常軌を逸したアイクの不動産担保ローン!

 アイクは、不動産担保ローンを重要な商品として位置づけている。
 アイクの商品構成は、時期によっても異なると思うが、次のようなものがある。

ヤングローン”アドバンテージ”
「年齢20〜29歳・勤務先6ケ月以上勤務していること(主婦の場合夫のサインが無いものは不可)限度額内で反復利用。

アイカード・キャッシング
「年齢20歳〜65歳・勤務先は会社規模、資本金、業種を確認の事(国保、主婦、タクシー運転手は特別規定による)、限度額内で反復利用。

サイド・ローン
「不動産担保ローンを利用中の顧客が小口資金を必要とする時、担保契約書を書き直さずにアイカード・キャッシング契約書を使用して貸し出す。不動産担保ローン決済時にサイド・ローン可能額の決済を同時に得ることをか能楽

不動産担保ローン
「200万〜5,000万、20歳から65歳(顧客本人及び担保提供者が70歳までに完済のこと。抵当順位は本人居住で第一順位であること。
ローンの実行は、申込より10営業日以内に実行を原則とする。融資額1000万円以下の場合は、受理証明により1000万円超の場合は、事後謄本を確認後実行のこと」

 アイクは、いわゆる無担保ローン(前述のアイカード・キャッシングか、ヤングローン)の場合に、必ず、不動産の所有を確認する。それは、本人のみではなく、親・兄弟まで調査する。夫に『内緒』で借りに来た主婦の場合でも、夫所有の不動産の有無を調べ、将来、不動産担保ローンを検討することなどと、初回融資の際に内部書類に記載している。
 そして、不動産所有者が知らない間に、勝手に不動産の鑑定も行なっている場合もある。
 アイクは、無担保利用者の借入状況をきめ細かく把握し、毎月のの支払いが、一定程度以上となると、不動産担保ローンを強引に勧める。夫に『内緒』、親に『内緒』で借りている多重債務者が、夫には言えない、親には言えないなどというと、「こちらで、ご主人を説得してあげる」「親を説得してあげる」と言い、強引に説得に出かける。「このままでは、息子さん夫婦は毎月20万円以上の支払いで行き詰まってしまう、今、不動産担保ローンにすれば、毎月支払いが半分以下になる」などと説得し、すぐに、登記に必要な書類をとるために必要な委任状を取得する。
 不動産所有者は、どういうことに使用するかを理解せずに多数の委任状をとられている。このようにして取得した委任状を利用して、所得証明・住民票・不動産の固定資産課税証明書・納税証明などをアイクの社員が入手する。
 そして、間髪をいれずに、前述のマニュアルのとおり、10日以内に実行してしまう。

 私が訴訟で争った事例を紹介しよう。

主債務者は、息子と息子の嫁(嫁の借入が殆ど。借入の殆どは過払い状態であった。)
担保提供者は、夫の父

不動産
担保ローン 日時       借入額    一月の返済額
第一回   平成5年7月9日  450万円  86,400円
第二回   平成6年7月22日 900万円 180,900円
第三回   平成7年7月4日 1250万円 210,400円

 アイクは、顧客がどのような債務状況にあるかを常時把握するのは、貸主として当然であると主 張する。信用情報を調べて、「また、お宅の息子さん夫婦の借金が増えてますよ。このままで大変ですよ」と多重債務者の同意も得ずに、父親に情報を伝えて、再度の不動産担保ローンの必要性を説得する。
 この事例の場合は、一回目は、父親は、一つの不動産しか担保提供していないと強硬に主張した。権利証がないと根抵当権の設定はできないとしつこく聞いても言い張るため、「ひょっとしたら、本人の同意を得ずに、保証書で登記したのでは」と思いつき、登記の添付書類を調査した。やはり、本人の許可を得ずに保証書で登記されていた。父親は、そのころ、権利証は銀行にあり、渡せるはずもなく、根抵当権を設定していないということだった。2回目には、銀行からの借入残金もアイクの不動産担保ローンに一本化して、今度は、正々堂々とすべての不動産に1番の根抵当権を設定した。
 この事例で、アイクの不動産担保ローンは無効であるとの主張をして争ったが、裁判所は有効である旨の判決をした。

 最近相談にのった事例を紹介する。

 平成2年に弁護士に債務整理の相談をし、平成3年に遺書を残して家出をし、平成4年、家に戻ったA男は、平成2年当時、アイクから金30万円を借りていた。A男の遺書には、「我が人生に悔い有り。生きて親孝行がしたかった。何度も借金をして親に迷惑を掛けた。妻と離婚し、二人の娘と別れた。せめて、娘の花嫁姿が見たかった。生きて親孝行がしたかった」等々がめんめんと書かれていた。平成4年ころから、アイクにも利息制限法による元本充当計算をした残元金を分割で支払い、その支払いは完了したが、平成12年現在も、個人から借りていた債務(勤務先の社長等)が残っており任意整理は完了していない。 A男は、平成11年12月中ころアイクにお金を借りに言ったという。アイクの店頭の担当者は、「今先生にお願いして借金の整理をしながら、また借りに来たの」などと言われたことから、A男は、借りられないと思ったという。さんざん説教された後、100万円を拇印で貸してくれたという。母親は、印鑑を持たせなければお金は借りられないと思って印鑑を預かっていたというが、拇印で簡単に貸すとは思ってもいなかったという。
 A男の毎月のサラ金への返済額が13万円以上となり、約定返済ができなくなったところ、アイクでは、不動産担保ローンなら毎月の返済が6万円前後になると言われたという。そして、母親に話せないというA男に対して、アイクのほうから説明してあげると言い、あらかじめ、母親にはなんの説明もない状況で、突然、アイクの担当者が母親を訪問して、アイクの不動産担保ローンをしなければ息子であるA男は支払えなくなって大変なことになると説明し、不動産担保ローンを勧めた。母親は、驚き、どうしていいかわからない状態にあったところ、A男が、「アイクさんのいうとおりしてもらうしかないから。頼む」などと言ったため、最終的には母親もアイクのいうとおりに必要書類を渡してしまった。
 しかし、なんとしても、納得がいかないため、人権擁護委員会に相談に言ったところ、私の事務所を紹介されたということだった。

アイクのやり方の問題点

 A男は、完全なサラ金ブラックである。(始期の問題はあるが、平成2年に介入通知、平成3年に行方不明になったとして相談打ち切り通知、平成4年に再び戻ってきたとして再介入通知を出している。従って、サラ金ブラックが7年としても、平成11年11月であれば、サラ金ブラックとなっているはずである。しかし、アイクは、サラ金ブラックにも、クレジットブラックにもなっていなかったと主張している。
 A男が再三、多重債務者となり債務整理をしていること、自殺を決意して家出したこと、さらに、アイクにも借金があり、特別処理(利息制限法による計算後の整理)をしていることは、例え、何年たっても、アイクには明々白々であったはずである。このようなA男の借金整理のために、母親の居住用不動産を担保として多額の金員を融資するということは、明らかな過剰融資であり、母親に対する不法行為と言えるのではなかろうか。