関東財務局に対する「武富士」行政処分の申立て

 武富士に対しては関東財務局に対する行政処分の申立てと、全国貸金業協会連合会に対する苦情の申立てを行った。

申立人には全国の弁護士約100名になってもらった。


申告の趣旨

 武富士には、貸金業規制等に関する法律第二一条一項に違反する行為があるので、同法三六条一項に基づきその業務の停止を求める。


申告の事実

 武富士は、会社の方針として、後述するような内容の貸金業規制法第21条1項に違反する貸金業務を行なっているので、同法36条1項に基づきその業務の停止を命じられたい。


貸金業規制法第21条1項に違反する貸金業務にかかる取立て違反の事実

1、支払義務のない母親に対して支払請求し支払いをさせた事例

 債務者S君(昭和52年3月2日生)は、函館で稼働していた平成7年(満18歳)の6月、武富士函館支店から金10万円を借りた。S君は、武富士から金員を借りる際、未成年であったが、母親には『内緒』ということで借入をした。S君は、年収を尋ねられて200万円から250万円と答えたいう記憶である。

 S君氏の実母であるK子は、17年前(S君が幼児のころ)離婚し、子供を育ててきた。

 S君氏は、その後、武富士函館支店から、増額すると言われて増額し、平成13年10月当時、残元金537,567円を借りていた。

 平成13年秋、武富士函館支店の担当者は、パートで働いているS君の実母に対して、息子さんの借金を支払ってほしい旨の電話をした。K子は、パートで働いており、支払えないと話したが、「払ってもらわないと困る」旨言われて、毎月1万円を数回に渡って支払った。

 この支払請求は、武富士函館支店が行なっていたものである。

 S君は、平成13年12月末、債務整理を弁護士今瞭美に受任し、その旨武富士に通知したことから、その後は、母親に対して支払請求をしなくなった。 尚、S君代理人弁護士今瞭美は、武富士に対して、なぜ、支払義務ない第三者に支払請求をしたのか回答を求めたが、なんらの回答がなかった。 平成13年12月27日当時のS君氏の債務は、次のようになっている。

・オリエント   1,432,200円 ・日専連中標津 69,510円
・日本信販     194,872円 ・車税     87,100円
・国保       135,300円 ・府民税    73,300円
・武富士      537,567円 ・ディックF  500,000円
・アイク      358,566円 ・クレディア  289,900円
・プロミス     44,985円 ・アイフル   26,835円
・マルフク     51,110円 ・ビアイジ   164,040円
・三和ファイナンス 30,790円 ・エーユー   34,663円
・ジェイフォン   80,661円  合  計  4,111,399円



2、支払義務のない実兄に対して支払請求をして支払わせた事例

 債務者 S・Y氏( 平成13年7月6日から所在不明)

武富士は、平成13年12月10日ころ、S・Y氏の両親や実兄に電話をして支払うように要請した。S・Y氏が所在不明となった後、多数のサラ金会社や個人から、S・Y氏に金を貸したなどの連絡があり、親族は非常に困惑していた。

 そうした際、武富士は、今回限りであるので、なんとか支払ってくれというように話したことから、実兄は、平成13年12月10日、武富士担当者から指示された金21,000円を、武富士の指示した口座に振り込んで送金した。

ところが、平成14年3月7日、8日と、S・Y氏の実兄宅にしつこく電話をしてきた。その内容は、別紙のようなものである。

 武富士管理担当者は、S・Y氏の実兄が、平成13年12月に21,000円を支払っていること、それが、利息の支払に充当されていることを熟知しながら、あえて、決算期であり、年に一回のチャンスであるなどと言って執拗に支払わせようとしている。

 この電話の内容から次のことが明らかである。


3、生活保護を受けている母親に支払わせた事例

 武富士は、平成8年1月、病弱なため自分で働いて得た収入の不足分を生活保護を受けて生活していた女性に対して、娘に貸した金50万円の支払をするよう執拗に迫り数回にわたって支払わせたという事例が発生した。(同封釧路地方裁判所平成8年(ワ)第103号損害賠償等請求事件 原告S・O、被告武富士)

 同事例の経緯は、S・Oの陳述書のとおりであるが、この事件の経過の中で明らかとなったのは、次のようなことである。

 武富士が作成している「管理カード」には、「支払義務なき承知・協力の申出」なる横判が、毎頁に押捺されていた。即ち、これは、「支払義務がないことは承知しているが、支払について協力したいとの申出が第三者からなされた」という意味だという。

 少なくとも、S・O氏は、「母親だから支払義務がある旨言われて、自分にできるだけでよければ協力するが、自分の働きは、月8万円〜9万円で、不足分は生活保護を受けているので、毎月支払うとしても、月3000円から5000円程度である旨」武富士の集金担当者に話したが、武富士の集金担当者は、「15,000円を支払ってもらわなければならない」と主張して、15,000円を支払わせたというものであった。

 この事件においては、武富士は、「お母さんには、支払義務がないことを説明した上で、お母さんが自主的に支払った」旨強弁した。

 判決では、母親が支払義務があると誤解した旨認定し、母親が支払った分のみの返還を認めた(判決参照)。


4、武富士が、支払義務のない第三者に支払請求をして、支払をさせていることにより得ている利益

 武富士がこのような違法な取立てにより、どのように違法な利益を得ているか。

 武富士の口座数は、250万件を超えている。

 不良債権率が、2〜3%であるとすれば、約5万件から7万5千件が不良債権であり、貸金業者の不良債権は、銀行等と比較して非常に少ないと言われている。

 仮に、1万件について、支払義務のない第三者に金1000円を支払わせたとすれば、次のようになる。

10,000件×1,000円=10,000,000円

 仮に、1万件につき、本件のように2万1000円を支払わせたとすれば、次のようになる。

10,000件×21,000円=210,000,000円


5、武富士に関する平成8年のS・O氏の事例から判断しても、「支払義務なき承知・協力の申出」なる横判を作って、管理カードに押捺し、支払義務のない第三者に対して会社ぐるみで支払請求をしていることが明らかである。

 今回、明らかになった武富士函館支店のパートで収入を得ている母親に対する請求は、営業店における延滞債権としても、支払義務のない第三者に支払請求をすることが行なわれていることを示している。

 さらに、武富士の管理担当者による「一年に一回しかない決算期、一年に一回のチャンス」を理由とする支払義務のない第三者に対する支払請求は、正に、管理債権について、会社として、支払義務のない第三者に支払請求をすることを業務としていることを示している。

 貸金業界最大手である武富士が、公然と、貸金業規制法21条に定める取立て規制に違反する業務を公然と行なっていることは、ゆゆしき事態である。 よって、武富士のこのような会社ぐるみの異常な貸金業規制法規制法違反の事実については、厳正なる調査の上、業務停止・登録取消等、厳しい処分が必要である。


添付書類

一、録音反訳書・録音テープ各1通
二、北見しんきんキャッシュサービスご利用明細(写)1通
三、陳述書(S・O)1通
四、ご通知(S君関係)1通
五、判決(S・O)1通