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セレナード 第11番 変ホ長調 K.375

  1. Allegro maestoso
  2. Menuetto
  3. Adagio
  4. Menuetto
  5. Allegro
第1稿(6重奏)
〔編成〕 2 cl, 2 hr, 2 fg
〔作曲〕 1781年10月 ウィーン

第2稿(8重奏)
〔編成〕 2 ob, 2 cl, 2 hr, 2 fg
〔作曲〕 1782年7月 ウィーン

1781年10月
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この曲については1781年11月3日にザルツブルクの父に宛てた手紙がいろいろなことを教えてくれる。 それによると、宮廷画家のヒッケル(Joseph Hickel, 1736-1807)の妻マルガレーテ(Margarethe, 旧姓 Wutka または Witka)の妹テレーゼ Therese(義兄 Joseph の弟 Anton Hickel と結婚した)のために作曲し、聖テレジアの日(10月15日)にヒッケル邸で初演されたことがわかる。
初めクラリネット、ホルン、バスーン各2という編成で書かれた。 初演は大好評で、モーツァルトは「6人の楽師はみすぼらしいなりをしていたが、アンサンブルは見事で、特に第一クラリネットとホルン2本は抜群だった」と賞賛している。 楽師たちはヒッケル邸を含めてウィーン市内の3ヶ所を演奏して回り、彼らも稼ぐことができたという。 そして彼らはモーツァルトの住居まで来て、作曲者を喜ばせたのだった。

1781年11月3日、ザルツブルクの父へ
この連中は玄関の門を開けてもらって、中庭の中央に並び、ちょうどぼくが服を脱ごうとした瞬間に、変ホ長調の最初の和音を奏でて、最高に気分よくぼくを驚かせてくれました。
[書簡全集 V] p.163
モーツァルトは8月に引っ越したばかりだった。
1781年8月29日、ザルツブルクの父へ
ぼくはいま、グラーベン通りにあるとても立派な家具つきの部屋を借りたところです。 この手紙を読まれるころには、もうそこに住んでいるでしょう。 静かなところがよかったので、通りに面した部屋はわざと選びませんでした。
同書 p.128
というわけで、楽師たちは中庭に入って行かなければならなかったのである。 また、11月3日の手紙には、10月31日(聖ヴォルフガングスの日)にはヴァルトシュテッテン男爵夫人のところでもされたこと、そして、作曲の動機をはっきりと書いている。
ぼくがこれを書いた一番の理由は、(毎日そこへやって来る)フォン・シュトラック氏にぼくの作品を何か聴かせたかったからです。 そして、ぼくもちょっと念入りに書き上げました。
宮廷に仕えていたシュトラック(Johann Kilian Strack)を通して皇帝に自分を売り込むのが一番の動機だったのだろう。 シュトラックはヨーゼフ2世が宮廷内で定期的に開いていた室内演奏会でチェロを担当していたほか、楽器や楽譜の管理も任されていたほどの人物であり、ヨーゼフ2世に与える影響は大きかった。 しかし、宮廷での演奏会ではハイドンやモーツァルトの音楽が採り上げられることがなく、ヨーゼフ2世のモーツァルトに対する理解の程度も低かったようである。 ヒッケルを介してシュトラックと知り合ったモーツァルトはグラーベンにあった彼の家をしばしば訪問し親交を深めていた。 宮廷内にはモーツァルトを好む者があまり多くなく、その中でシュトラックは数少ない理解者だったようである。 ザルツブルクから息子を心配する父に手紙で「もし僕が宮廷や貴族たちに嫌われていると思うのなら、そんなことはない。 フォン・シュトラック氏、トゥーン伯爵夫人、ルムベーケ伯爵夫人、ヴァルトシュテッテン男爵夫人、フォン・ゾンネンフェルス氏、フォン・トラットナー夫人に聞いて欲しい」とわざわざ書いているほどである。 ただし、これらの名前を見て、レオポルトはなお心配したかもしれない。皇帝の側近というよりは、音楽仲間みたいな連中だからである。

さらにモーツァルトは、シュトラックには「ウィーンで皇帝に仕えたいという下心」を隠して接し、音楽の話だけをするようにしていたが、もちろんその気持ちを彼が感じとって、皇帝にそれとなく伝えてもらうことを狙っていた。

