K.1-|K.100-|K.200-|K.300-|K.400-|K.500-|K.600-|App.K
オペラ Opera Part 5
- 第1部 1767-70
- 第2部 1771-79
- 第3部 1781-83
- 第4部 1785-86
- 第5部 1787-91
- K.527 オペラ・ブッファ「ドン・ジョヴァンニ」 1787
- K.540a アリア「私の安らぎは彼女にかかって」
- K.540b 二重唱「この小さな手に免じて」
- K.540c レチタティーヴォ「何というひどいことを」とアリア「あの恩知らずが私を裏切った」
- K.588 「コシ・ファン・トゥッテ」 (女はみなこうしたもの) 1790
- K.620 ジングシュピール「魔笛」 1791
- K.621 オペラ・セリア「ティトの仁慈」 1791
K.527 罰せられた放蕩者またはドン・ジョヴァンニ (序曲と2幕24曲)
Il dissoluto punito ossia Don Giovanni (Don Juan). Dramma giocoso in due atti
- 序曲 Andante - Molto allegro ニ短調・ニ長調
- 第1幕
(1)導入歌(Le)夜も昼もあくせくと
(2)二重唱(DA, Ot)ああ神様、父が死んだ
(3)アリア(El)知ってたら教えて、憎いあの人はどこにいるのか
(4)アリア(Le)「カタログの歌」
(5)合唱(村人たち)娘よ、恋をするなら躊躇せず
(6)アリア(マゼット)頭を下げてさがります、旦那様
(7)二重唱(Ze, DG)あちらで手を握り合おう
(8)アリア(El)逃げなさい、この裏切り者から
(9)四重唱(DA, El, Ot, DG)
(10)アリア(DA)私の誇りを奪い、父をも奪った悪者よ
※ここに挿入歌(第10曲a)K.540aがある
(11)アリア(DG)みんながワインで酔いしれる盛大な宴を用意させろ
(12)アリア(Ze)ぶって、叩いて、マゼット
(13)フィナーレ(全員)
- 第2幕
(14)二重唱(DG, Le)
(15)三重唱(El, DG, Le)
(16)カンツォネッタ(DG)窓辺に寄っておいで、かわいい娘よ
(17)アリア(DG)半分はこっちへ、あと半分はあっちへ
(18)アリア(Ze)私の素敵な薬をあげるわ
(19)六重唱
(20)アリア(Le)みなさん、私にご慈悲を
(21)アリア(Ot)私の大切な人を慰めてやって下さい
※ここに挿入歌(第21曲a)K.540bと(第21曲b)K.540cがある
(22)二重唱(DG, Le)「騎士長の石像を招待する歌」
(23)ロンド(DA)どれほどあなたを愛しているか
(24)フィナーレ(全員)とエピローグ
- 登場人物
DG=Don Giovanni Br
DA=Donna Anna S
Ot=Ottavio T
El=Elvira S
Le=Leporello B
Ze=Zerlina S
編成:fl*2, ob*2, cl*2, fg*2, hr*2, tp*2, tb*3, timp, mand, vn*2, va*2, vc, bs
[ 87年夏〜秋 ウィーン、プラハ ]
ダ・ポンテ詞。
プラハで束の間の幸せな時を過ごしていた頃、同地の歌劇団の支配人からオペラの依頼があった。内容はスペインの蕩児の行状の末路を描く滑稽劇(ドラマ・ジョコーゾ)。
ドラマはスペインの貴族ドン・ジョヴァンニによる騎士長(ドンナ・アンナの父)の殺害から始まり、その騎士長の亡霊の力によりドン・ジョヴァンニの地獄落ちをもって終る。
死で始まり死で終るこのオペラを悲劇と呼ぶことはできない。悲劇と喜劇、真面目と滑稽、戦慄と笑いが混じり合い、明と暗の中で進行し、一応ハッピー・エンドで終るが、
地獄に落ちたドン・ジョヴァンニの方がなぜか輝き、生き残り新たな生活に入る人たちの方が光を失って見える。父親殺しとその懲罰を内容とするこのオペラの作曲は、
