サラ金業界第一位 武富士のえげつない償却済債権の取立に関して損害賠償請求訴訟 提起



サラ金業界第一位 武富士の償却済債権回収額?

 武富士の1999年3月期の決算は、次のようになっている。()内前年比増減率であるが、いずれも「増」である。

貸 付 残 高1,341,264,000,000円(全部無担保)
(12・8%)
口  座  数2,661,876 (5・6%)
一口座当たり残高503,000円(6・9%)
営 業 収 益337,001,000,000円
(内訳)
営業貸付金利息326,299,000,000円
償却債権回収額8,741,000,000円




■ A子(昭和23年2月13日)は、昭和54年か、55年月ころ、武富士釧路支店から、夫に『内緒』で、金を借りた。最初は、10万円位だったが、10万円位ずつ増額となり、最終的な借入れ額は、50万円になった。A子が、支払いをしなくなったのは、昭和59年ころのことである。武富士からときどき督促の電話があったが、返済できないと話したら、それほどの厳しく督促されることもなく、そのままになっていた。その後、A子は、夫と離婚し娘一人と暮らしていた。

■ A子は、平成10年7月末ころ、武富士から書類を受け取った。
 書類の日付は、平成10年7月24日で、差出人は武富士本社管理室で、書類の表題は和解勧告書となっていた。

前略 本債権は、再三に渡る請求にも拘わらず未だに解決に至らない為、当社より最大限の譲歩を行い和解を勧告致します。

 特別条件
 平成一〇年七月三〇日までに、
  
残元金  486,654円
一括支払いで契約終了。

 尚、上記期限までに御入金、御連絡なき場合は、無効となります。
 この当社として最大限の譲歩案にさえご入金、ご連絡さえ頂けない場合は契約約定通り、利息・損害金2,385,155円を付加した全額請求をさせて頂きます。また、不本意ながら東京簡易裁判所へ提訴させて頂く場合がありますので、是非この機会にご解決されるようお願い致します。

■ A子は、この書面を受け取った後、この書類に書いてある金486,654円を支払えば、238万円以上という利息・損害金を免除してくれると考え、懸命に金策して平成10年8月28日、武富士に、金486,654円を銀行送金して支払った。

■ ところで、A子は、平成11年5月10日、武富士本社管理室から、又書類を受け取った。 表題は「債権移管の御通知」、契約支店は「釧路支店」、残元金は「486,654円で、利息・損害金は「2,245、260円」で、合計「2,731,914円」と書類の最初に書いてあった。

 貴方様の上記、金銭消費貸借契約による債権については、未だに返済の履行がありません。そこでこの度、当本社管理室は契約支店より貴方様の債権の移管を受けました。このまま返済を滞らせますと多大な負担を招くことになりますので、当管理室といたしましては、早期解決を図るべく今一度、貴方様のご意向確認の期日を設けました。
つきましては、平成11年5月17日迄に必ずご連絡を頂きますよう催告致します。尚、上記期間までに何らのご連絡がない場合は、不本意ながら合意管轄裁判所である東京簡易裁判所へ提訴を行うこともあります。

 A子は、この書類がくる前にも、同じような書類を受け取ったが、去年支払っているので、何かの間違いだと思って、すでに支払済であると書き、証拠として、武富士からきた和解勧告書と、武富士へ送金した銀行送金の書類のコピーを同封して送り、もう、終わっていると思っていたので、この書類をみて非常に驚いた。

■ A子は、平成11年5月12日午後5時30分ころ、武富士の担当者からの電話を受けた。  担当者は、A子に「すぐ支払えば、60万円で終わりにしてあげる」との話をしたため、A子は、「もう、終わったんじゃないですか?」と聞いた。
 武富士は「日にちが過ぎているから、無効だ」と言った。
 驚いたA子は、「お金もないし、どうしたらよいかわからないので、明日迄考えさせてほしい」と話した。
 武富士は「枠があるから、枠を分けてあげて、明日中に、60万円を払えば、終わりにしてあげるが、払わなければ、こっちでも手続をする」等と話した。

■ A子は、平成11年5月13日昼ころ、担当者にどうしても、60万円を準備できない旨電話した。
A子は、再三、平成10年8月28日に和解勧告書に記載されていた金員を支払ったので、債務はないのではないかと言ったが、担当者は、「期限を過ぎていたので無効であり、さらに、270万円以上の債務がある。しかし、5月13日中に支払えば、60万円に減額する」と話した。
 A子が、一週間時間をほしいと頼んだところ、担当者は「一週間あとになると、支払い金額が80万5000円になる」と話した。

■ A子は、平成11年5月20日、武富士本社管理室から、返済計画案を受け取った。
 返済計画案には、次のように書いてあった。

残元金  金486,654円
元利合計 金2,736,293円

お支払い方法  平成11年5月28日迄にご入金の場合
 ・一括返済  63万円 これで契約終了です。
 ・分割返済  分割総額 金138万円とし、頭金30万円、3万円を36回払いとする。

 上記お支払い方法の・か・を、上記期日迄にご入金いただけない場合は、この条件は、全て無効となりますのでご注意下さい。

■ 武富士は、平成11年5月下旬、A子に、「ご連絡」という書類を郵送してきた。
 この書類には、

平成11年5月24日現在
残 元 金486,654円
遅延損害金2,252,073円(一日 487円)
合   計2,738,727円

このままの状態ですと、一日経過するごとに利息が加算され続けます。至急ご連絡下さいますようお願いいたします。

 と書いてあった。

■ 由利弁護士は、このA子から相談を受けて、武富士のあまりのあくどさにびっくりした。そして、由利弁護士は、A子の事件に関して、武富士を相手に損害賠償請求訴訟を提起するとともに、貸金業協会に苦情の申立てをした。




