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ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロのための協奏交響曲 イ長調 K.Anh.104 (320e)〔編成〕 solo vn, solo va, solo vc, 2 ob, 2 hr, 2 vn, 2 va, bs〔作曲〕 1779-80年 ザルツブルク |
自筆譜が残っているが、成立については不明。 モーツァルトの手で「シンフォニア・コンチェルタンテ」と書かれ、オーケストラによる提示部(Allegro、4分の4拍子)が51小節まで完成され、続く52小節から134小節までの独奏楽器による提示部はソロパートのみ完成。 ただし作曲を放棄したのではなく、後で完成させるつもりでいたらしい。 アインシュタインによれば
それを完成すべき外的な動機が消えたために完成せずにおいたという事実の例も存在する。 そういう例の最も悲しむべきものは、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロとオーケストラのためのシンフォニア・コンチェルタンテ(K.Anh.104)であるが、これはおそらくマンハイム=ミュンヘンのオーケストラの三人の奏者のために計画され、この三人が1779年頃にはもう集まらなかったのであろう。と推測されている。 書かれた時期については、作曲者によってヴィオラが1音高く調弦するよう指定されてあることなどから、「ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲 変ホ長調 K.364」と同時期の作と見られている。[アインシュタイン] p.195
この2つの作品は技術上の特徴を共有している。 つまり独奏ヴィオラのパートは低い調に以調されているため、ヴィオラ奏者は他の楽器と同じ調の音を出すために楽器を高く調弦せざるをえない。この「巨大なトルソ」(アインシュタイン)について、完成されたなら傑作であったろうと惜しまれている。 そのため補筆の試みが多く、中でもモーツァルテウムの芸術監督兼楽長だったオットー・バッハが主楽章を補筆完成し、1870年ウィーンで出版したものが有名である。 その後、R.シュマッハー、P.ウィルビーによる補作版もある。 さらに1990年6月、没後200年記念事業としてモーツァルテウムは日本人作曲家三枝成彰氏に補筆完成を依頼したことも知られている。
このような特殊な調弦の理由は次のように推測される。 通常より高く調弦することによってヴィオラの音が輝かしくなり、速いパッセージを明確に弾きやすくなるのである。[全作品事典] p.195
〔演奏〕
※バッハ補作版
モーツァルテウムの音楽監督オットー・バッハ(1833-93)は52小節以降の伴奏オーケストラ・パートを完成させ、135小節以降はモーツァルトのテーマをもとに展開し、カデンツァを追加。
さらに第2楽章として狩猟曲 K.299d を補作。
CD [カメラータ・トウキョウ 32CM-174] t=12'59 ガブリロフ Saschko Gawriloff (vn), 深井碩章 (va), ジョルジアン Karine Georgian (vc), 豊田指揮草津フェスティヴァル交響楽団 1981年、渋川市民会館 ※第2楽章の「狩猟曲」は演奏してない。 |
※ウィルビー補作版
ソロの出だしと「ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲 変ホ長調」(K.364)の冒頭主題との類似から、同曲をモデルに編曲した。
CD [PHILIPS PHCP-9270] t=11'08 ブラウン Iona Brown (vn), 今井信子 (va), オートン Stephen Orton (vc), ブラウン指揮アカデミー Academy of St Martin in the Fields 1989年6月、ロンドン |
※三枝成彰(補作)版
52小節から134小節までに加筆し進め、164小節に総休止を置いた。それにより未完の曲であることを象徴的に示している。
ここまで約5分(全体の4分の1)。
その先はモーツァルトとはまったく異質の三枝氏自身の作品なので、補作とは言い難い。
1991年12月5日初演。
CD [東芝EMI TOCZ-9175] t=20'29 ハーゲン・トリオ Lukas Hagen (vn), Veronika Hagen (va), Clemens Hagen (vc), グラーフ指揮 Hans Graf (cond), ザルツブルク・モーツァルトテウム Mozarteum Orchester Salzburg 1991年3月 |
〔動画〕
〔参考文献〕
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