春から夏にかけて、ちょうど父レオポルトの死を挟んだ時期に進められた。モーツァルトは実生活をそのまま作品に反映させるような作家ではなかったが、彼にとって絶対的な存在であった父の死はやはり大きな影響を作曲に与えている。
初演の2日前になっても序曲を書こうとしないので、業を煮やした劇場支配人グァルダゾーニと興業師ボンディーニは、ドゥーシェク夫人の別荘に歌手たちをつれて行き、一騒ぎした後、一計を案じてモーツァルトを音楽室に閉じ込めてしまったという。
こうして、序曲は初演の前の晩に書き上げられた。その序曲の最初のアンダンテは、騎士長の石像が来訪する場面から取られ、ドン・ジョヴァンニの宿命を暗示する。
続くモルト・アレグロは、ドン・ジョヴァンニ亡き後の人々の晴々とした雰囲気を表している。この作品を完成させたヴィラ・ベルトラムカというプラハ郊外にある屋敷(右の写真)は、1784年からドゥーシェク夫人の所有となり、
現在はモーツァルト記念館として公開されている。また、このオペラの自筆譜はパリの国立図書館に所有されている。
ただしプラハ音楽院図書館に残る楽譜(モーツァルト自身が目を通したものと言われる)には、後にウィーンで公演されたときには削除された問題の一節が書かれてある。
それは仮面をつけて訪れたアンナ、エルヴィラ、オッタヴィオを歓待するドン・ジョヴァンニが「自由万歳 Viva la liberta.」と歌うところであり、プラハでの初演の際、舞台の上の歌手たちが12回も合唱で繰り返したという。
おりしもフランスから届く革命の報告がウィーンの貴族たちの神経を尖らせていた。
モーツァルトには政治的な意図がなかったのかもしれないが、このオペラは多くの問題を含み、多様な解釈と想像をかきたてる傑作である。
- 礒山 雅「モーツァルトあるいは翼を得た時間」 1988(pp.114-138)
- ロビンズ・ランドン(海老沢訳)「モーツァルト、最後の年」 2001(pp.155-163)
- 野口秀夫「歌劇《ドン・ジョヴァンニ》K.527 序曲代替終結部の評価再考」 2001年5月
騎士長が決闘に倒れるところをベートーヴェンは嬰ハ短調に書き換えてピアノ・ソナタ「月光の曲」を作った。
ただし、この「フィデリオ」の作者には「ドン・ジョヴァンニ」を理解することはできず、そして次のオペラ「コシ」は許せなかった。
リヒャルト・シュトラウスがカール・ベームに語った言葉
第1幕のフィナーレで、レポレロが仮面をかぶった3人を招き入れて、あの悲劇的な仮面の三重唱が始まる直前のアダージョの2小節を君は覚えているだろう。
もし僕がこの2小節を作曲していたとしたら、代りに僕は自分のオペラのうちの3篇を差し出してよいと思っているよ。
演奏
- ロージー監督、マゼール指揮パリ・オペラ座 LD.3 t=168分
- トスカニーニ指揮 NBC CD.487 t=5'29(序曲); 1946
- スウィトナー指揮シュターツカペレ CD.108 t=5'55(序曲)
- フルチェク指揮ヴィルトゥオージ・プラハ CD.403 t=5'54(序曲); 1992
- キリ・テ・カナワ S, CD.96 (10) t=6'33 (23) t=7'22
- ルチア・ポップ S, ショルティ指揮ロンドンPO CD.227 (7) t=4'07
- シュワルツコップ S CD.239 (8) t=1'19 (12) t=3'26 (15) t=5'35 (18) t=3'29 (23) t=7'17
- ソーヤー B, 他 CD.377 (7) t=3'40 (11) t=1'19 (21) t=5'05 (8) t=3'46
- オッター MS CD.553 (12) t=3'46 (18) t=3'13 ; 1995
編曲
- オランダ管楽Ens CD.336 t=38'30 ; 1973, Tribensee編曲(13曲)
- アテナEns CD.357 t=56'00 ; 1973, Tribensee編曲(20曲)
- モーリス・ブルグ木管アンサンブル CD.502 t=26'35 ; 1986, Triebensee編曲(10曲)
