Mozart con grazia
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教会ソナタ
Church sonatas / Sonates d'Eglise / Kirchensonaten
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断片的なのを除いて17曲あり、すべて1772〜80年の間にザルツブルクで作られた。
なお、マルティーニ神父に宛てた手紙(1776年9月4日)では「使徒書簡のためのソナタ Sonata all'Epistola」と言っている。
ボローニャのマルティーニ師へ
目下のところ、私は室内用と教会用の曲を書くのを楽しんでおります。
(中略)
私どもの教会音楽は、イタリアのそれとは大いに異なっているばかりか、いっそうそれがつよまり、キリエ、グローリア、クレード、ソナータ・アレピストラ、オッフェルトリオ、あるいはモテット、サンクトゥス、それにアニュス・デイのすべてを含むミサ、さらにもっとも荘厳なミサですら、大司教御自身がじきじきに取りおこないますときには、一番長くてさえ45分以上にわたって続いてはならないのです。
この種の作曲には特別な勉強が必要であります。
それにあらゆる楽器、軍隊用トランペット、ティンパニ等を伴ったミサ曲であることが要求されます。
[書簡全集III] pp.24-25
使徒書簡のためのソナタとは、グロリアとクレドにはさまれたミサの間にオルガンと一緒に演奏される短い器楽曲をいう。
モーツァルトの教会ソナタはコロレド大司教の時代に司教座聖堂の典礼に用いられたものである。
ザルツブルクの信者にとっても、モーツァルトにとってと同様に、このような「書簡ソナタ」は別に奇異なものでも不快なものでもなかった。
これは古い伝統によったものであり、その性格も「世俗的」なものを感じさせはしない。
(中略)
これらのソナタの多くは、二部のヴァイオリンと低音部のために書かれており、初期のものでは、オルガンは伝統的な数字付き通奏低音の演奏に限られていたが、モーツァルトの作曲家としての成長につれて、オルガンのパートも重要になってゆく。
K336/336dのソナタなどはまったくピアノ・コンチェルトの第一楽章そのものであり、即興のカデンツァの指定までついているのである。
また三曲のソナタにおいては、オーケストラ部分の規模が大きくなっている。
すなわちK263では二本のトランペット、K278/271eではオーボエとトタンペットが二本ずるにティンパニ、K329/317aではオーボエ、ホルン、トランペットが二本ずつにティンパニがそれぞれ加わっているのである。
楽器編成から見てK329/317aは『戴冠式ミサ』のためのソナタだと考えられている。
またK336/336dは、おそらくK337のミサのためのソナタであろう。
[ド・ニ] pp.130-131
断片、真偽のはっきりしないものを含め、このジャンルの作品を以下に並べよう。
- K.67 (41h) 教会ソナタ 第1番
Andante 変ホ長調 44小節
〔作曲〕 不明
- K.68 (41i) 教会ソナタ 第2番
Allegro 変ロ長調 62小節
〔作曲〕 不明
- K.69 (41k) 教会ソナタ 第3番
Allegro ニ長調 60小節
〔作曲〕 1772年? ザルツブルク
- K.124A 教会ソナタ <紛失>
ニ長調、断片
〔作曲〕 1772年? ザルツブルク
第3版の番号は K.Anh.65a。
自筆譜はなく、新全集では成立は不明としている。
さらに真偽も疑われ、最近では、真作ではないとされている。
すなわち、父または別の作曲家のものをスケッチしたものであろうとされている。
- K.144 (124a) 教会ソナタ 第4番
Allegro ニ長調 74小節
〔作曲〕 1774年初 ザルツブルク
- K.145 (124b) 教会ソナタ 第5番
Allegro ヘ長調
〔作曲〕 1774年初 ザルツブルク
- K.124c (Anh.C.16.01) 教会ソナタ <偽作>
断片 10小節
〔作曲〕 1772年? ザルツブルク
新全集に採録され、Anh.C.16.01と分類された。しかしプラートは父レオポルト作としている。
- K.212 教会ソナタ 第6番
Allegro 変ロ長調
〔作曲〕 1775年7月 ザルツブルク
- K.224 (241a) 教会ソナタ 第7番
Allegro con spirito ヘ長調
〔作曲〕 1780年初 ザルツブルク
- K.225 (241b) 教会ソナタ 第8番
Allegro イ長調
〔作曲〕 1780年初 ザルツブルク
- K.241 教会ソナタ 第9番
Allegro ト長調
〔作曲〕 1776年1月 ザルツブルク
- K.244 教会ソナタ 第10番
Allegro ヘ長調
〔作曲〕 1776年4月 ザルツブルク
- K.245 教会ソナタ 第11番
Allegro ニ長調
〔作曲〕 1776年4月 ザルツブルク
- K.263 教会ソナタ 第12番
Allegro ハ長調
〔作曲〕 1776年12月? ザルツブルク
- K.274 (271d) 教会ソナタ 第13番
Allegro ト長調
〔作曲〕 1777年四旬節 ザルツブルク
- K.278 (271e) 教会ソナタ 第14番
Allegro ハ長調
〔作曲〕 1777年3月か4月 ザルツブルク
- K.328 (317c) 教会ソナタ 第15番
Allegro ハ長調 ソナタ形式
〔作曲〕 1779年3-4月? ザルツブルク
- K.329 (317a) 教会ソナタ 第16番
Allegro ハ長調 142小節
〔作曲〕 1779年3月? ザルツブルク
- K.336 (336d) 教会ソナタ 第17番
Allegro ハ長調
〔作曲〕 1780年3月 ザルツブルク
〔参考文献〕
- [書簡全集]
海老沢敏・高橋英郎編訳 「モーツァルト書簡全集」 白水社
- [ド・ニ]
カルル・ド・ニ 「モーツァルトの宗教音楽」 相良憲昭訳、白水社 1989
2010/02/07