北洋銀行は連帯保証人が死亡した場合、相続割合に応じた請求をしない?そんなこと許されるの!

2010年11月13日

 「北洋銀行の杜撰な住宅ローンの取扱い」で、突然、相続人として住宅ローンの相続債務を支払うようにと言われた、BさんとCさんについて、なぜ、このような請求をするのか質問をした。
 私は、Aさんが亡くなったということで、初めて、請求を受けたBさん、Cさんの代理人として、北洋銀行に、質問書を出した。
 北洋銀行の回答は、次のようになっている。

1、「当行は、各相続人に相続割合に応じた支払の請求は実施しておりません。」

 銀行などの金融機関は、すべて、名義人が死亡したことがわかると、「預金の払い戻し」ができないようにする。たとえ、「葬式費用として必要だから」と頼んでも、相続人全員の署名と実印による押印、そして、印鑑登録証明書印鑑つけた預金払い戻しの書類を出さなければ、預金の引出しには応じない。
 ところが、債務者や連帯保証人が死亡したときには、「相続割合に応じた支払の請求をしない」ということはどういうことなのだろうか。 預金の解約と、住宅ローン債権の支払についても、相続という点では全く同じだ。 住宅ローンの支払も、金銭債務だから、被相続人の死亡と同時に、分割債務として相続される。相続人は、相続分以上の債務を支払わねばならないことはなく、銀行等の金融機関も、相続分以上の請求をすることはできない。

2、「当行としては、借主・保証人の変更を申し入れており、各相続人に対して住宅ローンの支払の請求はしておりません。」

 相続の場合に、北洋銀行が、「借主・保証人」の変更の申入れをするかどうかは、自由だが、まず、基本的に、相続人に対して、相続分に応じた請求をするほかないことは、法律上明らかだと思う。
 住宅ローンの場合、このような複雑な相続関係が発生するため、団体信用生命保険をかけることにより、主債務者が死亡したときには、生命保険で支払われることとしている場合が多い。
 住宅は、相続人が全員で相続割合に応じて共有することとなる。
 しかし、北洋銀行が、支払について、相続人の相続割合を無視して、相続人に対して全額の請求をすることはできない。
 少なくとも、北洋銀行は、相続人を調べ、相続人に対して、住宅ローン債務がどのようになっているのかを説明しなければならない。
 少なくとも、なんの説明もなく、相続分以上の支払をさせるようなことはあってはならない。


北洋銀行が「借主・保証人」の変更をするよう求め、相続人がそれに応じない場合には、相続割合に応じた支払を各相続人に求めることしかできない

 北洋銀行が、「借主・保証人」の変更をするよう求め、相続人がそれに応じない場合には、相続割合に応じた支払を、各相続人に求めることしかできない。
 勿論、相続人確定し、支払義務があるにもかかわらず、相続割合に応じた支払をしない場合には、約定返済をしないということから、期限の利益を喪失したということになり、その不動産に設定されている抵当権を実行することはできる。
 北洋銀行は、どのような場合にでも、被相続人が死亡したとき、相続人に対して相続割合に応じた請求をしないということは、相続割合以上の支払をさせられている人がいるということになるが、そのようなことは許されないと考える。
銀行のこのような取扱いは、北洋銀行だけの特殊な事例なのだろうか。
法律について疎い相続人は、銀行の言うことは間違いないと考え、銀行に言われるままに支払義務がなくても支払っているのだろうか。 銀行の説明責任はどうなっているのだろうか。

 そこで、相続が、どのようになされるかについて、整理しておく。

  1. 単純相続
     相続の場合、相続をするか否かを相続人が考慮する期間が3ケ月間ある。この間に、何もしなければ「単純に相続」することになる。 この間に、被相続人の財産を処分したりしたら、「単純相続」をしたことにみなされる。
  2. 相続放棄
     この間に、相続放棄をすれば、相続をしないことになる。この場合は、3ケ月以内に、被相続人が死亡した土地の家庭裁判所に、「相続放棄の申述」をすることになる。相続する財産がなく、借金だけしかないというような場合には、相続放棄をすることになる。
     亡くなったことはわかったが、借金があることは、その時点ではわからなかったという場合は、借金があるということがわかったときから、3ケ月以内に、相続放棄の申述をすることができる。 そして、相続人が、次順位の相続人に移る。 従って、第一次の相続人が、相続放棄をした場合には、相続人が変わり、相当長期にわたって相続人が確定しないことがある。
  3. 限定相続
     相続人全員が、相続するかどうか決められない場合は、「限定承認」という方法を選ぶ。被相続人の財産の範囲で、相続するという手続きだ。 これは、被相続人が亡くなったときから、3ケ月以内で、相続人全員で行わねばならない。

 北洋銀行は、相続が開始した場合、きちんと、相続人に対してどのような相続債務の支払義務が生じているのかを説明し、相続人の支払義務の範囲で支払を求めるべきである。
 しかも、北洋銀行は、抵当権が設定されている不動産について、相続登記がなされていないから、相続は確定していないなどという主張もしている。  相続は、原則として、被相続人の死亡と同時に、相続人が相続したこととなり、前記のような相続放棄や限定承認などの手続きがなければ、相続人が相続割合に応じて相続することとなる。
相続登記は、相続の確定とはなんの関係もない。
北洋銀行が、抵当権が設定されている不動産の競売を行おうとすれば、相続人の意思には関係なく、北洋銀行が、代位して相続登記を行い、競売の申立てをすることができる。

北洋銀行の法を無視した業務のやり方は、驚くばかりだ。