- ブダペスト管楽Ens CD.418 t=12'16 ; 1989, Tribensee編曲(6曲)
- 山下和仁、尚子 g CD.226 (4) t=3'38 (5) t=1'25 (7) t=3'24 (10b) t=4'03 (16) t=1'45 ; 1991
- カツァリス p CD.395 t=15'45 ; 1992, タールベルク編曲「セレナーデとメヌエットによる幻想曲」
- カツァリス p CD.395 (7) t=3'06 ; 1992, ビゼー編曲
- シュルツ fl, シェレンベルガー ob CD.416 t=17'38 ; 1987, 編者不詳(8曲)
- トリオ・ディ・クラローネ(basset-hr*3, (4)cl)CD.160 t=12'39 & CD.493 t=17'06/R.Schottstadt編曲「3つのバセット・ホルンのためのディヴェルティメント ヘ長調」
- ヨーロッパ・シンフォニー管楽ソロイスツ CD.480 t=60'14 ; 1996, Tribensee編曲(20曲)
K.540a アリア「私の安らぎは彼女にかかって」
Aria of Don Ottavio "Dalla sua pace la mia dipende"
編成:T, fl, ob*2, hr*2, fg*2, vn*2, va, vc, bs
[ 88年4月24日 ウィーン ]
「ドン・ジョヴァンニ」への追加アリア11番(ドン・オッターヴィオ)。
オペラのウィーン公演(5月7日)の際、オッターヴィオ役のモレラのために。
- 山下和仁, 尚子 g CD.226 t=4'03 ; 1991, ギター編曲
K.540b 二重唱「この小さな手に免じて」
Duet of Zerlina and Leporello "Per queste tue manine"
編成:S, Bs, fl*2, ob*2, cl*2, fg*2, vn*2, va*2, vc, bs
[ 88年4月28日 ウィーン ]
「ドン・ジョヴァンニ」追加二重唱(ツェルリーナとレポレロ)。5月7日の公演のために。
K.540c レチタティーヴォ「何というひどいことを」とアリア「あの恩知らずが私を裏切った」
Recitative and aria of Donna Elvira "In quali eccessi" and "Mi tradi quell'alma ingrata"
編成:S, fl, cl*2, fg*2, hr*2, vn*2, vc, bs
[ 88年4月30日 ウィーン ]
「ドン・ジョヴァンニ」へ追加。5月7日のウィーン公演で、ドンナ・エルヴィラ役のカヴァリエリのために。
K.588 オペラ「コシ・ファン・トゥッテ」 (女はみなこうしたもの)
Cosi fan tutte. Opera buffa in 2 acts
- 序曲 Presto ハ長調(短いアンダンテ序奏ある)
- 第1幕
(1) 3重唱 Fe, Gu, Al「そんなことドラベッラはできないぞ」
(2) 3重唱 Fe, Gu, Al「女の貞操はアラビアの不死鳥と同じ」
(3) 3重唱 Fe, Gu, Al「素敵なセレナーデをやりたいな」
(4) 2重唱 Fi, Do「ご覧なさい、妹よ」
(5) アリア Al「言いたいけれど、勇気が出ない」
(6) 5重唱 Fi, Do, Fe, Gu, Al「ああ神よ! この足は」
(7) 2重唱 Fe, Gu「運命は屈服する」(当時なかった歌なので省略される)
(8) 合唱「楽しきかな軍隊生活は」
(9) 5重唱 Fi, Do, Fe, Gu, Al「毎日手紙をくださいね」
(10) 3重唱 Fi, Do, Al「風は穩やかに、波は靜かなれ」
(11) アリア Do「心に渦巻くいらだちよ」
(12) アリア De「男に、兵隊さんに」
(13) 6重唱 Fi, Do, De, Fe, Gu, Al「麗しのデスピーナさんに」
(14) アリア Fi「岩のように決して動かない」
