春国岱と自然学習林には、ミズナラやダケカンバ、ハンノキなどからなる落葉広葉樹の森があります。春には太陽が地上によくさしこむのでフクジュソウやスミレのなかまなど、さまざまな種類の草花が観察できます。
落葉広葉樹の森には、シジュウカラ、ハシブトガラ、ヒガラ、アカゲラ、オオアカゲラなどの小鳥類が一年中くらしています。夏にはアオジ、コムクドリなどの夏鳥、冬にはシメ、ヒヨドリなどの冬鳥が観察できます。
森の中では、エゾシカが通って草がたおされた獣道や角を木にこすりつけて角とぎをした痕もみつかります。毎年春に角が落ちるので、運がよければ角を拾うこともできるでしょう。
春国岱の南側には、針葉樹の森が広がっています。アカエゾマツとトドマツ、2種類の針葉樹で構成される森は、地上があつい苔でおおわれたみごとな原生林があります。
針葉樹の森では、意外な動物にひょっこりでくわすことがあります。5~6月ごろには、森で生まれたキツネの子が遊歩道でひなたぼっこをしていることもあります。
森の中には、日本でもっとも大きなキツツキであるクマゲラがすんでいます。自然観察路のまわりにある枯れ木にクマゲラがアリを食べるために木をけずりとったあとが残っていることもあります。
春国岱の海側の第一砂丘には、さまざまな草花が咲く草原が続きます。花の見頃は6~8月。ピンク色のエゾフウロやカワラナデシコ、白いノコギリソウ、紫のヒオウギアヤメなど、入れ替わり立ち代り次々と咲いてゆき、美しい原生花園をつくります。
数ある花の中で女王と呼ぶにふさわしい花といえば、やはりハマナスではないでしょうか。春国岱にはなんと長さ3キロメートルにわたってハマナスの咲く砂丘が続いています。7月、砂丘はバラの芳しい香りに包まれ、濃いピンク色をした大輪の花が咲き乱れます(近年エゾシカによる食害で花が少ない年もあります)。
キツネやカラスなど天敵の多い小鳥たちにとって、とげのあるハマナスが作る群落は、要塞のような場所です。春国岱ではルビー色ののどが鮮やかなノゴマをはじめノビタキ、シマセンニュウ、コヨシキリなど多くの小鳥たちが、ハマナス群落を格好の繁殖場所として利用しています。砂丘の斜面にはキツネの巣穴もあります。
春国岱は細長い3列の砂丘が平行に並んだ島で、砂丘と砂丘の間に湿原があります。春国岱の湿原では、毎年数ペアのタンチョウ(国の特別天然記念物)が繁殖しています。7月には湿原でエサをとるタンチョウ親子の姿が観察できることもあります。
7月は、春国岱が一年で最もはなやぐ季節です。湿原では、コケモモ、イソツツジなどの花やワタスゲの白い穂が風にゆれます。ノハナショウブというアヤメのなかまが見られるのもこのころです。
春国岱には、春国岱川という川のような入り江があります。川は湖とつながり、湖は海とつながっています。ですから、潮が引くときは上流から下流へ、潮が満ちるときは下流から上流へと水が流れる不思議な川になっています。湿原内の小さな沼や細い水路はアオサギたちの格好の餌場となっています。
川や湖沼には、春と秋の渡りの時期にオオハクチョウの群れがやってきます。冬の間は水面がぜんぶ凍ってしまうため、水中のえさがとれるもっと南の方へ渡っていきます。11月のピーク時には5千羽ものハクチョウたちでにぎわいます。また、ハクチョウだけでなくカモのなかまもたくさん集まってきます。
春国岱の前浜には、干潮時に広大な砂質の干潟が現れます。そこでは、春~夏にかけてアサリやホッキなどの貝漁が行われます。
潮のひいた干潟には、春と秋の2回、渡りの途中にたちよるシギやチドリのなかまたちが集まり、渡りのエネルギーを補給していきます。春国岱では、20種類、数千羽のシギチドリ類が羽を休めます。
渡りの時期には、珍しい渡り鳥も姿をみせます。ホウロクシギは、はるかオーストラリアから渡ってきます。このほか、国内では数が少ないミヤコドリも、毎年春に姿を見せてくれます。
春国岱には、塩湿地というちょっと変わった環境があります。塩湿地は潮が満ちると水没してしまう場所に見られます。塩水につかるわけですが、そんな過酷な環境にもシバナやウミミドリなど塩気につよい植物が成育しています。
塩湿地にも、干潟と同じようにキアシシギやキョウジョシギ、ダイゼンなどのシギやチドリのなかまたちが餌を食べに集まってきます。
塩湿地には、シバナのほかにもエゾハコベ、ウラギクなど数種類の植物が成育しています。中でも有名なのはアッケシソウという植物で、秋に真っ赤に色づき、形がサンゴににていることから、サンゴソウという別名があります。国内での自生地はたいへん少なく、とても貴重な植物といえます。