地方におけるケアマネと情報化のかかわり


要約:ケアマネがかかわる業務のうち、コンピュータ化がもっとも難しいのはサービスの調整業務です。この点に関しては、地方と都会では状況がまったく異なります。このセッションでは、地方においてサービス調整業務をいかにコンピュータシステム化していくかについて、私論を述べます。
 介護保険の施行は目前に迫っており、今ある資源を利用してシステムを立ち上げるべきだと考えます。


【目次】
地方と都会の違い(1)(このページ)
地方と都会の違い(2)
ケアマネジメントのコンピュータ化
コンピュータ化への障壁
空き情報システムの構築
コストパフォーマンスとセキュリティー
システムの立ち上げと管理
介護保険事業者情報提供システムについて


その1地方と都会との違い

ケアマネジメントを中心になって担う機関は、都会と地方では大きく異なるものと予想されます。

 都会では本来介護保険で予想されたように、介護サービスに民間がどんどん参入してくると考えられます。したがって、介護サービスに付帯して(いわばおまけとして)ケアマネジメントの大部分は民間により行われるでしょう。

 他方、広い面積に少ない人間が散らばっている田舎では、民間の参入は限られたものになるでしょう。また田舎でも中心部と辺縁部では民間の対応も異なるでしょう。好むと好まざるとにかかわらず、公的機関(役場・ほぼ公立の在宅支援センターなど)がケアマネジメントを担うことになるでしょう。

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ケアマネジメントとは
ケアマネジメントとは、利用者ひとりひとりのニ一ズに沿った最適なサービスを提供できるよう、地域で利用できるさまざまな資源を最大限に活用して組み合わせ、調整することである。こうした役割を担うのがケアマネジャー(介護支援専門員)であり、ケアマネジャーは本人および家族からの依頼に基づいて、ケアプランを策定、評価し、各種の機関の調整などにあたる。在宅では、訪問看護婦やホームヘルパーなどがそれぞれ別な機関から派遣されており、また、かかりつけ医からの指示とも調整しなければならないので、ケアマネジャーの役割はより重要となるが、施設においても退院、退所後のケアを円滑に提供するためには不可欠である。
こうしたサービスの組み合わせと調整を行う際は、その費用面についても十分配慮しなければならない。すなわち、介護保険下では、各要介護度に対応して給付額が決まるので、策定したケアプランのサービスが、この給付額の範囲内に収まるように工夫する必要がある。また、本人および家族が給付額の範囲を超えたサービスを希望した場合には、それに対応したケアプランを策定しなければならない。なお、本人および家族が負担する金額は、介護保険で給付される範囲については1割負担、それを超える分については全額自己負担であり、ケアマネジャーはこうした負担額を計算し、それが大きすぎると判断されたらケアプランを策定し直す必要がある。
このようにケアマネジャーの役割は、各利用者の予算の範囲でサービスを組み含わせ、調整することであるが、それをあくまでも本人および家族の依頼に基づいて行う点に留意すべきである。すなわち、
ケアマネジャーの業務は、基本的には旅行代理店が行う顧客のニ一ズと予算に合ったさまざまなパッケージ旅行の開発・斡旋と同じであり、もし提示されたケアプランが希望に沿わなかった場合には、ほかの機関のケアマネジャーに行くことは自由である。介護保険にはこうした基本的な考え方が基底にあるため、本人および家族はケアマネジャーを介さずに、直接サービスを購入し、認定された要介護度の範囲まで、その費用の還付を求めることもできる。
 慶応大学教授:池上直己 日本医師会雑誌 vol118(9) pp44 より抜粋、赤色は森田