命を粗末にしないで!
私は、4月14日、多重債務者の方で、「死のうと思った」とか、「自殺を図ったが助けられた」とか、「死のうと思って家出した」という3人の人から相談を受けた。
毎年、何人かの「死のうと思った」「自殺を図った」「自殺した」などの相談を受けるが、1日に3人というのは、初めてだ。
1、中年の女性は、知人と共同経営でスナックを経営することになり、その準備資金を借りてほしいと言われて、サラ金から金を借りたところ、経営の実質は、すべて、その知人が行い、共同経営とは名ばかりで、サラ金の支払いも最初はしてくれていたが、経営状態が悪いときはしてくれなくなった。働いても、共同経営ということで、給料も満足にくれなかった。そのため、だんだん借金が増えて「死ぬしかない」と思って自殺を図ったが、発見が早く助かったということだった。精神的に落ち込んでおり、働くことはできない状況にあるため、生活保護を受給している。
2、中年の男性は、中古車販売の自営業をしていたが、思うように実績があがらず、経営が悪化したことから、死んで生命保険金で借金を払うほかないと考えて家出した。その後、死に切れず家に帰り、離婚した。子供二人は妻が引き取って妻の実家に身を寄せているという。借金は非常に堅実なもので、サラ金などは非常に少なく、銀行の借金が突出していた。それでも、銀行の借金も1000万円未満であった。母親が、一緒にきた。
3、もう一人の女性は、15年位前に交際していた男性から、親の病気のためお金がいるからと頼まれてサラ金から金を借りてあげたという。その後、実妹から200万円を借りて支払ったが、全部の借金が返せず、だんだん借金が増えてしまった。その時、実妹から借りた200万円を返して欲しい旨言われたことから、それをクレジット会社から借りて返済した。しかし、到底支払えるような借金ではなく、死んで生命保険で返してもらうほかないと考えた。ところが、姉の様子に不審を感じた実妹が気がつき、死ぬのを辞めたという。
4、4月16日、また、「死のうと思った」という中年の女性と、その娘、実姉がきた。この女性の夫は、10年程前、病気と借金を苦にして自殺したという。その時、この女性は、錯乱状況となったという。そして、月11万円位の遺族年金と、自分のパートの収入で生活していた。一人娘も働いて、月3万円位の食事代を入れていたという。
ところが、ちょっと、気晴らしのつもりで、洋服をクレジットで購入したことがきっかけで、勧められるままに、洋服などを購入し、そのクレジット代金だけで、手数料を含めて、2社で、270万円位になったという。40万円のコートも購入したという。そして、なんとか支払っていたとき、パート先が人員削減をすることとなり、リストラされたと言う。娘も同じ時期仕事を失った。死ぬしかないと思い込んで精神状況がおかしくなったところ、近くにいる実姉が、様子がおかしいと思って問いただし、借金が多額にあることを打ち明けたという。
実姉は、実妹の借金200万円を支払ったが残りはどうにもならないということで来所した。
なぜ、こんなに「死にたい」と思うのだろうか。
その「死にたい」と思う原因が、これらの人は、すべて「借金」である。
もともと、客観的に返済能力の範囲内がどうか、ある程度、わかるはずである。
なぜ、購入者(債務者)の一月の収入を全部支払っても払えないような信用を供与するのだろうか。
「破産すれば借金はなくなる?」という簡単な解決方法がではないかというだろう。
しかし、「破産」は、ある程度の人生を送ってきた人にとって、人生の落伍者の烙印を押すことになる。若い人にはやり直しがある。しかし、もう、やり直しがきかない年令になって、これまで、真面目に生活していた人にとって、やはり、「破産だけはしたくない」という思いは強い。
弁護士に何ができるのだろうか。
なぜ、「死のう」と思う前に、弁護士に相談してくれないのたろうか。