(15) アリア Gu「恥ずかしがらず、愛らしい眼差しを」
(16) 3重唱 Fe, Gu, Al「笑うのかね?」
(17) アリア Fe「恋人の愛の息吹きは」
(18) 終曲 Fi, Do,全員「ああ、ほんの一瞬のうちに」
- 第2幕
(19) アリア De「女が15にもなれば」
(20) 2重唱 Fi, Do「あの黒髪の方にするわ」
(21) 2重唱と合唱 Fe, Gu「甘く優しいそよ風よ」
(22) 4重唱 De, Fe, Gu, Al「お手をどうぞさあこちらへ」
(23) 2重唱 Do, Gu「このハートを贈ります」
(24) アリア Fe「これぞ女の美しい魅力」(省略して次へ進むよう指示されている)
(25) ロンド Fi「いとしい人よ、この弱い私を許して下さい」
(26) アリア Gu「女性の皆さん、あんた方は」
(27) カヴァティーナ Fe「激しい葛藤が心に渦巻き。裏切られ、嘲笑され」
(28) アリア Do「恋は盗人、誘惑の蛇よ」
(29) 2重唱 Fi, Fe「もうすぐ彼の腕の中に」
(30) アンダンテ Al「女はみんなこうしたもの。人は非難するが私は許す」
(31) 終曲(全員)「さあ早く、松明に火を灯しましょう」
- 登場人物
Fi = Fiordiligi 姉
Do = Dorabella 妹
Fe = Ferrando ドラベッラを愛する士官
Gu = Guglielmo フィオルディリージを愛する士官
Al = Don Alfonso 老哲学者
De = Despina 小間使い
編成:fl*2, ob*2, cl*2, fg*2, hr*2, tp*2, timp, vn*2, va*2, vc, bs
[ 89年秋〜90年1月 ウィーン ]
ダ・ポンテ詞。劇は2組の恋人たち、老哲学者ドン・アルフォンソ、小間使いデスピーナの6人で演じられる。
序曲はアンダンテとプレストから成り、アンダンテは第2幕で哲学者が「女はみんなこうしたもの」と語る旋律。
初演は1790年1月26日ブルク劇場。
参考
- 礒山 雅「モーツァルトあるいは翼を得た時間」 1988(pp.140-154)
- 〃 「モーツァルト、二つの顔」 講談社 2000 (pp.140-153)
デント評
洗練された観客のためのオペラである。人工的な世界のオペラとしては最上のものであり、時の一致は、このオペラの魅力である劇の人工性をさらに高める働きをしている。
演奏
- デラ・カーザ S, ルートヴィヒ MS, ローゼ S, 他, ベーム指揮ウィーン・フィル CD.595-6 t=146'46 ; 1955 (全曲)
- ムーティ指揮ミラノ・スカラ座Cho, 他 LD.2 t=187分 ; 1989 (全曲)
- スウィトナー指揮シュターツカペレ CD.108 t=4'15(序曲)
- バルツァ Ms, 他 CD.377 (10) t=3'16, (14) t=4'39, (17) t=5'12, (26) t=3'24
- スカルトゥリーティ Br CD.562 (15) t=5'08 ; 1996
編曲
- モーリス・ブルグ木管アンサンブル CD.502 t=17'43 ; 1986, Wendt編曲
- ブダペスト管楽Ens CD.418 t=9'04 ; 1989, Wendt編曲
- トリオ・ディ・クラローネ basset-hr CD.493 t=11'59 ; 1994, R.Schottstadt編曲
K.620 ジングシュピール「魔笛」
Die Zauberfloete. German opera in 2 acts
- 序曲 Adagio - Allegro 変ホ長調
- 第1幕
(1) 序唱 (Ta) 「助けてくれ、神々よ!」
(2) アリア (Pp) 「おいらは鳥刺し」
(3) アリア (Ta) 「なんて美しい人だろう」
(4) アリア (KN) 「恐れることはない、若者よ」
(5) 5重唱 (3D, Ta, Pp) 「君も十分思い知っただろう」
(6) 3重唱 (Pa, Mo, Pp) 「お前は俺のもの」
