サラ金会社の社員が取立てにきて怒鳴られ、母親が自殺した!
私は、東京の八王子から転居し、親戚の家に身を寄せているという40代後半の女性から相談を受けた。叔母さんと、その夫が同席していた。
暗い表情だった。
「どうして、サラ金からお金を借りたの?」
「長男が、喘息で、何回も入院したのです。入院する度に、費用がかかり、ちょっと借りたのが最初です」
この女性が、最初にお金を借りたのは、平成5年ころからだという。
夫婦で働き、懸命に支払ってきた。
夫は、東北地方で働いているという。夫は、サラ金1社から250万円を借りているという。
「どうして、もっと早く相談しなかったの?東京にも相談するところがあるでしょう?」
「払えると思っていたのです。母親も年金をもらっており、助けてくれていました」
「母親が、うつ病になり、私が働けなくなり、支払が遅れたのです。そしたら、私が家を留守にしている時に、サラ金の男性の社員が二人きて、母親に、どうしても10万円を支払わなければ裁判にする,というようなことを大きな声で言ったというのです。それで、母親はその翌日、自殺しました」
「サラ金の社員の人がきて、ひどいことを言ったということが、お母さんが自殺した原因なの?」
「そうだと思います。母親はうつ病で、とても落ち込んでいました」
「お母さんは、借金していないんでしょう?」
「はい」
「遺書があったの?」
「ありません。」
「じゃあ、サラ金の社員の人がきてひどいことを言ったというのは、どうして知っているの?」
「私が帰ったとき、母親が、そのように言っていました」
母親が自殺したことと、サラ金の社員が取立てにきたことが、関係があるのかどうか、母親が遺書もなく自殺しているのでわからない。
「それで、どうして相談にきたの?」
「叔母さんに話したら、先生のところで相談するように言われたのです」
これほどにサラ金の問題が公になっても、それでも、自殺するまで家庭を破壊されている人が、まだまだいるということに衝撃を受けた。
まだ、子どもは中学生のようだ。
私は、最後に、次のような話しをした。
「あなたは、どんな家庭に育った子どもが、一番不幸せだと思う?」
彼女は、暫く考えていた。
「私のように借金を抱えて、毎日怯えて暮らしているような家庭ですか?」
「いいえ。違うと思うよ」
「貧乏な家庭?」
「私はね、お父さんお母さんが仲よくて、なんの心配もない家庭に育った子どもだと思うよ!」
「えっ。そんな家庭に育った子どもさんは、幸せなんじゃないですか?」
「そうかな、私は違うと思う。なぜなのか、少し、考えてくれる」
このような会話をして、この女性は帰って言った。
帰るときには、少し元気になっていた。
この女性は、母親が自殺した原因と思っているサラ金には、私のところに相談にくる前に、叔母さんにお金を借りて10万円支払ったという。
このサラ金の場合、利息制限法で計算すると過払いだと思われる。
この過払い金を返してもらって、他の返済に宛てるように話したらよろこんでいた。
2005年12月9日