爆音と共に崩れ去るドア。
瓦礫の中からしずしずと入場…いやがしょがしょと乱入してきたのはDr.ライオット謹製の冷蔵庫くんDG!
 プレゼント用にと付けられたおリボンはそのままに、うねうねと伸びる触手、ごたごたとついた粒子砲にバルカン。
 そして、その上に舞い降りる人影一つ!

「なお、新婦の付き添いとして……ル」
 
 言いかけたフロゥリアのマイクを冷蔵庫くんの触手で奪うと、その人影は冷蔵庫くんの上で高らかに名乗りをあげる。

「ふっふっふっふっふ…怪盗二億五千三百六十七万三千二百八十九面相参上!」

 タキシードに黒ハット。白手袋に仮面に黒マント。
何処からどう見ても古い探偵小説に登場する謎の怪人。
ちょっぴり背が低いのと、胸が無いのとヘアバンドからアンテナが伸びてるのはご愛嬌。

「…そんなに変装できるんですか?」
「うっさいわね!他に良い名前思いつかなかったのよ!」
 
 エラそうに冷蔵庫くんの頭の上に仁王立ち。

「…あの、どちら様でしょう…?」
「えーっと怪盗二億五千三百七十三万二千二百六十七面相よ!」
「…さっきと違うだろうがさっきと………」
「えっ!?…………………うるさい!誰にも間違いはあんのよ!」
 
 マイク握ったままビシィっとポーズを決めて、雄也を指差す。

「とにかくっ!さぁ!花嫁を取り返したくば、かかってきなさい!」
「おやおや…これは手荒ですね。ルリアさん」(にこにこ)
「だ、誰の事よ!あたしは怪盗二億…長いから以下略!」
「誰でも良いですよ、怪盗さん。双葉さんさえ無事ならね」(にこにこ)
 
 相変わらずの笑みが怖いぞ霜月…



 ポツリとフロゥリア。
「中と外から冷蔵庫を破壊する…二人のはじめての共同作業ですか…」
「…まさか中に双葉さんが?」
「ええ。」
「…何故判るんです?」
「中から双葉の電波がしますから…」
「あの…もしかして……偽者騒ぎも知ってました?」
「ええ。」

 おずおずと聞く菊一文字に、フロゥリアはきっぱりはっきりこれ以上無いほどきっちりと頷いた。

「だったらなんで止めないんですかっ!!」
「私は双葉から、本日この場の司会と段取りをするように承っております。
披露宴と限定して頼まれてはおりませんが?」
「全く………もう段取りが無茶苦茶じゃないですか……」
「いえ、予定通りですけど?」
「聞いてませんよそんなの!!」
「打ち合わせ、なさらなかったのは?」
「…あぁぁぁぁぁ…………」

 頭抱える菊一文字。突然がくんと動かなくなる。
ぶしゅ〜〜………
 関節の継ぎ目から蒸気を噴出。

「あ、熱暴走してしまったようですね」
 
 とりあえずやかんを乗っけてお茶を沸かす。
ついでにお茶請けにとウエディングケーキを切り分けて配る。

「もう、ケーキ入刀は必要無さそうですから…」

「冷蔵庫が服。中は裸ですか……冷凍に丁度よいですね」
「………って、死人を出す気ですかフロゥリアさん?!普通冷凍庫の中に人が入ったら死にますよ?」
 ケーキを食べつつぽつりと言ったフロゥリアの言葉に風水は慌てる。

 「大丈夫です。その前に新郎が何とかするでしょう。
如何ですか?ケーキ……」

 淡々とケーキをみんなに勧めてまわる。

「…あ、シクロフォート様。頬にクリームが…」
「あ、いや、こういうシチュエーションは苦手でっていうか僕がラヴるってのはどうよ(汗)」


一方その頃。

「はい、でました。ラウンジ名物、動く家電シリーーーーズ」
 
 レフティは虚ろに呟くと遠い目でその光景を眺めていた。

「走馬灯のように、ラウンジでの思い出が脳裏を過ったよ。
ああ、冷蔵庫には2回もお花畑を見せてもらったよなあ…。洗濯機で漂白されたりね」
「愉快な走馬灯ですね。っていうか、どうします?」

 さりげなくレジスはデッキを立ち上げると戦闘向きのBGMなんか検索したりしちゃったり。

「どうするもこうするも、俺はもうミサイルくらうの遠慮。
遠くから声援を送らせてもらうよ。花嫁救出は新郎の仕事でしょうが」
「じゃあ、こっちから観戦ですね。あ、チーフはこないでくださいよ。
チーフ、ぜったい流れ弾なんかにあたって死ぬようになってるんですから」
 
 こっそりカウンター奥に設置されてるDJブースにレジスは引っ込むと、アップテンポな曲をチョイス。ついでにスポットライトとミラーボールも起動。

「おい、まて! それ決定事項か!」
「閑話休題♪ さあ、新郎くんの活躍に期待! どうなるかな♪」
「…閑話って…」



「ちっ!」
 
 三上の右腕が膨れ上がり異形と化す。
フェンリルは左手で銃を抜いた。

「流石にそれは洒落にならねーだろうが……」
「うっさいわねっ!人の恋路を邪魔する奴はただじゃすまないわよ!」

 お前だお前…と言うツッコミは無視し、リモコンで冷蔵庫くんのビームバルカンを乱射する。

「あぁぁぁっ!!」
「うぇーん、こわいよいちろーおにーちゃんっ!」
「あぁぁ、危ないからしがみ付かないでよ静ちゃん」

 優雅に懐から手鏡を出し、反射するフロゥリア。

「ぐはっ!」

 跳ね返った流れビームがレフティを直撃したらしいが気にしない気にしない。

「あらゆる光線は鏡ではねかえせる法則です。これも世界の定説ですから」

…何処の定説だ。

「危ないですねぇルリアさん。
危険ですから他の所へ行きませんか?
双葉さんの着換えもしなくてはなりませんから」

 いつもの仮面のような微笑のまま、霜月は空間を歪める。
ぎぃん!とその力がなにかに阻害される。

「ふっ…甘いわね。こんな事もあろうかと!」

 ルリア…もとい怪盗中略面相がばさりと取り出すパラボラアンテナのついた銃?

「空間固定装置!うちのジジイにすればこんなのちょろいものよ♪」
「…おやおや…これはこまりましたね」
「ほらほら!これでもくらいなさいっ!」

 粒子砲を霜月に向かって乱射。
何とかぎりぎりでそれをかわす。

「絶体絶命……ですか」

 それでもやや引きつってはいるが、その笑みは消えなかった。

「さぁ、どうするの?」

 触手のように伸びる太いコードでその辺をなぎ倒しつつ、冷蔵庫くんは霜月に迫る。
 そこへ飛びこんできたふんわりとした小さなかげ!?


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