ある老人の死



 一人暮しの老人が年末二十八日に亡くなりました。

 九州の片田舎、熊本県人吉市の市営住宅に、生活保護を受けながら人工透析を週に三回受けている老人でした。

 本人は借金などなかったのですが、昭和時代に亡くなった身内(会社経営・夫)の借金返済の催促が十年以上たってから来たわけです。

 財産放棄の手続きなど知るわけもありません。生活保護の七割以上をサラ金に支払っていました。サラ金業者は、ぎりぎりの生活を知っていながら請求をしていたわけです。武富士などは夜九時以降も支払いに来させていました。

 昨年、相談を受けた時「葬式用の貯金も使い果たしました。一人娘に迷惑をかけるのが一番苦しい。借金を精算してから死にたい」と言われていました。自己破産費用の二万円弱も準備出来なかった様です。

 今日、亡くなった事を聞いて不覚ながら涙が止まりませんでした。

 たぶん亡くなったお母さんは借金請求が自分の娘に来る事を一番心配していたと思います。当然、財産放棄の手続きを親族一同アドバイスしますが人間として素直な弱者を助ける術はないものかと思う一日でした。


 宮崎の方からのメールである。

 人工透析に来ないということで病院の方が訪問して死亡していることが発見されたという。

 穏やかなるべき老後が、こんな状況で終わることに言い知れぬこの国のいびつな社会状況を知る。

 頑張って真面目に人生を歩いてきた人が人間の尊厳をこれほどに傷つけられて老後を送るということがあってはならない。と思うのは、私だけだろうか。