国民生活金融公庫、主債務者に対する裁判で時効中断と主張



 国民生活金融公庫は、昭和58年に連帯保証人となり、主債務者会社は、昭和61年に事実上倒産し、その後、全く請求も受けていなかった第三者の連帯保証人Aに対して、平成13年になって訴訟を提起してきた。Aが、既に商事時効の5年を経過していると主張したところ、国民生活金融公庫は、次のように主張してきた。

 平成3年5月に、主債務者会社甲と主債務者会社の代表取締役であり、連帯保証人となっている乙に対して、裁判を提起し、判決を取得している。

 従って、主債務者である甲会社に対する関係で、時効が中断している。判決の時効は、10年であるから、時効は関係がないというのだ。

 国民生活金融公庫の内規では、連帯保証人の関係では、5年の商事時効として運用!

 ところで、国民生活金融公庫は、その内規で、時効期間について次のような定めをおいている。



時効の期間
 裁判上確定(即決和解、仮執行宣言付支払命令、調停、裁判上の和解、判決等)した債権は、10年である。なお、この場合、当該訴訟等の当事者となっていないものについては、もとのままであることに注意する。

 したがって、判決によって確定した債権の時効期間は10年(民法174条の2)であるが、連帯保証人に対する確定判決は、主債務に対する関係では、確定判決後の時効期間についてなんらきの影響を及ばさないとする判例(大判昭10.9.10)があるので、時効期間は、上記判例に基づいて実務上5ねとして取り扱う。



特別口にかかる時効中断措置の省略
 管理事務処理の効率化及び経費の節減を図る観点から、特別口に選別区分した延滞口債権については、支店長の決済を行うことなく時効中断措置をすべて省略する。



 これらの国民生活金融公庫の内規によれば、A氏に対する関係については、商事時効5年として処理され、償却済みとなっているはずである。にもかかわらず、A氏に対して、なぜ、全く余剰のない不動産に対して仮差押えをしてまで、訴訟を提起してきたのだろうか。

 そもそも、平成3年に主債務者の甲会社と、その代表取締役であり連帯保証人である乙に対して訴訟をする時に、なぜ、A氏に対しても訴訟をしなかったのだろうか。
 A氏は、自分の生活をするだけで精一杯で、790万円もの保証債務を支払うような保証能力は全くなかった。

 平成13年においても、A氏は、妻がやっている小さな食堂の売上と、自分が出面取り(日雇い)をして得る収入とで、ようやく住宅ローンを支払っている状況で、残元金だけで約792万円、遅延損害金をいれると、総額で2482万余円もの保証債務を支払う能力など全くない。
 国民生活金融公庫は、政府系金融機関として、全国で同一の規準で、業務を推進しているはずであり、推進しなければならない。
 内規で、連帯保証人に対する関係では、5年で時効とするとの取り扱いを決めながら、丸15年も経過して、突然、訴訟をするなど、許されることではないと思う。

 そもそも、時効は、長く続いた状況を尊重するということで設けられたものである。昭和61年に甲会社が倒産してから、15年間も請求されず、もはや、そのような保証債務を請求されることなどないと思って、住宅金融公庫から金を借りて家を立てたA氏に対して、住宅金融公庫からの借入金よりも多い保証債務を支払えということは、許されないのではなかろうか。