Mozart con grazia > ピアノのための幻想曲と変奏曲 >
17
age
61
5
62
6
63
7
64
8
65
9
66
10
67
11
68
12
69
13
70
14
71
15
72
16
73
17
74
18
75
19
76
20
77
21
78
22
79
23
80
24
81
25

82
26
83
27
84
28
85
29
86
30
87
31
88
32
89
33
90
34
91
35
92

12のピアノ変奏曲 ハ長調 K.265 (300e)

〔作曲〕 1781年か82年? ウィーン

この曲の主題は「きらきら星」という歌でよく知られた旋律であるが、もともとは次のような歌詞で歌われていたフランス民謡「シルヴァンドルの愛 Les amours de Silvandre」である。
  Ah! vous dirai-je Maman,
Ce qui cause mon tourment.
Depuis que j'ai vu Sylvandre
Me regarder d'un œil tendre,
Mon cœur dit à chaque instant,
Peut-on vivre sans amant ?
  何から話そうかしら、お母さん、
悩ましいわ
私シルヴァンドルに
やさしく見つめられてから
私の心はいつも聞くのよ
「恋人なんかなくていいのかい」って
石井宏訳詞 CD[東芝EMI CC30-3777]
余談であるが、シルヴァンドル(SylvandreまたはSilvandre)とはラテン語で「森、樹木」を意味する silva に由来する名前であり、この作者不詳の民謡とほとんど同じ内容の歌詞(ド・ラ・モット詞)をもとにモーツァルトはアリエット「寂しい森の中で」(K.308)を書いている。 なお、この民謡の作曲者は大作曲家ラモー(Jean-Philippe Rameau, 1683-1764)であるともいわれている。 さらに余談であるが、今日では次のような歌詞で歌われているようである。
  Ah ! vous dirai-je, maman,
Ce qui cause mon tourment.
Papa veut que je raisonne,
Comme une grande personne.
Moi, je dis que les bonbons
Valent mieux que la raison.
  ねえ!言わせてお母さん
何で私が悩んでいるのかを
お父さんは私にまともでいてほしがってる
どこかのえらい人みたいにね
私に言わせりゃ、飴玉(あめだま)のほうが
まともでいるよりすてきなの
動画 [http://www.youtube.com/watch?v=T-ANJTJxudg] t=1'34

この作者不詳の歌は1760年代にはパリで広く愛好されていたらしく、1761年刊行の歌集をはじめとして、その後に出版された各種の歌曲集に収録されていた。 それだけ愛好され誰でも知っている旋律であることから、1770年以降は変奏曲の主題にも使われることが多かったという。 モーツァルトがいつ何の目的でこの主題をもとにピアノ変奏曲を書いたのかわかっていない。 ケッヘルは最初1776年の成立と推測し、K.265に位置づけていたが、その後の研究により「モーツァルトが(母と二人で)パリ滞在していた」1778年の夏に書かれたものと見直され、K.300eに置かれた。 このように見直された一連の変奏曲には、ほかに

がある。 しかし、さらにその後この曲は筆跡の研究からプラートにより1781年か82年ウィーンでの作品とされた。 とすれば、ケッヘル370から380番代に位置づけされることになる。 この頃モーツァルトはピアノの弟子のための作品を多く必要としていた。
父への手紙(1781年6月20日)
いまとても忙しいものですから。 というのは、ぼくの弟子のために変奏曲を仕上げなくてはならないので。
(1781年7月4日)
それから、3つの歌を主題にした変奏曲を書きました。
[書簡全集 V] p.86, p.96
ここに書かれている変奏曲(複数)については不明であり、もしかしたらこの変奏曲も含まれているかもしれないのである。 この曲では華やかなパリの香りをもった親しみやすい旋律をもとに、初級者にも演奏できるやさしい曲のように聞こえるが、後半に進むにつれて演奏はどんどん難しくなるように書かれている。 海老沢は「かなり教育的な配慮が施されている作品といえよう」と述べている。
第1変奏は右手の16分音符の動きの中に主題が含まれ、第2変奏は、その16分音符の動きを左手の伴奏に回して、右手が変奏をおこない、第3変奏と第4変奏では、3連音符が、前の2つの変奏での16分音符の役割を果たしている。 第5変奏では、両手が交互にホケトゥス(しゃっくり)の手法で、対位法的な味わいを示す。 第6変奏と第7変奏は、16分音符のパッセージが再び登場し、第8変奏にいたって、ハ短調のミノーレ(短調変奏)が、コントラストを形づくり、再びハ長調に戻って、第9変奏が、主題を両手の模倣手法で再現したあと、第10変奏は、こまやかな装飾的動きの伴奏をまじえて、両手の交叉が主題を救い、第11変奏で、テンポをアダージョに落とし、豊かな装飾音もつけられている。 最後の第12変奏はアレグロ、4分の3拍子で、めまぐるしい走句を加え、主題の再現を伴わずにきらびやかに曲を閉じる。
[海老沢] p.35

1785年ウィーンの音楽出版者トリチェッラにより出版され、アウエルンハンマー嬢に献呈された。

〔演奏〕
CD [東芝EMI CC30-3777] t=6'09
ギーゼキング (p)
1953年
CD [PHILIPS PHCP-10171/77] t=7'47
ハスキル (p)
1960年
CD [UCCG-4113] t=12'04
※上と同じ
CD [PHILIPS PHCP-3673] t=13'08
ヘブラー (p)
1975年
CD [KICC-32] t=12'54
インマゼール (fp)
1980年
CD [ポリドール F32L-20266] t=14'03
シフ (p)
1986年
CD [U.S.A. Music and Arts CD-660] t=13'09
キプニス (fp)
1986年
※グレプナー製フォルテピアノ使用
CD [SYMPHONIA SY-91703] t=12'14
アルヴィーニ (fp)
1990年
CD [TOCE-7514-16] t=12'33
バレンボイム (p)
1991年

<編曲>
CD [SONY CSCR 8360] t=13'05
御喜美江 (classic accordion)
1990年
CD [Victor VICC-104] t=4'27
モーツァルト・ジャズ・トリオ
1991年
CD [PCCY 30090]
ディール (p), ウォン (bs), デイヴィス (ds)
2006年、編曲

〔動画〕


〔参考文献〕


Home K.1- K.100- K.200- K.300- K.400- K.500- K.600- App.K Catalog

2013/11/10
Mozart con grazia