現金自動受払機(ATM)による
取引につき利息制限法による和解成立
京都市に本社のある株式会社ワールドは、現金自動受払機(ATM・オムロン株式会社制作)による取引につき、みなし弁済の主張をし、京都簡易裁判所に訴訟を提起した。( 被告は、浜松在住・代理人は釧路在住)即ち、「現金自動受払機(ATM)は銀行取引その他各種の現金取引において、ひろく一般的なものとして発達し、定着している。今日の現金自動受払機(ATM)のシステム機能を鑑みれば記述のとおり、被告に対して貸付及び入金の際、貸付明細書兼領収書が交付されたのは明白な事実である。」とし、「ATM操作手順」なるものを証拠として提出した。
ATM操作手順の資料は、次のようになっている。
1、受付・申込
1-1 いらっしゃいませ1-2 利用同意事項の承認
1-3 証明書の確認
1-4 キャッシュカード・クレジットカードの確認
1-5 保険証の確認
1-6 申込書の記入確認
1-7 申込書の記入
1-8 申込書をセットして下さい。
1-9 申込書読み込み中
2、身分確認
2-1 免許証をセットして下さい。2-2 免許証読み込み中
2-3 免許証をお取り下さい。
2-4 保険証をセットして下さい。
2-5 保険証読み込み中
2-6 保険証をお取り下さい。
2-7 カードをセットして下さい。
2-8 証明書読み込み中
2-9 カードをお取り下さい。
3、属性情報
3-1 お支払日の確認3-2 収入形態の確認
3-3 月収の確認
3-4 ボーナス月の確認
3-5 家族構成の確認
3-6 お知りになった媒体の確認
3-7 ポケットベルの確認
3-8 携帯電話の確認
3-9 干支の確認
3-10 暗証番号の入力
3-11 入力内容の確認
3-12 審査中
4、契約の説明等
4-1 ご契約の説明-14-2 ご契約の説明-2
4-3 ご契約の説明-3
4-4 お支払方法の確認
4-5 営業時間のご案内
4-6 営業店のご案内
5、審査中
5-1 審査中のご案内5-2 テレビ映像
5-3 お客様の限度額は次のとおりです。
6、契約書締結・カード発行
6-1 契約書を出力します。6-2 契約書の記入
6-3 契約書をセットして下さい。
6-4 契約書読み込み中
6-5 契約書( 控え) を出力します。
6-6 暗証番号の確認
6-7 カードを発行します。
6-8 契約書、カードの確認
6-9 ありがとうございました。
7 、ATM操作手順
融 資↓ | いらっしゃいませ |
↓ | ご用件の水色のキーを一つ押してください (ボタン)取消・ご融資・ご返済・残高紹介 |
↓ | 暗唱番号 |
↓ | 残高のご確認 |
↓ | 金額 |
↓ | 確認 |
↓ | カード・明細票 |
↓ | 紙幣をおとり下さい。 |
返 済
↓ | いらっしゃいませ |
↓ | ご用件の水色のキーを一つ押してください (ボタン)取消・ご融資・ご返済・残高紹介 |
↓ | 暗唱番号 |
↓ | 残高のご確認 |
↓ | 紙幣(紙幣をそろえて紙幣入出口に入れて読取キーをお押しください) |
↓ | 確認 |
↓ | 金額(ご希望の金額を押し最後に円キーをお押し下さい) |
↓ | 返済金額確認 |
↓ | カード・明細票 |
ワールドは、「現金自動受払機による任意弁済を主張し、領収書を交付したと主張した。
被告側の主張は、次のようにした。
本件は、借り主は、母親に頼まれて借入の申込をし、借入申込当日、金二五万円を借りた以外には、一切の借入・返済に関与していなかった。即ち、当初借入後の返済及び途中の増額はすべて、母親に頼まれた実妹が行っていた。そのため、被告(借り主)は、現金自動受払機の操作方法すら知らなかった。
原告は、被告に「カード」を交付し、「カード」は、借り主のみが使用できるものであると主張したが、被告は、借りた現金と「カード」をすべて、母親に渡し、「カード」を使用したことはなかった。又、金員借入の際に、「カード」を他人に貸してはいけないなどの注意も受けていなかった。
そこで、被告は、当初の借入の事実は認めたが、その後の返済及び増額の事実はすべて否認した。特に、融資枠の増額が途中で行われているが、それについては、機械で自動的に増額がされている。
ワールドが提出した領収書の控えは、「ご返済」内容のみが、記載されているが、機械から出される「キャッシングサービス貸付明細書兼領収書」には、「ご利用可能額」の欄があり、その欄の金額が、ある日突然、がばっと増額となる。本件の場合には、二五万円の枠がある日突然一五万円も増えて四〇万円となっている。貸金業者が融資をする際には、慎重な信用調査が必要であり、かつ、貸金業者は、過剰融資をしてはいけないし、借入目的等を慎重に審査して貸付をせねばならないから、全く面談なく、借り主の借入申込もないのに、枠を増やして勧誘することは貸金業規制法上許されない。少なくとも、本件においては、借り主は、増額の事実を全く知らなかった。
これらの事実を指摘し、本件においては、みなし弁済は認められないと主張したところ、裁判官の説得で、すべて利息制限法の上限金利による元本充当計算を行い、最後の支払日迄の残元金を支払うという和解が成立した。
本件は、京都簡易裁判所の事件であったことから、一度も出頭せず、書面のみを提出し、最終的に利息制限法による元本充当計算を行った上で和解した。尚、訴訟提起前に、利息制限法による計算後の金額での和解の提案をしたが、ワールド側がみなし弁済を主張したことから、和解は成立せず、訴訟提起となった。
由利弁護士が受任したサラ金相談の中で、ATMによる任意性の主張を受けた最初の事例であるが、当方の主張どおりの和解となった。