武富士に反省なし!
名古屋の夜空に響く“未達会議”の罵声!
「いくらだ!いくだと言っているんだ!」甲高い男のだめ声が、夕飯時の住宅街に響く。
6月16日午後6時すぎ、名古屋市。
「武富士名古屋研修センター」と表示された鉄筋コンクリート2階建てから怒号はした。中には20人前後の社員がいる様子だ。
「激しい物音に驚いた近所の子供が悲鳴を上げた。犬が遠吠えをする。
業界bPを誇ってきた武富士。その業績の裏には、創業以来続く、アメとムチのシステムがあった。
アメは「高収入」、ムチの部分を象徴するのが「未達対策会議」である。
盗聴事件前の「会議」について、経験者は話す。
「営業(貸付)や管理(回収)で未達(ノルマ未達成)した支店長や担当者が集められて、つるし上げにされる。灰皿が飛んだり、机をひっくり返したり、柔道の技を掛けられた社員もいます」
当然、近所迷惑をはなはだしい。研修センター近くの住民は証言する。
「物音と怒鳴り声で眠れない。まるで暴力団。警察を呼ぼうとしたこともあったけど、夫が『怖いからやめろ』と……」
昔よりマシになった?
盗聴事件を機にマスコミから批判を浴びて以降、こうした会議はいったんは姿を消した。だが、それもつかの間。再び復活したという。
「罵声は相変わらず。でも昔に比べたらマシですよ」
新生「未達対策会議」について社員はさらりと言う。
その改善されたという会議から聞こえるのが、冒頭の罵声だった。
会議が始まって2時間。とうに日は暮れている。がらがら声の絶叫が続く。激しく詰め寄っている様子だ。「帰れ!お前!帰れ!やらねえのかお前は!」
やがて、一段と大きな声で渾身の絶叫が夜空に響いた。「あんごうか!お前は!あんごうか!(岡山地方の方言で「阿呆」の意」犬がまた吠える。
会議の最後は、体育会ばりの唱和だった。
「ありがとうございました!」
大声がとどろき、3時間にわたる罵声会議が終わった。
午後9時。
スーツ姿の社員数十人が外に出てきた。
女性もいる。
彼らは枯れた声で話をかわした後重い足どりで姿を消した。
「サービス残業は相変わらずだし、厳しいノルマは今もある。武富士は何も反省していませんよ」現役社員の一人はこぼす。
社員によると、ノルマの厳しさゆえに今も規則違反が頻発。その一例は「ヤミ集金」だという。
集金はトラブルが多いため、武富士の社内規則では、上司の決裁を得てから社用車で行くことになっていく。しかし、それだけでは到底ノルマに達せず、社員も支店長も聞く違反を承知の上で自家用車で決裁のない集金=ヤミ集金=をしているという。
「遠方まで集金に行って、ガソリン代も自腹。発覚すれば処分される。回収できなければツメられる。いったいどうしろというのか」
厳しいノルマと激しい罵声で社員を追い詰めるシステムは今も変わっていないようだ。
社長でも外せない「肖像写真」
先日、筆者の元へ写真が届いた。
武富士の支店で最近撮影されたものだという。写真も見て驚いた。支店の壁には額に入った武富士保雄被告の肖像写真。盗聴の罪で刑事公判中の武井前会長の写真が、紫色の座布団が付いた額受けに鎮座している。
罪を侵して会社を辞めた人物を、武富士は今でもあがめている。その実態を知ってほしいと、社員が”決死の覚悟”で撮影した。
「昔は朝な夕なに写真に向かって挨拶をしていました。盗聴事件後は『挨拶は、してもしなくてもいい』と変わった。でも写真を外すという話はありません」
かねてから武富士の社員は、武井氏の写真を大事に扱うよう教育されてきたという。
「額受けに座布団を付け忘れただけで上司にどなられたものです」と女性支店長は振り返る。その「偉大なる創業者」が盗聴事件を犯して会長を退いた。武井氏はもはや、株主である以外、会社とは関係ないはずだ。
普通なら直ちに撤去するべき代物だが、武富士の場合、なぜか社長自ら写真撤去については歯切れが悪い。昨年12月8日の武井会長辞任会見清川昭社長は記者からの質問にこう答えている。
清川 検討させていただきます。………
盗聴という罪を犯して会社に損害を与え、経営から身を引いた人物の写真を今も職場に飾る武富士。
その常識は、どこかずれている。
「過去を反省して学ばなければならない」(『日本金融新聞』インタビュー)と語る新社長・元久存氏(29日就任予定)の言葉が空々しい。
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