摩訶不思議?いわき信用組合の被害事例

 由利弁護士は、平成11年8月末、福島県いわき市で自営業を営んでいるO氏から、相談を受けた。その内容は、異常なものであった。
 O氏は、平成6年12月15日、いわき信用組合から金1500万円を借りたが、その際、融資の斡旋をしてくれた支店長(C氏)から、謝礼として、毎月18万円を15年間(総額3240万円)を支払えと言われ、これまでに既に、990万円支払っている。C氏への返済のため高利の商工ローンも利用し、極めて困窮した状態にある、というものだ。
 O氏の話では、学校時代の同級生であったC氏から、現在、O氏が自営業を営んでいる店舗から移転し事業の新規展開を図ったらどうかとの勧誘を受けた。そのためには、総額で金3000万円の資金が必要とのことだった。しかし、3000万円の金を準備することは到底できないと断ったところ、C氏は、C氏所有の土地・建物を担保として提供し、C氏が連帯保証人となって、いわき信用組合が融資してやるということだったが、融資するのは、1500万円ということだった。それだけでは、到底、新規展開のための事業資金には足りないので断ったところ、一応、1500万円の融資をした後、支店長権限でさらに、融資してあげると言われたことから、このままでは事業は先細りとなると考えていたO氏は、C氏の勧誘にのり、新規の事業展開を図ることに決意した。

 経過は、次のとおりである。

  1. 平成6年12月15日、いわき信用組合によるO氏への1500万円の融資実行
  2. 平成7年1月9日、C氏所有不動産(土地・建物)に債権額を1500万円、年利6%とする抵当権設定(土地は、235.52平方メートル)
  3. 平成7年2月10日(O氏)、平成7年2月16日(C氏)が署名・押印した覚書作成 同覚書には、「O氏がC氏に対して、平成7年1月から15年間、月18万円にて協力するものとする」と記載されている。
  4. 平成7年2月27日、いわき信用組合によるO氏への500万円の融資実行
  5. O氏は、平成10年2月、いわき信用組合に追加融資の相談をしたが、その際、いわき信用組合の地元の支店の担当者に、C氏に対して毎月18万円の支払をさせられている旨を訴えたが、なんの善処もされなかった。
  6. O氏は、平成11年5月、C氏に対する返済が遅れたところ、店舗にこられて暴力を振るわれ傷害を受けた。このことも、いわき信用組合の担当支店のお得意様担当者に訴えたが、「警察にいえばよかったのに」と言われただけだった。
  7. O氏は、平成11年7月、いわき信用組合本部に、C氏の理不尽な要求により、毎月18万円を支払わされていることを訴えたが、なんの措置もとってくれなかった。
  8. O氏は、C氏に対して、平成7年1月から、平成11年7月迄55回にわたって、総額で990万円を送金した。

 由利弁護士が、相談を受けた後の経過

  1. 1999年9月1日  福島県庁中小企業課信用組合係に「行政処分の申立て」をする。 現在まで、なんらの回答もない。
  2. 1999年9月初、いわき信用組合に対してO氏がC氏に支払った金990万円、C氏の行為によって傷害を受けたことによる損害賠償として500万円、C氏の理不尽な行為による慰謝料として金500万円の請求をする旨の通告書を出す。
  3. 1999年9月14日付で、いわき信用組合の代理人から、調査のため、1ケ月の猶予をいただきたい旨の回答があったが、現在迄なんらの回答がない。
  4. いわき信用組合とC氏との関係について判明したこと。
     いわき信用組合は、平成8年、C氏を懲戒解雇にした。その理由は、「いわき信用組合の内部資料を外部に流した」ということだと報道されている。(財界ふくしま)
  5. C氏所有の土地・建物(O氏への融資のための抵当権が設定されているもの)に、平成11年2月22日、債権額を3000万円とする、根抵当権が設定されている。
     債務者は「有限会社A」であるが、その代表取締役は、C氏だという。

 いわき信用組合融資の問題点

  1. 支店長が、その所有不動産を担保として提供し、連帯保証人となる融資は、ありえないという。(支店長の親族等に対する融資の場合は、慎重な審査の結果認めることもあるというが、全くの他人という場合には、ありえないという)
  2. 1500万円融資後の500万円の融資は、支店長権限で行われることはありえない。
     既に、1500万円の融資がされている以上、その後の追加融資は、支店長権限では行えないのが原則だという。
  3. 支店長が、いわき信用組合の融資に際して、O氏に対するような謝礼の支払を強要するようなことは、あってはならない。優越的地位にあるものの強要であり、このようなことが判明した場合は、当該金融機関は、直ちに、調査をし、再発を防止するような措置をとるべきものである。
  4. 懲戒解雇した人が代表取締役である法人に、3000万円もの債権額の融資をすることは金融業界の常識ではありえない。
  5. C氏所有の土地・建物の価値は、多めに見積もっても、1500万円程度という。
     即ち、O氏に対する融資分の担保価値としては適切だとしても、さらに、3000万円もの融資に対する担保としては極めて不十分と判断される。
     勿論、C氏所有不動産以外の担保があれば、この判断は間違いということになる。
    それらのことは現在調査中である。

 今後の方針

  1. いわき信用組合に対する種々の疑念に関して「財界ふくしま」に数度にわたって報道されているということから、それらの資料を取寄中である。
  2. 調査が完了し次第、いわき信用組合に対して前記損害賠償を求める訴訟を提起する予定である。

 由利弁護士の疑問

  1. バブル崩壊後、金融機関の不正・腐敗について、おびただしい報道があった。そして、かなりの金融機関のトップが、背任等の罪名で逮捕され、起訴され、処罰を受けた。
     いわき信用組合のC氏に対する融資は、どう考えても理解が困難である。
     又、県庁は、信用組合の監督機関として、いわき信用組合の業務について、適切な監督をしているのだろうか。