(7) 2重唱 (Pa, Pp) 「愛の心を知る人ならば」
(8) 終曲(全員)「この道を行けば、あなたの目的へ、ザラストロ万歳」
- 第2幕
(9) 行進曲 変ロ長調
(10) アリア (Sa) 「気高き神々よ」
(11) 2重唱 (Pr) 「ここは試練の館だ」
(12) 5重唱 (3D, Ta, Pp) 「どうしてそんな所にいるの?」
(13) アリア (Mo) 「恋人たちは抱き合ったりキスしたり」
(14) アリア (KN) 「わが胸は復讐に煮えたぎっている」
(15) アリア (Sa) 「この聖なる門の内には」
(16) 3重唱 (3K) 「3度目に会うときは努力の報いがあるでしょう」
(17) アリア (Pa) 「ああわが幸せは」
(18) 合唱 (Pr) 「何というこの喜び。暗い夜は去って太陽が輝き」
(19) 3重唱 (Pa, Ta, Sa) 「いとしい人、もう会えないの」
(20) アリア(Pp)「おいらが欲しいのは、娘か女房」
(21) 終曲(全員)「太陽の光が夜を追い払った」
- 登場人物
Pa = Pamina S
Ta = Tamino T
Sa = Sarastro B
KN = 夜の女王 S
3D = 三人の侍女
Pp = Papageno B
Papagena S
3K = 三人の童子
Mo = Monostatos Bs
Pr = 僧侶 T
編成:fl*2(picc), ob*2, cl*2, basset-hr*2, fg*2, hr*2, tp*2, tb*3, timp, vn*2, va*2, vc, cb, グロッケンシュピール
[ 91年3〜9月 ウィーン ]
フリーメーソンの仲間で、劇団を主宰するシカネーダーの注文を受けて作られた。5月頃から作曲に取り組み、9月28日に完成。30日にシカネーダーの劇場で初演された。
自筆譜は12段からなる横長の五線譜で、序曲31頁、第1幕190頁、第2幕210頁と膨大なものだが、パミーナとパパゲーノの二重唱などほんの数頁にわたって書き直しがあるだけで、
あとはインクの染みをたらしながら一気に書き上げてあるという。
この「2幕のドイツ・オペラ」と記された劇にはメーソンの儀式や試練、あるいは象徴などか取り入れられている。序曲はアダージョの序奏とアレグロの主要部からなり、
冒頭の力強い3つの和音はオペラの中でも現れ、メーソンの信条を表しているという。会員は皆兄弟で、平等であり、互いに助け合うことを基本とするフリーメーソンに対する宮廷の弾圧は、
ヨーゼフ2世の後、レオポルト2世配下の秘密警察によりますます厳しくなり、モーツァルトの死後、このオペラは上演禁止になるだろうと噂されていた。
しかし予想に反して上演がふえ、1年後の11月3日には100回の上演があったという。メーソンとの関係について、ジャック・シャイエの詳細な研究がある。
1790年8月末、シカネーダーはベネディクト・シャックにメルヘン・オペラ(童話歌劇)「賢者の石 Stein der Weisen」あるいは「魅惑の島」の作曲を依頼した。
それにモーツァルトも手伝い、他にヨハン・バプティスト・ヘンネベルク、フランツ・クサヴァー・ゲルルも加わり、シカネーダーも含めて5人の合作となった。
モーツァルトは、喜劇的二重唱「いざ、いとしき乙女よ、共に行かん」K.592a (625)を作曲したらしい。
そのオペラは9月11日に初演された。
その楽譜をアメリカの音楽学者D.J.バックが1996年、ハンブルク図書館で発見した。
マーティン・パールマンは「魔笛」との関連に注目し、ボストン・バロックを指揮し、この「賢者の石」を1998年、世界初録音した。
そのCD(TELARC PHCT-5190/1)にはパールマンによる「魔笛」との比較解説が含まれている。
文献
- ジャック・シャイエ「魔笛、秘教オペラ」高橋英郎&藤井康生訳、白水社
- ロビンズ・ランドン(海老沢訳)「モーツァルト、最後の年」 2001, pp.181-220
- 「賢者の石」について → 礒山 雅著「モーツァルト、二つの顔」講談社 2000, pp.72-78
