各都道府県介護保険担当課(室)長殿

        厚生省老人保健福祉局介護保険制度施行準備室長
 介護保険の施行準備については、日頃より、多大のご苦労をいただいていることに対しまして、心より感謝申し上げます。さて、最近、介護保険をめぐり、高額保険料の肩代わり、2,OOO億円の基金の創設、介護保険先送り等のさまざまな新聞報道がされております。施行違備を進める中で、こうした報道が繰り返されることに対して、関係者から心配し多くのお問い合わせをいただいておりますので、取り急ぎ、現在の状況を、お伝えします。こうした状況について、都道府県幹部にもお伝えいただくともに、FAX等により、遠やかに、管下の市町村、首長、助役、担当職員をはじめとする関係者に周知していただき、施行準備の着実な推進に支障を来たすことのないよう、特段の配慮をお願い申し上げます。

1「高額保険料の肩代わり」について(5月20日朝日新聞、5月21日日経新聞の報道について)
@ 5月21日の記者会見における宮下厚生大臣の発言の要旨
 「保険料の高いところを国が支援するということは、現実の施設・在宅サービスの格差を是認し、助長することにつながり、考え方として適当ではないと思う。今のところ、そのようなことを検討しているという事実もないし、そのようなことにはならないと思う。」
A国会における答弁の基本スタンス
 「保険料が著しく高くなる市町村について配慮すべき旨の市町村からの強い婁望があることは承知しており、このため、市町村の責に帰さない理白により、高保険料となる地域に対しては、これまでも調整交付金による調整を行なうことを含め種々検討しているところ。いずれにしても、6月中を目途に各市町村のサービス必要量の見込み等を踏まえた給付費の推計等が都道府県を通じて、国に提出されることとなっているが、それを見て対応を検討することとしている。従って、一部の新聞報道にあるような、保険料の高いところに一律支援するようなことについて、具体的な検討を行なっている段階にはない。」

2 2000億円の基金の創設について(5月24日各紙の報道について)
○ 新聞記者に対する宮下厚生大臣の説明
 「財政安定化基金のことを念頭に話をしたもの」
 「既に制度上ある基金の話をしたものであり、特に新しいことを言ったわけではない」

3介護保険先送りについて(5月27日各紙(夕刊)の報道について)
@ 5月27日午前の野中官房長官の記者会見
 記者の質問;介護保険に関して、自由党の小沢党首が記者会見で「市町村は反対している、そういうものを無理矢理やるのか。全面的に見直すべきだ。」という発言をして、来年4月からの実施を見直すべきだという考えを示したが、現段階で政府として、介護保険を来年4月に向けて見直すことも検討の余地があるのか」
官房長官;介護保険の準備段階である現在において、全国の市町村の中に準備が比較的順調に進んでいる所とそうでない所のばらつきがあることは事実である、ただ、全ての市町村が反対しているということはない、10月の判定の準備をしたり、4月に発足できるような準備段階を迎えている市町村も多数ある、また、判定等の業務を広域的に進めたいと、県を含めて努力している市町村もある。こういう市町村の進み具合と、現実に準備が遅れている市町村の準備状況をどのようにこれから4月の実施時期に向けて調整をしていくかということは、非常に政府としても今悩んでいることである、一方、保険料等の格差についても、国会等を通じても、与野党通じて意見のあるところで、そういう点で、政府部内においても、また、与党始め、関係の野党を含めた議論をおうかがいしていかなければならない、いずれにしても、国会の進み具合等を見極めながら、この問題は、与野間の含めて、政府とも一体となって協議をしていかなくてはならない問題である。
A 5月27日午後の野中官房長官の記者会見
 記者の質問;介護保険について、午前中に、今後、政府及び与野党を含めて協議していきたいと言われたが、4月の実施時期について動かす考えがあるのか、それとも、実施時期は動かさずに実施に向けて様々な工夫をこらしていく考えなのか。
官房長官;夕刊各紙の報道を見て残念に思う、少なくとも、来年4月から介護保険を行うということは既に決定をしていることであり、厚生省を中心に、政府も、地方公共団体も準備を行なっていることは午前中も申し上げた、比較的順調に準備をやっておられるところと、残念ながら、準備が十分でないところが見受けられるのも現実である、保険料について、施設介護の厚いところには大変高い保険料になるような傾向がある。また、家族介護が非常に問題になる状況もある、そのような反省点をある程度整理をする必要があるし、それは与党は勿論のこと、野党の意見もうかがいながらやらなければならないと申し上げた、それが、見送りと報道され、介護保険のために一生懸命勤しんでくれている政府関係者は勿論のこと、特に、困難な問題に熱心に取り組んでいる市町村関係の皆さんには大変ご迷惑をかけることになったのではないか。皆さんにも是非言葉のありようから、報道のありようをお考えをいただきたい。

