地方におけるケアマネと情報化のかかわり

(その2)地方と都会との違い、つづき

 役場や保健センター、半公立の在宅介護支援センターの場合、お互いの情報のやりとりは比較的スムーズです。また最近では情報管理をコンピュータでおこなえるように基盤を整備している自治体も多くなっています。したがって自治体の公的機関同志の患者情報の共有は不可能ではないようです。 

 ところが民間がこれに加わるとなると、あらたにコンピュータネットワークをどう作るか、セキュリティをどう確保するかなどの問題が生じてきます。情報開示は自治体にとって避けられない道であるはずですが、今のところあまり進んでいるとはいえません。日々変化するサービス供給側・需要側の情報をオンラインで共有する、と言った経験は、すくなくとも田舎の自治体にはないはずです。さらにこの点について介護保険の導入にあわせて自治体側で真剣に検討されている、と言った話は聞いた事がありません。

つまるところ、地方でのケアマネジメントにおけるコンピュータシステム化(OA化とも称しているようです)には難題が山積している状態です。

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 情報活動としてのケアマネジメント
情報活動の視点からいえば、ケアマネジメントは、ニ一ズ情報、サービス情報および処遇情報をリアルタイムに把握・評価し、関係者間の調整をとりながら、常に必要な対応をとっていく反復プロセスということができる。
ケアマネジメントの各プロセスごとの情報活動の重要性を考えると、実は、ケアマネジメントの本質は情報活動であることがわかる、具体的には在宅サービスの提供にかかわる各機関・団体が、利用者、サービスおよび処遇に関する情報を共有化し、ケアマネジャーを中心としてそれらを適切に管理することがケアマネジメントなのである。したがって、サービス提供のシステム化を円滑に進めるためには、ケアマネジメントの流れを確立することが求められ、その基盤として、利用者、サービスおよび処遇に関する情報のシステム化が必要なのである。逆にいえば、情報システム化することによってケアマネジメントが円滑に行われ、その結果として、サービス提供のシステム化が図られるといえる。
それでは、ケアマネジメントにおいて情報活動を展開するためのシステム化を行おうとした場合に、どのような情報環境が求められるのであろうか。このことを考えるために、まず、従来の在宅ケアにおける情報環境についての問題点を列挙しておきたい。従来の情報環境での問題点としては、

@関係者が離れた場所にいる場合の情報共有化が難しい

A関係者間で使用される書面や様式が不統一で、情報共有が困難である

B状況が変化した場合の情報の変更がしにくく、かつ、不正確なものになりやすい

C必要に応じて情報を加工し活用することが難しく、情報の転記などに多大な労力がかかり、誤りも発生しやすい

D蓄積される情報量が増えるにつれ、必要な情報を迅速に探し出すことが困難になる

などがあげられよう。したがって、システム化するためには、これらの問題点を克服する視点を備えた情報環境としなければならない。具体的には、

@ 使用する書面や様式を統一化する
A 関係者間でのネットワークが可能なシステムとする
B 情報のメンテナンス、検索、加工が容易なシステムとする
C 情報が発生した場面での業務処理と一体化されたメンデナンス構造とす

などである。と同時に、
@ 必要な関係者の間で情報共有・伝達が迅速かつ的確に行えるようにする
A 膨大かつ定性的な情報の管理を簡便に行えるシステムとする
B プライバシーの保護やセキュリティが確保されるようにする
C 必要な情報を個別化し、個々のケースに具体的に適用できる的確な情報
を提供する
にも配慮したシステムてなければならない。

また、その結果、以下のような効果が発揮されると考えられる。
@ 関係者の間での情報伝達の円滑化
A 多様な情報の蓄積・管理、迅速な検索などの効率的な利用
B 適切なアクセス管理による個人情報の保護
C 関係者間でのリアルタイムの情報共有
D 評価・分析活動のレベルアップ
E わかりやすい情報の提示
F 定型業務の処理の自動化

岡本民夫ら編著:福祉情報化入門(有斐閣)pp261より抜粋しました

ケアマネジメント支援のための在宅ケア情報システムネットワーク