- 第7曲二重唱について → 野口 秀夫「歌劇《魔笛》二重唱「恋を知るほどのものには」K.620-7のリズム問題 〜修正されたものと修正されなかったもの〜」2000年2月
- 第17曲アリアについて → ケルターボルン「音楽分析の方法」1981(シンフォニア)pp.85-88
CD
- ベルイマン監督, エリクソン指揮 LD.1 t=130分 ; 1974
- イェルヴェフェルト演出, ドロットニングホルム宮廷劇場 LD.13 t=160分 ; 1989
- ショルティ指揮ウィーンPO CD.61 t=61'47(ハイライト)
- クレンペラー指揮フィルハーモニア管 CD.474 t=71'42(ハイライト)
- トスカニーニ指揮NBC交響楽団 CD.487 t=6'52(序曲) ; 1949
- スウィトナー指揮シュターツカペレ CD.108 t=6'45(序曲)
- ヴァイル指揮ターフェルムジーク・バロック CD.291 t=6'28(序曲) ; 1991
- ベリー B, 他 CD.377 (2) t=2'35 (3) t=4'00 (14) t=3'09 (21) t=7'45 ; 1964-81
編曲
- モーリス・ブルグ木管アンサンブル CD.502 t=18'54 ; 1986, Heidenreich編曲
- シュルツ fl, シェレンベルガー ob CD.416 t=18'50 ; 1987, 1792〜1809年頃の編者不明の「2つのフルートまたは2つのヴァイオリンのための」
- ブダペスト管楽Ens CD.418 t=12'18 ; 1989, Heidenreich編曲
- 山下和仁, 尚子 g CD.226(第2, 3, 7, 8, 10, 15, 16, 17, 20曲) ; 1991, 演奏者による編曲
- カツァリス p CD.395 t=4'44 ; 1992, ゲネリス編曲
- トリオ・ディ・クラローネ basset-hr CD.493 t=11'13 ; 1994, R.Schottstadt編曲
- 有田正広 fl, 有田千代子 fp CD.573 (17) t=3'31 ; 1998
K.621 オペラ・セリア「ティトの仁慈」
La Clemenza di Tito (Titus). Opera seria in 2 atti
- 序曲 Allegro ハ長調
- 第1幕
(1) 2重唱 (Vi, St) 「お望み通りご命令下さい」
(2) アリア (Vi) 「私を喜ばせるなら」
(3) 2重唱 (St, An) 「君は妹のセルヴィーリアを私にくれた」
(4) 行進曲
(5) 合唱(民衆)「神々よ、守りたまえ、ローマの運命を」
(6)アリア (Ti) 「絶大な王の座の」
(7) 2重唱 (Sv, An) 「ああ、この苦しみ」
(8) アリア (Ti) 「ああ王座の周りの全ての者の心が」
(9) アリア (St) 「私は行きます」
(10) 3重唱 (Vi, An, Pu) 「まいります、私の心は恐ろしさで凍えます」
(11) レチタティーヴォ (St) 「神よ、この狂気、私の心は乱れる」
(12) 終曲(合唱)「守りたまえ、おお神よ」
- 第2幕
(13) アリア (An) 「ティトに戻れ、再び忠誠を誓え」
(14) 3重唱 (Vi, St, Pu) 「もし、あなたが顔に」
(15) 合唱(民衆)「偉大な神に感謝の念を捧げよう」
(16) アリア (Pu) 「不実を知らない人は」
(17) アリア (An) 「あなたは裏切らぬ、彼は死に値する」
(18) 3重唱 (St, Ti, Pu) 「あれがティトの顔か、彼のやさしさはどこへ?」
(19) アリア (St) 「せめてこのひと時、かつての友情を」
(20) アリア (Ti) 「ああ気高き神々よ、厳しい心で臨みたい」
(21) アリア (Sv) 「あなたが彼のために泣いても」
(22) レチタティーヴォ (Vi) 「今こそ信念を試す時だわ」
