横浜弁護士会会長声明
「利息制限法遵守を求める会長声明」
手形・小切手による利息制限法違反の高利取り立てをやめよ!



 平成15年10月9日、横浜弁護士会は次のような会長声明を出した。

1、問題の所在

 利息制限法の制限利率を超過する利息を含んだ債務を強制的に返済させる目的のために手形・小切手を振り出させ、又は、公正証書を作成させることが横行している。このことが、放置されているため、手形不渡りにより多くの中小零細企業が倒産に追い込まれているだけではなく、その経営者や保証人が自殺に追い込まれるという悲惨な結果を招いている。公正証書による場合も同様である。


2、利息制限法の解釈

 利息制限法の利率を超過する利息の契約は無効であり(利息制限法1条1項)、利息制限法超過分の利息は存在しない(最高裁昭和39年11月18日判決・最高裁昭和43年10月29日判決)のであるから、これを強制的に取り立てるのは義務のない行為を強制することになり許されない。


3、貸金業規制法43条と利息制限法との関係

 貸金業規制法43条は、日本弁護士連合会が廃止を求め続けており、当会も廃止に異論はないところ、現行の同条の規定に照らしても、弁済の時点において同条の厳格な任意性等の用件を充たす場合にのみ、本来存在しない無効な利息債務の弁済を例外的に有効とみなすとしていることが明らかである。利息制限法を超過する利息は無効で存在しないという原則は同条によりなんら変更されておらず、従って、契約時に、債権者が制限調査利息を含む債務を強制的に回収する手段を用意することはこの原則を有名無実化するもので到底許されない。


4、最高裁判所判決

 最高裁判所は、本年7月18日に第二小法廷、9月11日に第一小法廷、9月16日に第三小法廷で、高金利貸付を手形・小切手の決済によって返済させる方法を取っている商工ローン業者に対して、上記の原則を含む利息制限法を遵守すべきこと、利息制限法の潜脱を許さないことを、全裁判官が一致して明らかにする判決を下している。


5、横浜弁護士会の提言

(1) 当会は、この最高裁判決の趣旨を実効あらしめるために、制度を悪用し、貸付時に、利息制限法調査利息を含む債務を強制的に取り立てる目的のために手形・小切手を振り出させることを禁止し、その違反行為に対しては刑罰をもって対処することを含む実効性ある立法をされるよう関係各機関に提言する。

(2) 当会は、(1)と同様の違法な目的のために公正証書が作成されることがないように、公証人が、公証人法26条を厳正に遵守すること及び監督官庁等が同条が遵守されるよう厳正に指導監督することを関係各機関に提言する。