呉服の空売りで、オリコの加盟店管理責任を認める判決出る!
オリコに、加盟店による名義借り・空売り防止義務あり!
釧路地方裁判所は、平成11年12月27日、オリエントコーポレーション(以下オリコと略称する)による大型空売り事件に関して判決をした。
(釧路地方裁判所平成7年ワ第194号ないし第250号・第281号立替金請求事件・平成9年ワ第138号事件)
第一、事案の概要
■ 三善屋(呉服・宝石等販売会社)は、昭和61年に火事で店舗が全焼した後は、店売りをやめ訪問販売を主とする経営をしていた。当初、ジャックスと加盟店契約を締結していたが、オリエントの加盟店であったB店と、お互いに加盟店の流用を行っていた。三善屋は、店舗全焼の後、資金繰りに困り、いわゆる「名義借り」契約を行うようになった。平成2年8月3日、B店に対して、オリコは、「5名」の空売り契約があることを指摘し、早急にそれら5名の契約を整理するよう求めるFAXを送った。それら契約は、すべて、三善屋が行ったものであり、名義を貸した人は、三善屋に頼まれたものであることをオリコに話したという三善屋の経理責任者の法廷証言がある。三善屋は、B店に早急にそれら契約を整理するよう言われて、それら5契約の残金をすべて、すぐに支払った。
■ オリコは、平成2年9月、三善屋に加盟店になるよう勧誘したことから、三善屋はオリコの加盟店となった。そのころ、三善屋は、すでに、オリコに対して、24名の名義借り契約をあげていた。三善屋の経理担当者は、法廷で、三善屋の社長(父親)が、オリコに対してオリコ「カード」の約定支払が遅れたことがあったことから、一度、加盟店になりたいと話したが、加盟店にはしてもらえなかったので、オリコの加盟店にはなれないと思っていたところ、オリコから加盟店になってほしいと言われたと証言している。オリコは、三善屋を加盟店にするやジャックスより、破格の条件を呈示した。それは、立替払日を契約日の数日後にすると、加盟店手数料をジャックスより低くするなどであった。ジャックスは、契約があがらなくなったことから、三善屋にその理由を聞いたところ、オリコの条件がジャックスより「良い」ということを聞いて、オリコと同じような条件に変更したという。
尚、三善屋は、オリコの加盟店となった当時、次のような名義借り契約の支払をしていた。
ジャックス 65契約 1,454,300円 オリコ 24契約 479,100円 日本信販 9契約 149,800円 セントラル 1契約 15,800円 ライフ 1契約 15,100円 合計 100契約 2,114,100円つまり、平成2年9月ころ、三善屋は、一ケ月に、空売り契約の関係で、金2,114,100円を支払わなければならない状態にあった。
平成6年10ころ、三善屋は、どうしても、現金で返済する金が都合がつかなかったことから、三善屋振出の小切手をオリコの店頭に持参して支払ったが、何もいわれなかった。
■三善屋による名義借り契約に関する支払の特徴
- 一部の例外(3契約程度)を除いて、すべて、郵便振込となっている。
- 名義借り依頼の方法は、「現実に購入する人がいるが、その人がクレジット契約を締結できないので、名前を貸してほしい」というものである。
- 高齢者が多い
- 殆ど、すべての契約が約定返済日(毎月27日)より遅れて支払われている。
- 顧客は、通常、クレジット会社が交付した振込票を用いて支払う。その場合は、本社の口座に振り込まれることとなる。本社の口座に振り込まれる場合には、地元店に振込があったかどうかの連絡がなされるのが、現実の振込日より遅くなる。特に、郵便による振込の場合には、数日後になるという。
そのため、三善屋は、直接、「オリコ釧路支店」の口座に振り込んで支払っていた。顧客は、通常は、オリコ釧路支店の銀行口座は知らない。 - 三善屋が、複数の顧客の賦払金を直接、オリコ釧路支店の店頭に持参して支払ったことも多数ある。特に、最終段階では、三善屋振出の小切手で支払ったものもある。
- 全く収入がないとか、極めて収入が少ない人に関する複数の契約が途切れることなく、というより、重複してあげられている。
- 契約書には、割賦販売法によって義務つけられている必要的記載事項の記載がないものがすべてである。
- 割賦販売法で義務つけられいてる「クレジット契約に関するご注意」なる書面は、全く、交付されていない。
- 電話確認は、杜撰そのものである。
- 契約書未交付の者も多い。
第二、判決の争点に関する判断の項目
一、本件立替払契約の成否- 三善屋による契約書の偽造
- 名義貸しの空売り契約であることについて
- 必要な手続の不履践について
- 割賦購入あっせん業者が負う個品割賦購入あっせん契約上の付随義務
- 仮に、付随的な義務違反があっても、本体たる契約の解除は認められない。