武富士のA子への取立の問題点

  1. 武富士のA子に対する債務は、昭和59年6月当時、既に存在しない。
     それは、武富士は、昭和54年、日歩20銭(年利73%)、昭和55年当時、日歩15銭(年利54・75%)、昭和56年当時、日歩13銭(年利47・45%)で、金を貸していた。
     A子が武富士から借りて、約定の利息を支払っていた明細に基づいて、利息制限法1条1項に基づく元本充当計算を行った場合には、昭和58年9月当時、既に、過払いとなっていたと考えられる。

  2. A子が、武富士に最後に支払ったのは、武富士の主張では、昭和59年6月28日である。A子が、武富士から和解勧告書を受け取った平成一〇年七月は、その日から丸10年以上経過している。つまり、商事消滅時効の丸5年が経過している。

  3. A子は、平成10年7月末ころ、武富士から「残元金」を支払えば、その他の債務は免除する旨の和解の申出を受けて、その全額を支払ったが、武富士は支払った日時が武富士が呈示の日よりも遅かったとして、さらに、遅延損害金を含めて二七〇万円以上を支払うようA子に請求した。
     武富士がA子に出した書面の日付は、「7月24日」である。平成10年7月24日は、金曜日である。普通郵便は、日曜日は配達しない。さらに、A子は、当時、転居したばかりで、郵便が届くのが遅かった。少なくとも、原告が、A子に出した書類は、七月末か、八月初めころに、A子のところに配達された。即ち、A子が、武富士からの和解の申出書を受け取ったのは、武富士が主張する期限ぎりぎりか、期限を過ぎていた。
     A子のような女性が、五〇万円近い金額を準備するには、相当の日時が必要なことは容易にわかることである。
     武富士は通常なら、到底できないような条件を呈示し、それを受け取った者が、必死になって被告呈示の金額を支払った後、「期限を過ぎていた」との理由で、さらに、高額の支払いをさせようとしたものであること明らかである。
     しかも、被告呈示の条件に従わない場合には、東京簡易裁判所に訴訟を提起すると脅し、訴訟手続等のことを知らないA子をおそれさせ、理由のない金員を支払わせようとしたものであるといえる。
     武富士担当者は、A子に対し、「裁判所から書類が行く」「口頭弁論が開かれる」などと言ったが、現在に至るも、裁判所からA子宛には、なんの書類もきていない。

  4. 武富士は、貸金業者として、顧客から金員の支払いを受けた場合には、その取引の明細を示す領収書(受取書)を渡さねばならないが、A子に対して、金486,654円の領収書を交付していない。
     しかも、武富士がA子に郵送した「和解勧告書」「債権移管の御通知」に記載されている金額を検討すると、その内容は、きわめてでたらめである。

    残元金利息・損害金合計
    和解勧告書486,654円2,385,155円2,871,809円
    債権移管の御通知486,654円2,245,260円2,731,914円

    ・和解勧告書と債権移管の御通知に記載されている金額の差額は、金一三九,八九五円だ。この間に、A子は、武富士に金486,654円を支払っている。勿論、平成10年7月から、平成11年5月迄の間の利息・遅延損害金が増加することとなるが、残元金486,654円に対する遅延損害金は、年率36%で計算しても年間金175,195円であり、半年では、金87,598円だ。

    武富士は、A子が支払った金486,654円をどのように処理したのであろうか。

    武富士は、A子が無知であることを熟知して、本来なんら支払い義務がない金員を支払わせようとしたことは明らかである。

■以上のような事実関係を前提として、A子は、武富士に対して、次のような損害賠償等請求訴訟を提起した。

  1. 既に過払いとなっていることが明らかな債権について、金員を支払わせたということを理由に、支払った金486,654円の返還を求める。

  2. 武富士は、A子に対して、既に過払いとなっていることが確実な債権を支払うよう請求したことから、A子は、著しい精神的苦痛を受けた。  武富士の理不尽な行為によりA子が受けた精神的苦痛として金200万円を請求する。

  3. 武富士は、A子に対して、現在においても、昭和59年2月14日付金銭消費貸借契約に基づく次の債権を有している旨主張し督促を継続している。

    平成11年5月24日現在の債権
    残 元 金486,654円
    遅延損害金2,252,073円(一日 487円)
    合   計2,738,727円

     A子は、武富士に対してこれらの債務を負担していないということの確認を求める。ちなみに、武富士が残元金と称する金486,654円に対する年36%の割合による遅延損害金は、

    486,654円×0.36%÷365 = 480円

    となり、金487円とはならない。武富士は、いかなる根拠で、前記1日487円を請求するのかも明らかにするべきである。

  4. 弁護士費用として、金20万円を支払え。




■平成10年8月、A子は、武富士に対しこのような請求を求める訴訟を提起した。

■A子と同じような督促を受けて支払わなくてもよい支払をさせられたB子も、同様の訴訟を提起した。

■A子、B子と同じような時効債権に基づき、貸金業協会に定める取立規制に違反するような督促をされた同種事例についても、近日中に訴訟を提起する予定である。