貴族コンティ公(Louis François de Bourbon, Prince de Conti, 1717-76)宮殿の四つの鏡の間でのお茶会をオリヴィエ(Michel Barthelemy Ollivier)が描いた絵がある。 宮殿は修道院跡の宏壮な邸宅で、「タンプル」と呼ばれていた。 コンティ公はかなり大がかりな楽団を持ち、さらにモーツァルトに影響を与えたことで知られる作曲家ショーベルトを雇うほどの大貴族であり、レオポルトは自分の息子もショーベルトのように雇われることを願っていた。 右はオリヴィエがかいた絵(ルーブル美術館所蔵)の一部であるが、クラヴサンを弾いている少年モーツァルトの姿がある。 ギターを弾いているのはピエール・ジェリオット(Pierre Jelyotte, 1713-97)というテノール歌手であり、宮殿楽団のヴァイオリン奏者でもあったと知られている。 また楽団にはのちに出版業を営んだエーナがヴァルトホルン奏者として勤めていた。
この絵の全体を見れば、貴族たちが演奏とは関係なく飲食・会話しているのがわかる。 コンティ公にはド・テッセ伯爵夫人というお気に入りの女性がいて、少年作曲家モーツァルトは1764年に2つのソナタから成る「作品2」(K.8K.9)を献呈していた。 なお、のちに「タンプル」はフランス大革命時には政治犯を収容する施設として使われ、ルイ16世もマリー・アントワネットもここに捕われていたという。

〔演奏〕
CD [PHILIPS 422 749-2/753-2] t=3'34
ケーゲル指揮ライプツィヒ放送管弦楽団、合唱団
1990年5月
CD [UCCP-4078] t=3'43
※上と同じ
CD [WPCS-4566] t=1'33
アーノンクール指揮ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス、アルノルト・シェーンベルク合唱団
1992年2月

〔動画〕

〔参考文献〕

 

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2013/05/26
Mozart con grazia