ただし、併せて職権で過失相殺の可否・程度を検討する。
- 民法418条類推による過失相殺の可否
- 購入者の意思確認義務違反
・一般的な意思確認義務違反
・購入商品に役務提供を含む場合の調査義務違反の特殊性
- 加盟店に対する調査義務違反
- 過剰契約防止義務違反
- 加盟店による約束の拘束性
- 不正契約による受益
- 小活
第三、判決内容
(主要部分についてのみ)(尚、注部分は、私が記載した)一、契約の一部偽造を認めて請求を棄却したもの1件
二、クーリング・オフを認めた契約 1件
三、信義則ないし付随的義務違反による立替払契約の解除の可否
本来、契約は、双方の意思表示が合致すれば成立するのであって、契約書面の作成後に、一方当事者が改めて他方当事者の契約締結意思の有無を確認するさらなる義務があるとはいえないのであるが、割賦購入あっせん業者である信販会社は、前記のような濫用・悪用の危険性を孕む契約類型である個品割賦購入あっせん契約の一当事者としての地位に基づき、信義則上、本件通達(注・通産省産業政策局消費経済課昭和58年3月11日付)の趣旨に則り、名義貸し等の手段を用いた加盟店の不正行為が行われないように、一方で、加盟店契約締結後も、加盟店に対する対する厳格な信用審査及び指導監督を実践する付随的義務を負い、他方で消費者の契約締結意思の確認を厳格に履践する付随的義務を負っているものと解するべきである。
また、原告は、三善屋を履行補助者として、本件各立替払契約締結のための準備的行為をさせていたことが認められ、そうすると右準備的行為をさせるに際し、原告としては、法律上の義務及び契約的関係にあることを伴う信義則上の義務として、本件通達の趣旨に照らし、被告らにおいて契約の仕組みを正確に理解できるように説明を行い、被告らが三善屋からの依頼により自己の名義を貸して虚偽の契約を締結しないように明示的措置を講じるべき説明義務を負っていたものと解するのが相当である。
しかしながら、仮に、原告について、このような付随的な義務があったとしても、その義務への違反をもって直ちに本体たる契約の解除が認められることにはならない。
四、争点4 信義則違反による請求額の減免について
・民法418条類推による過失相殺の可否
被告らは、原告による右付随的義務違反等の事情を捉えて、原告において本件各立替払契約に基づく本訴各請求をすることは、その全部又は一部が信義則に反し許されない旨主張する。そこで、検討するに、信義則とは、ある人が当該具体的事情の下において契約その他一定の関係に立つ相手方から一般的に期待されるところを裏切ることがないように誠意を持って行動すべきであるという原則であるところ、被告らは、原告の信義則違反の根拠として、購入者に対する契約締結意思の確認義務、名義貸し契約を防止するのに足りる説明義務及び加盟店に対する調査義務といった立替払契約の付随的な義務違反に該当する事情を挙げる。しかしながら、被告らの指摘する右信義則違反の事情は、結局のところ、三善屋との間で名義貸し契約としての本件各立替払契約の締結を通謀し、意図した被告らに対し、原告が被告らの意図する名義貸し契約を防止すべき措置をとらなかったというに帰着する。そうすると、被告らの主張は、まさに自己の先行行為と相反するものであり、また、被告らの加盟店による約束の拘束性及び原告の不正契約による受益主張も、後記・及び・で検討するように、自己のとった行動と相容れないものであり、かえって被告らが信義則に違反するものと言わざるを得ないから、右の点をとらえて信義則違反を主張することは許されないというべきである。
民法418条は、債務不履行に関し債権者の過失が加わった場合に、債務者の責任及び損害賠償額を定めるについて債権者の過失を考慮すべきことを定めているが、この趣旨は、債務不履行によって生じた損害を債権者と債務者との間において公平に分担させるところにある。そうだとすれば、債務不履行となった債務自体の発生・成立の過程において、既に、右債務不履行の原因が存在し、その原因の発生・形成に関して債権者の過失がある場合にも債務不履行によって生じた損害に債権者が寄与しているという状況に変りはないから、このような場合にも民法418条を類推適用して、過失相殺をすることができるものと解するのが相当である。
・購入者の意思確認義務違反
・一般的な意思確認義務違反
割賦購入あっせん業者は、消費者の契約締結意思の確認を厳格に実践する義務を負っており、具体的には、購入者自身に対し、購入者自らが当該商品を割賦購入するために契約を締結する意思を真実有しているか否か、つまり、名義貸し又は空売りの契約でないことの確認を尽くすべきものと解するのが相当である。
