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歌曲「歓喜に寄す」 ヘ長調 K.53 (47e)

〔編成〕 1声、ピアノ伴奏
〔作曲〕 1768年11月? ウィーン
1768年11月

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歌詞の冒頭の言葉から「歓喜に寄す An die Freude」という曲名で呼ばれている。 40小節、4分の2拍子、ヘ長調。 また、曲の冒頭に「中庸の速さで」と指定されている。 モーツァルトの最初の歌曲。 歌声部とピアノ低音(左手だけ)が書かれているので、伴奏者の右手は即興的に和声をつけなければならないという。 伝統的な様式で作られた習作的な有節歌曲。 作詞者は不詳だが、新全集ではウーツ(Johann Peter Uz, 1720-96)としている。

作曲の動機、時期はわからない。 ド・ニによればフリーメーソンのテキストをもとにモーツァルトが作曲した最初の曲という。

この作品は、音楽は特にフリーメイスン的ではないとしても、詩は明らかに、当時諸処のロッジに流布していた形而上学的な希望に想を得たものである。 この事実は、ジャン&ブリジット・マサン夫妻や、カルル・ド・ニスによって明らかにされた。 ニスは、さらに、オルミュッツの司教自身がフリーメイスンであり、この詩を選んだ可能性が強い、と示唆している。
[コット] p.133
すなわち、この曲の成立に関して、以下の有名な逸話が引用されているのである。 1767年9月、モーツァルト一家は、皇女マリア・ヨゼファ(マリア・テレジア女帝の9番めの皇女、当時16歳)とナポリ・シチリア王フェルディナント1世の婚儀のために催される祭典をめざしてウィーンへ旅立ったが、ちょうどその頃ウィーンでは天然痘が大流行していた。 皇女マリア・ヨゼファは10月15日に病死した。 10月下旬、感染を逃れてモーツァルト一家はウィーンを離れ、オルミュッツに避難したが、まずヴォルフガングが、次に姉ナンネルも天然痘にかかり、このときヴォルフガングは一時的に失明し、危険な状態にまでいったという。 奇跡的に助かったとき、その喜びをレオポルトはザルツブルクの家主ハーゲナウアーに次のように伝えている。
1767年11月10日
ヴォルフガングは幸運にも天然痘に打ち克ちました!
で、どこで? オルミュッツでです!
[書簡全集 I] p.301
そのとき救ってくれたのがオルミッツの医師ヴォルフ(Joseph Wolff, 1724-78?)であった。 そのお礼に、モーツァルトは令嬢(Nepomucena Franziska Wolff, 1758-?)にこの曲を書いたのだという。 のちにレオポルトは次のように書き残している。
1778年5月28日
オルミュッツからは侍医のヴォルフが一緒に来ておられましたが、この人のお嬢さんのために、昔、ヴォルフガングはオルミュッツでアリアを一曲作曲してあげました。
[書簡全集 IV] p.81
このようないきさつを根拠にして、アインシュタインはこの曲の成立を説明し、ケッヘル第3版でレオポルトの手紙のあとの1767年12月の作(K.43b)としたのであった。 しかし、現在はこの説は否定され、ヴォルフ嬢のために書いたアリアは散逸した(または別のアリアK.deestか?)とされている。 そしてこの曲「歓喜に寄す」の作曲された時期は、ウーツの詩が出版された時期(1768年12月)に合わせて K.47e に置かれた。

ウーツの詞は7つの節から成るが、演奏ではそのうちのいくつかの節だけが歌われることが多い。

〔歌詞〕(第1節)
Freude, Königin der Weisen,
Die, mit Blumen um ihr Haupt,
Dich auf güld'ner Leier preisen,
Ruhig, wenn die Torheit schnaubt.
  喜びよ、英知の女王よ、
彼女は花を頭に飾り、
黄金の琴の音にあなたを讃える、
静かに、愚者が息まくとも。
(以下、略)
石井宏訳 CD[PHILIPS UCCP-4085/7]

〔演奏〕
CD [PHILIPS UCCP-4085/7] t=2'32
アーメリング Elly Ameling (S), ボールドウィン Dalton Baldwin (p)
1977年8月、オランダ
※次と同じ。※第1と第7節を演奏。
CD [PHILIPS 422 524-2] t=2'30
アメリンク Elly Ameling (S), ボールドウィン Dalton Baldwin (p)
1977年8月、オランダ
※上と同じ。
CD [WPCC-4666] t=3'38
ボニー Barbara Bonney (S), パーソンズ Geoffrey Parsons (p)
1990年8月、ベルリン
※第1と第7節を演奏。
CD [BVCO-37429] t=2'24
ジャーノット Konrad Jarnot (Br), シュマルツ Alexander Schmalcz (p)
2005年12月、ドイツ、ヴェルトゼー
※第1と第7節を演奏。

〔動画〕

〔参考文献〕

 

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2014/10/12
Mozart con grazia