4広域化に対する助成について
(5月25日読売新聞(夕刊)、5月26日日経新聞の報道について)
@ 国会における答弁の基本的スタンス
 「介護保険財政を含めた広域化については、市町村間の保険料の格差が解消され、安定的な保険財政運営が可能となる等、望ましいものと認識している。厚生省としても、保険者たる市町村が保険財政まで含めた広域化を進めることについて、積極的に支援していきたい。」
A 国会における答弁の要旨(平成11年5月26目衆議院行政改革特別委員会)
 「広域化には2つの側面がある、今年10月から認定が始まるが、その認定について広域で対応する。これは多くの市町村で実施されるものと認識している。この事務体制に対する補助は、今でも行っているところ、保険者としての広域化については、保険料と給付水準とがあまり乖離することは望ましくなく、広域化によってそれらがある程度調整できればと思っている、広域化に対する助成とは、今でも行っている事務体制等に対する助成という意味での助成策ということ。」


5準備の整っていない自治体は介護保険の実施先送り
(5月27日各紙(夕刊)、5月28日各紙の報道について)
@ 5月28日の記者会見における宮下厚生大臣の発言の趣旨
 「介護保険制度は法律に墓づいて一斉にスタートするのが当然である、問題がこれだけ色々と報道されるようになるということは、市町村に実施が迫ってきており、自分たちの問題だという意講が非常に大きくなってきて、真剣な問題が提起されているという背景があるのだと思う。国としては、良く実態を把遷しながら、12年4月からの円滑な施行に向けていろいろと検討すべきことがあればしていくことが必要だと思う。」
※ 実施時期について各自治体間で差を設ける(部分的実施とする)ことの問題点
・ 現行の措置制度と介護保険制度下の利用契約とが混在することとなるため、被保険者の間に利用者負担等の不公平が生じる。
・ 第2号被保険者の保険料は、国民健康保険等の医療保険加入者から全国一律に徴収されるため、介護保険が実施されていない地域に居住している場合においても徴収されることとなり、理解が得られない。といった問題があり、部分的実施という考え方は取り得ない。
6保険料の減免について(1月28日、3月22日赤旗新聞の報道について)
@ 国会における質問及び答弁(平成11年1月27日衆議院予算委員会)
 委員;国保法の77条では、地方税法717条、水利地益税の減免という項目がありまして、そして国保税の場合もこれに含まれている。そこでは「天災その他特別の事情がある場合」云々といって、「貧困に因り生活のため公私の扶助を受ける者」等も含まれています。そして、皆さん、これは介護保険法でも市町村の裁量によって条例をつくることが可能になっていますから、国保の場合、市町村が条例によってどのような減免条例をつくるかということについて厚生省は準則を示されていて、そこでも基本的には今までと同様の規定になっています。この点はこの後もそのようにされるべきと思いますが、いかがでしょうか。
宮下厚生大臣;基本的にはその方向だと思っています。
※前記答弁の趣旨
 大臣は、国保の保険料については、市町村は減免に関する条例を制定することが可能であり、当該条例については厚生省から準則が示されているが、介護保険においても同様と考えてよいか、という委員からの質問に対し、「基本的にはその方向で考えている。」という趣旨の答弁を行ったもの。

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