ところで、原告が被告らに対してとった契約締結意思の確認手続は、人定事項はともかくとして、契約書の記載事項及び契約締結意思の確認については、単に「はい、はい」と答えさえすれば切り抜けられるような形で確認作業を進めたにすぎず、被告らは、前記第三の一認定の各応対をすることで足りた。
原告によってとられた意思確認の手続は形式的で無内容なものであったと言わざるを得ない。
また、本件各契約書には、商品又は役務の特定等の割賦販売法所定の事項について、一般的な商品名しか記載されていないものであるが、仮に、本件各契約書に同法及び同法施行規則の所定事項がきちんと記載されていれば、原告は、意思確認に際し、被告ら自身をして右事項を語らせることで、本件各契約書の内容と口頭の回答内容との齟齬や言い淀みを契機とし、名義貸し及び空売りの契約を補足し得た可能性があった。
(契約書の未交付・立替手数料の不記載等の個別の認定)
右認定事実によると、原告は、被告らに対する意思確認に当たって、被告ら自身をして割賦販売法所定の記載事項を含めた本件各立替払契約書に記載すべき事項及び現実の記載事項を語らせることで、記載内容との齟齬、言い淀み等の事情を捉えて、名義貸し及び空売りの契約である旨の認識が可能であったと言えるところ、原告らは、意思確認の作業の際に、単に、被告らの本人確認をした上で、契約内容及び商品購入意思について、単に「はい、はい」と答えていれば済むような形で、概括的に確認し、被告らが肯定する旨を返事したことをもって満足し、それ以上の確認をすること をせず、それがために、容易に補足することが可能であった名義貸しの空売りという事情を看過し、本件各立替払契約を成立させるに至ったものと言わざるを得ない。即ち、原告は、その経済的効率性の追求の観点から、効果的な名義貸し及び空売りの契約の防止方法をとることを怠ったものと評価することができる。 そして、右の事由は、前述の民法418条の趣旨に照らして、過失相殺を基礎づける事由となり得るものである。
・購入商品に役務提供を含む場合の調査義務違反の特殊性
呉服のように仕立て等の役務の提供が商品引渡しの当然の前提となている物が売買の目的物とされている場合については、原告において、三善屋に契約書に割賦販売法所定の役務についての記載をその有無を含めてきちんとさせた上で、自ら呉服等を購入した被告らに対し、仕立て等の役務の有無や約定の役務の提供が済みまたはその引渡しに関する予定等の確認作業を実施することで、名義貸し及び空売りの契約の防止を図ることがなおさら容易であったというべきであるから、その注意義務違反については、一層その程度が重く、過失相殺に際して大きな斟酌事由とすることができるというべきである。なお、商品が宝石等の高価品である場合については、前記・の一般的義務違反の内容を出るものではないと解する。
・加盟店に対する調査義務違反
割賦購入あっせん業者は、加盟店契約締結後も、本件通達に示された措置を講じて、加盟店に対する厳格な信用調査及び指導監督を尽くすべき信義則上の付随的義務を負っているものというべきであり、ことに加盟店が契約事務を代行している場合には、名義貸し及び空売りの契約の防止に必要な指導・監督の程度は、その危険性に照らして、より高度なものになると解するのが相当である。
・(オリコの担当者が週1・2回くらい訪問して、世間話をする中で、売り上げの状態やスケジュールの状態を尋ねて、経営が順調であるかどうかを察知していたこと、本社で、加盟店別の債権残高、支払の遅滞率、督促発生率、営業規模と売り上げ上昇の均衡等を常時把握し、側面的調査をしていた。)
・(三善屋の取引相手である信販会社は原告だけではないため、監督官庁の行政指導のように直接的かつ強力な対応をすることは困難であり、担当者の担当加盟店の数は130店舗から150店舗であり、原告釧路支店での月間契約取扱も、2000件にも上っていたため、その調査には限界があった。)
・原告と三善屋との加盟店契約締結時には、三善屋が昭和61年に店舗の全焼により損害を受けて資金繰りが悪化し、このころから名義借りによる空売り契約を締結して資金を調達するようになっており、平成2年8月ころには、三善屋が「みゆき」という呉服販売業者の原告とのクレジット契約を使って名義借りによる空売り契約をあげていたことを十分に知りうる状況にあったがその点について十分に調査しなかった。
・原告は、三善屋の営業形態を店舗営業と認識し、店舗販売の加盟店契約しか締結せずにいたが、現実には、店舗と称されていたのは、通常の住宅の一部屋に若干の反物とカタログがあった程度のものであり、三善屋の売上のうち店舗販売の割合は、全体の一割程度にすぎず、主たる営業形態は訪問販売及び展示会における販売であった。
