上の右側が胎蔵マンダラ、左が金剛界マンダラといいます。この二つのマンダラは両部のマンダラともいわれます。胎蔵マンダラは真言宗の教えの基礎となる<大日経>の教えを絵にしたもの、金剛界マンダラは同じく<金剛頂経>にもとづくものです。真言宗の修行は両部の大経といわれるこのお経の教えを、マンダラに基づいて実践することです。
胎蔵マンダラは 、中心に八葉の蓮華が描かれ、そこには中央の大日如来と四方に四仏四菩薩が座っています。この蓮華は私たちの心を表わしています。私たちの心には本来このような尊い仏がいます。この仏の世界を無限に広げて行くとき、<大日経>の世界が私たちのものになります。
それを、<大日経>では、菩提心<私たちの悟りの心>により、大悲<生きとし生けるものへの共感>にもとづき、方便<生きとし生けるものに利益をもたらす実践>の完成によって、描かれたマンダラを実践することをおしえています。
金剛界マンダラでは、仏さまの悟りと救いの働きを、月輪<がちりん>の中に座す多くの仏さまで描いております。この月輪こそ、私たちの本来の心である菩提心<悟りの心>なのです。この自分の中にあるこの悟りの心を開発し、究極的な境涯である大日如来になりきる修行を<金剛頂経>では教えています。
<大日経>と<金剛頂経>のふたつのお経にもとづき、私たちのうちにある菩提心に気づき、その菩提心を生きとし生けるものとの共感の中で具現することが、真言密教の基本となる教えです。<広沢隆之著/大日経と金剛頂経より抜粋>