(23) ロンド (Vi) 「もう婚姻の女神は天から降りてこない」
(24) 合唱(民衆)「天の神々の慈悲で、偉大な英雄を苦難から守りたまう」
(25) レチタティーヴォ (Ti) 「今日は何という日だ」
(26) 終曲(合唱)「本当にお許し下さるのですか」
- 登場人物
Ti = Tito(ローマ皇帝)T
St = Sesto(ティトの友人)S
Sv = Servilia(セストの妹)S
Vi = Vitellia(先帝の娘)S
An = Annio(セストの友人)A
Pu = Publio(親衛隊長)Bs
編成:fl*2, ob*2, basset-hr(第23曲で), cl*2, fg*2, hr*2, tp*2, timp, vn*2, va*2, vc, cb
[ 91年夏〜秋 ウィーン、プラハ ]
メスタージォ・マッツォーラ詩。皇帝レオポルト2世のボヘミヤ王即位戴冠式のために。1791年9月6日皇帝皇妃の臨席のもとに、モーツァルトの指揮で上演された。
作曲の期間が短く(依頼を受けてから18日間で作った。プラハへ向う馬車の中でも書いていたという)、台本もあまり良くなく、
さらに作曲者自身の体が弱っていたため、必ずしも霊感豊かな作品にはならなかったといわれているが、この種の真面目な内容にはモーツァルトはあまり乗り気でなかったのが本当の理由ではなかろうか。
劇の内容は、ローマ皇帝ティトゥスが先王の娘や信頼していた部下に裏切られながらも、罪を悔いたこれらの人達を許してやる。
オペラを見た皇妃は、この音楽は「ドイツ人の汚物」だと言ったという。モーツァルト一行は9月半ばにウィーンに帰った。
1791年4月26日、プラハの王室国立劇場でドゥーシェク夫人は慈善演奏会を催し、ヴィテリアのロンド "Non piu di fiori"
今はもう、花で 美しい愛の鎖を作りに 婚姻の女神ヒメネスが 天から降りて来ぬように。
| | ごつごつと太い 綱に縛られ 死が私に向って やってくるのが見える。
| | 不幸な私! 何という恐怖! ああ、皆は私のことを何と言おう! でも私の苦悩を見た者は 私に憐れみを感じてくれるでしょう。
|
| | | |
(小瀬村幸子訳) |
を歌った。この曲にはバセット・ホルンの助奏があり、アントン・シュタドラーがこのとき演奏したらしい。
この曲はオペラの作曲に先立って(ドゥーシェク夫人の演奏会のために?)作られていた。
cf : ロビンズ・ランドン(海老沢訳)「モーツァルト、最後の年」 2001(pp.129-140 & pp.164-179)
歌詞については、メタスタージョの原作と比較して pp.134-136 にある。
スタンダール評
優しい愛情のみが各人物を動かしている。友人に向い「君の罪を私に打ち明けたまえ。君といるのは親友だよ」と話しかけるティトゥスより優しいものがあろうか。
フィナーレでティトゥスが「友人になろう」という言葉は、冷酷無比の税収吏をさえ泣かせる。
演奏
- ポネル演出, レヴァイン指揮ウィーンPO LD.8 t=136分
- Andreae指揮 Tonhalle-Orchester CD.571 t=4'55 (序曲) ; 1949
- スウィトナー指揮シュターツカペレ CD.108 t=5'54 (序曲)
- ブリュッヘン指揮18世紀オーケストラ CD.528 t=5'10 (序曲) ; 1986
- ラウニヒ Sopranist CD.563 (9) t=6'39 ; 1989
ヴィテリアのロンド
- ポップ S CD.601 (23) t=7'47 ; 1993
- オッター MS CD.553 (22-23) t=8'56 ; 1995
編曲
- ブダペスト管楽Ens CD.418 t=14'46 ; 1989, Triebensee編曲
- トリオ・ディ・クラローネ basset-hr CD.493 t=14'21 ; 1988, R.Schottstadt編曲
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