1782年4月10日、ザルツブルクの父へ
うるさがられたり、下心があると思われたくありませんからね。 彼はもし誠実な人として語るなら、ぼくがヴィーンに残りたいとか、ましてや皇帝に仕えたいとか、そんなことを思わせるような言葉をひと言だって聞いたことがないと言うはずです。 ぼくらは音楽のことしか話し合いません。 ですから、あの人がぼくのことを好意的に陛下に話してくれているのは、まったく彼の意志によるもので、損得を考えてのことではないのです。
[書簡全集 V] p.224
モーツァルトは彼を「親友です」と父に伝えているが、経験豊富なレオポルトは息子の甘い期待にすぎないと感じたことだろう。 シュトラックは「なにも大したことはしてくれなかった」(アインシュタイン)だけでなく、モーツァルトの希望がかなう前に、皇帝は1790年にこの世を去った。 そして、後継の弟レオポルト2世は宮廷の重要ポストにあった貴族たちを次々に解任し、そのときシュトラックも首にされ、モーツァルトを取り巻く状況は悪化することになる。

アインシュタイン「この種の作品のつねで、ここにも行進曲はない」と言う。

しかし第1楽章はソナタ形式の理想的な行進曲にほかならず、個々の楽器どれものための、華やかな旋律的、装飾的な生命に満ちている。 これを吹奏することは喜びである!
[アインシュタイン] p.285
続く楽章について次のように評している。
どこまでも主調のままのアダージョではさらに、楽器の問いと答え、幸福な同行の愛らしい戯れがはじまる。 モーツァルトはここではもうそれ以上深みへ行こうとは欲しなかった。 2つのメヌエットでは、この戯れがやや粗野な性格を帯びている。 フィナーレの主要主題はハイドンへの挨拶のようであるが、このフィナーレには、ジャンルと、『命名日の』お祭りのおりだという動機との許すかぎり、多くの精神と芸術がこめられている。
テレーゼという女性のために書いたこの管楽6重奏曲は、これだけで生きる喜びに満ちていると思われるが、モーツァルトは何か足りないものを感じたのだろうか、翌1782年7月に大急ぎで2本のオーボエを加え、管楽8重奏にした。 その動機は不明だが、同じ楽器編成のセレナード第12番(ハ短調「ナハトムジーク」K.388)と近接するので、何かの演奏会のために急に必要になるなどの事情があったと思われる。 詳しいことはわからない。

〔演奏〕
CD [PHILIPS PHCP-9159〜60] t=24'41
オランダ管楽アンサンブル
1969年3月
CD [SONY SRSC-8830] t=25'10
ウッダムス Richard Woodhams (ob), ヴルブスキー Rudolph Vrbsky (ob), コーエン Frank Cohen (cl), ストルツマン Richard Stoltzman (cl), ラウチュ Robert Routch (hr), サーキン John Serkin (hr), アービター Eric Arbiter (fg), ヘラー Alexander Heller (fg)
1972年8月13日、マールボロ音楽祭でのライブ
CD [SONY classical SB2K 60115] t=24'36
ダンツィ五重奏団 Danzi Quintet / Masashi Honma (ob), Toshiyuki Hasegawa (ob), Piet Honingh (cl), Harry Bijlholt (cl), Adriaan van Woudenberg (hr), Peter Steinmann (hr), Brian Pollard (fg), Frans Berkhout (fg)
1977年6月、オランダ、ハーレム、Doopsgezinde Kerk
CD [ORFEO 35CD-10083] t=23'12
ベルリン・フィル管楽アンサンブル / シェレンベルガー Hansjoerg Schellenberger (ob), ローデ Peter Rohde (ob), ライスター Karl Leister (cl), ガイスラー Peter Geisler (cl), ザイフェルト Gerd Seifert (hr), クリエール Manfred Klier (hr), ピースク Gunter Piesk (fg), トローク Henning Trog (fg)
1982年11月、ベルリン、イエス・キリスト教会
CD [CHANDOS CHAN 9284] t=23'52
オランダ管楽アンサンブル
1993年
CD [DENON COCQ-83261] t=24'03
ウィーン木管八重奏団
1999年

〔動画〕

〔参考文献〕

 

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2024/02/17
Mozart con grazia