武富士の交渉経過「義務なし承知のオンパレード!」
「二人分振り分けてください?」



 武富士は、支払い義務のない第三者である母親に、息子の借金を支払わせたとする事件について、「息子の取引履歴」と「交渉履歴明細」を証拠として提出してきた。

 交渉履歴明細の中で、母親が支払った日には、すべて、「義務なし承知」と記載されている。

 母親は、息子に頼まれて、自らも武富士を含めて4社から金を借りていた。母親は知らなかったが、息子は、当時、多額の借金のため支払い不能に近い状態であった。しかし、息子は、母親に金を借りてほしいと頼んだとき、「自分で間違いなく支 払う」と言った。

 母親は、息子が支払うと思っていたが、結局、息子は支払ってくれなかったため、自分の収入で支払っていた。母親名義の支払いだけで、母親の収入はなくなるほどであり、息子の名前の借金まで支払う余裕はなかった。母親は、息子から「武富士から金を借りてほしい」と頼まれたときは、息子も武富士から借金をしているということは知らなかったのだ。

 どのような督促の末、母親が、武富士の言い分なら、「義務なし承知」で息子の借金を支払ったというのだろうか。

電話による連絡ハガキ支払った日時支払った金額
平成11年
9/27 9/28 9/30 9/28 9/30 10/5 10/5 12,000円
平成12年
6/1 6/16 6/19 6/20 5/27 5/30 6/6 6/8 6/13 6/20 10,000円
(銀行送金)
8/17 8/18 8/19 8/23 8/24 8/25 8/3 8/8 8/10 8/15 8/17 8/22 8/24
8/25 10,000円
(銀行送金)
9/27 9/29 9/30 10/2 10/3 9/28 9/30 10/3 6,000円
(銀行送金)
10/26 10/30 10/28 10/30 10/30 9,000円
(銀行送金)
平成13年
1/25 1/26 1/30 2/1 2/2 1/17 1/27 1/30 2/1 2/2 13,000円
(集金)
2/23 3/2 3/7 2/17 3/1 3/3 3/7 9,000円
銀行送金
3/30 3/31 4/9 4/11 4/19 4/21 4/24 4/25 3/16 3/29 3/31 4/3 4/5 4/10 4/12 4/17 4/19 4/24 4/25 4/26 19,00円
(集金)
9/26 9/27 9/29 10/12 9/15 9/28 10/2 10/4 10/10 10/12 10/16 10/18 10/23 10/25 10/17 10,500円
(書き留め)
10/25 10/26 10/23 10/25 10/26 6,000円
(ATM)
二人分振り
分けて下さい
平成14年
1/4 1/7 1/8 1/10 11/29 12/1 12/4 12/6 12/12 12/13 12/17 12/20 12/26 12/28 1/5 1/8 1/10 1/10 13,000円
1/15 1/28 2/13 2/27 3/7 1/16 1/18 1/22 1/24 1/29 1/31 2/5 2/7 2/13 2/15 2/19 2/21 2/26 2/28 3/5 3/7 3,000円
(集金)
5/20 3/28 4/6 4/9 4/11 4/23 5/10 5/14 5/16 5/20 3,000円


「二人分振り分けして下さい?」

 平成13年10月17日に10,500円を支払った経過は、次のとおりだという。

 母親が、自分の支払いとして10月17日に、21,000円を支払った。

 すると、10月26日になって、武富士の主張では、10月17日に支払った21,000円を息子の分と振り分けてくれとの申し入れがあったので、一旦、支払った入金を取消して、息子の分に10,500円と、母親の分に10,500円を入金したというのだ。

 母親は、一旦支払ったものを、取り戻して息子の分に入金してくれなどと言った覚えはないと言っている。

 武富士の主張は、「平成13年10月17日、母親から母親の支払いとして2万1000円の入金があっだかその後、原告からその半分を息子の支払いに充てて欲しいとの依頼があったことから、10月26日、息子の支払い分1万500円として充当処理した」という。

 常識的に考えても、自分から、一旦支払ったものを取り戻して、母親の分と、息子の分に振り分けてほしいなどと、考えることもないと思うのは、私だけだろうか。


「相談 来て欲しい(支払い相談)義務なし承知?」

 武富士の交渉履歴明細によるお、平成14年3月7日午前9時49分、自宅に電話をしたところ、母親が電話に出て、息子の支払いのことで相談したいので来てほしい、と言ったという記載となっている。

 母親は、そのようなことを頼んだことはないと言っている。

 この日、武富士では、母親と相談して、その後の支払いを毎月3,000円でいいとする「特処理」という手続をとっている。

 息子の債務残高は、総額で401,000円であった。

 特処理の結果、債務総額を440,000円とし、毎月3,000円を支払うという約束になっている。

 44万円を3,000円ずつ支払うということは、支払い回数147回と2000円、年数にして12年と4ヶ月という約束である。

 仮に、息子の分を支払うという約束をしたいと母親が真実考えたとしても、40万円以上の債務について、毎月3,000円で、12年以上にわたって支払うというお願いをするなどということを思いつくものだろうか。

 因みに、3月7日というのは、決算期である。

 支払い義務がない実兄に対して、「2000円でも3000円でもいいので、お願いします。年に一度だけ、こういうことができるのです」と懇請したのも、平成14年3月7日、3月8日であった。

 武富士は、この事件について、次のように述べている。

 母親と息子とは本件借入れ当時同居しており、本件借入れは、家族間のやりくりとして行われた可能性が高い。従って、武富士は、息子に対する支払い催告を母に対し行ったことはないが、仮に、百歩譲って、そのような事実が認められるとしても、それは、貸金業規制法にいう第三者請求に該当するということはできないのである。