「武富士の闇を暴く」
訴訟弁護団長の判決に関する意見表明
武富士が、「武富士の闇を暴く」という本の出版者と執筆者3名に対して5,500万円の損害賠償訴訟を提起したが、訴えられた出版社・弁護士らの弁護団長である東京の澤藤統一郎弁護士が、判決について、次のような意見を表明された。
2005年03月30日(水)
冒頭、弁護団を代表して報告いたします。 本日午前11時50分、東京地方裁判所709号法廷で、「武富士の闇を暴く」 訴訟について民事第34部の判決言い渡しがあり、我々消費者弁護士側が勝訴し ました。完全勝訴と言ってもよい。画期的な判決と考えます。 この事件は、武富士が3人の消費者弁護士と同時代社という出版社を被告としておこした5500万円の損害賠償請求訴訟です。武富士対策弁護団に結集した弁護士が執筆・編集した「武富士の闇を暴く」という書物の出版が、武富士の名誉・信用を毀損するものというのが請求の根拠となっています。 本日の判決は、この武富士の請求を棄却しました。武富士が名誉毀損と指摘しているこの書籍の31か所の記載は、ほとんどが真実であり、残る少数個所も真実の証明があったとまでは言えずとも、武富士の名誉を傷つけるものではなく、著者が真実と信ずるについて相当な事情があったといえる、との認定です。ここまでは、当然のこと。取り立てて、記者会見をするほどのこともない。 判決は、さらに武富士の本件提訴自体を違法な行為として、被告とされた4人に対する不法行為責任を認めました。勝訴の見込みないことは容易に分かったはず、敢えて提訴に至ったのは、「批判的言論を抑圧する目的を持って」したものと推認するのが相当、と認めました。 それだけでなく、武富士のオーナーである武井保雄氏の個人責任も明確に認めました。この点が画期的という所以です。 本件は、ダーティーな業務を行う大企業が、自社に批判的な言論を封殺する目的をもってした提訴です。金に飽かせての提訴が目論んだものは、消費者事件に携わる弁護士の業務を妨害すること、批判の内容をもつ出版を妨害すること、そのことを通じての批判活動の萎縮効果です。 考えてもみてください。5500万円もの支払いを請求されれば、小出版社やジャーナリスト・弁護士がどんな気持ちになるか。少なからずびびりますよ。仮に、勝訴できたとしても、被告としての応訴活動の負担はたいへんなものです。面倒なことには巻き込まれたくないという心理が働く。それが武富士の狙いです。金に飽かして提訴できる大企業と、資金力や時間的余裕に欠ける小出版社・ジャーナリスト・弁護士たちとの力量格差を十分にご認識いただきたい。 本日の判決は、私たちの言い分に真摯に耳を傾けた優れた判決だと思います。高額請求提訴の濫発という形での出版への妨害、弁護士業務への妨害のパターン蔓延に一定の歯止めを掛けるものとなりました。その点において、本日の判決の意義は高いものと評価します。 もっとも、武富士の違法提訴による損害賠償の認容金額が、反訴原告一人あたり120万円で合計480万円というのは低額に過ぎるとは思います。が、その高額化は今後の課題。現時点の水準では、すばらしい判決であることをご報告いたします。
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