10万円の10%は幾ら?
私は、多重債務相談のときには、利息制限法の説明をすることにしている。
「あなたが借りたところの利息覚えている?」
覚えている人は少ない。契約書を持参した人には、契約書を見せて利息を確認させる。平成12年6月以前の契約書では、39・9%とか、38・5%もあるが、殆どは、29・2%以下である。
「10万円を借りて年29・2%だと、一年で支払う利息は、幾らになる?」
10人の内、3〜4人は、この質問に、すぐには答えられない。
「10万円の10%は幾ら?」
これにもすぐには答えてくれない。10分の1だとか、1割だとか、いろいろとヒントを言って、ようやく、10万円の10%が1万円であることをわかってもらう。
10万円の29・2%が、29,200円であるという答えが出た後、一年で29,200円を支払うということは、一月では幾らになる?と質問する。
この時には、電卓を渡して計算してもらう。
29,200を打ち込んだ後、「÷」のところに指がいくと、ひとまず安心する。その次が大変だ。365とか、30という数字を打ち込む人が相当数いる。「一年は、何ケ月?」などとヒントを出して、ようやく「12」で÷ことに気付いてもらう。
「10万円を銀行に預けたら、利息は幾ら位もらえると思う?」
この答えが正しく出る人は、100人に一人位だろうか。
「一番高い定期でも、0・03%程度だよ。」(0・03%というのは、計算上わかりやすいから言っているが、現実にはそれより低い)
「10万円の0・03%って幾ら?」
電卓を出して、100,000を打ち込んで、×を押し、0・03を打ち込み、=を押すと、3,000円という答えが出てくる。まず、半数の人は、3,000円となんの疑問もなく答える。
そこで、10万円の10%は幾ら? 1万円
10万円の1%は幾ら? 1,000円
10万円の0・1%は幾ら? 100円
10万円の0・01%は幾ら? 10円
10万円の0・03%は幾ら? 50円
「えっ」ということになる。
私は、多重債務者相談の時、こちらから、ずらずらと話をしていた。
あるときから、質問方式に変えた。
質問方式に変えて、もう数年以上になる。
そして、気付いた。
20代、30代前半位の人の場合、10人の内3人位の割合で、このような答えが出てくる。学力低下が巷で議論されている。こんな基本的なことが、高校を卒業しているという人にもわからない人がいる。
40代以上の人は、このような人は、殆どいない。
私が説明する利息制限法の説明は、小学校3年生か、4年生程度で習う算数だ。
掛け算、割り算、足し算、引き算という世界である。
しかし、教える技術が進み、一クラスの人数が少なくなり、先生が生徒をよく把握できるようになっているはずであるのに、こんなに基本的なことが理解されていないのが現実だ。
高校の先生だった人が教え子を連れてきたことがあった。私とその教え子との会話を聞いた先生は、愕然としたという。
私達が、いろいろなことをいうとき、当然、理解してくれていると思い込んで話をすることが多い。しかし、現実には、全くわかっていないということがあることを思い知らされる。
心して対処しなければならないと、いつも思う。