・加盟店に割賦販売法等所定事項を契約書に記載させることは、加盟店が名義貸し及び空売り契約を行うことを困難とし、事後的な検査による発見も容易にするため、名義貸し及び空売りの契約を防止する上で効果的であるところ、原告は三善屋に対し、割賦販売法等の所定事項を個品割賦購入あっせん契約書に記載すべきことを指導徹底することもしなかったし、振込で返済するとされている購入者数人分の立替金を、三善屋がまとめて小切手で窓口に持参してきても、窓口でそのような集金をしな いように注意しただけでその実体につきなんら確かめることをしなかった。
以上の認定事実によれば、原告は、三善屋に対して全く信用調査及び指導監督を行わなかったというわけではないが、信用調査の前提となるべき営業形態の把握すらできていなかった上、その信用調査自体も、加盟店契約締結に当たって、最も重大な事項である過去における空売り契約を行っていた事実について容易に知り得たにもかかわらず、これを把握できていなかったというおざなりなものであった。そして、加盟店契約の解消を恐れるあまり、販売店に対し個品割賦購入あっせん契約書等に割賦販売法等所定事項を記載するように指導することもなく、これらの事情も一因となって、原告において三善屋による名義借りの空売りという事実を漫然と看過し、本件各立替払契約を成立させるに至ったものと言わざるを得ない。そして、右の事由は、前述の民法418条の趣意に照らして、過失相殺を基礎づける事由となり得るものである。
・過剰契約防止義務違反
本件各立替払契約締結当時において、被告らの中に信用情報機関等によっていわゆるクレジットブラックと認定された者がいたなどの事実を認めるに足りる証拠はなく、また、関係各証拠上もいまだ原告において購入者である被告らが経済的に破綻することが明らかなような過剰契約をしたものとも、過剰契約につきその旨を了解し、あくいは、了解していなかったことにつき故意と同視し得べきような重大な過失が会ったものとも認めることができない。
・加盟店による約束の拘束性
三善屋の不法行為に加担した立場にありながら、三善屋との間における被告らには支払義務がない旨の一方的かつ違法な合意をもって、原告がこれに拘束されるべきものと主張することは、原告が主張するとおり、かかる主張をすること自体信義則に違反する理由のないものというべきであって許されない。
・不正契約による受益
割賦購入あっせん業者である原告については、右不正契約の被害者でこそあれ、右不正契約の主体ないし関与者と評価することはとうていできない。
そうすると、本件各立替払契約が不正契約であることを看過した点について、被害者としての原告の落度を過失相殺において斟酌する以上に、本件各立替払契約が詐欺的な不正契約であることから生じる危険を被害者である契約に負わせることはできないといわねばならない。
・原告の過失割合を4割5分とするのが相当である。
五、争点5 商品の引渡未了の抗弁の可否について
購入者が、割賦購入あっせん関係販売業者に対して主張できる事由をもって、当該支払の請求をする割賦購入あっせん業者に対抗できると規定する趣旨は、個品割賦購入あっせん契約を構成する売買契約と立替払契約が法的に別個のものであっても、それらが経済的に関連していることから、契約取引に慣れない一般消費者を保護しようとするものであると解される。そうすると、これによって保護するに値しない購入者の行為による事由は、抗弁事由として主張することはできないものと解するのが相当である。
従って、名義貸与者である被告らが、商品の引渡未了を抗弁として主張することは許されない。
六、争点6 一部弁済による充当関係
原告とすれば、そもそも、過失相殺後の金額についてだけ権利主張をなし得るというべきであるから、前記第三の一に認定したとおり、有効な成立が認められる本件各立替払契約により、被告らが各々負担すべき立替金及び手数料の合計額につき四割五分の過失相殺をした上、相殺後の金額から一部弁済額を控除した残額をもって、立替金及び手数料の合計額についての認容額とするのが相当である。
また、遅延損害金の起算日については、当事者間において、分割返済の期間が設定された趣旨や本件における割賦金の返済が、利息制限法違反の約定利息額に満たない同法所定の制限超過利息額の弁済の場合とその充当関係における性格をことにすること等にかんがみると、右一部弁済額のうち、四割五分相当額については、原告の弁済保持権限がないというべきであるから、右保持権限を欠く部分について弁済期の早く到来する弁済期分の割賦金額から順次充当するのが相当である。
第四、感想
一、本件の概要
1、被告の数 55名 2、事件数 57件 3、契約数 78件 4、訴訟提起全事件の商品代金総額 43,285,800円 5、手数料額の合計 6,657,343円 6、現実の立替払金の合計 39,811,617円 7、訴訟における請求額合計 37,401,508円 8、認容額 16,045,889円(商品代金総額と、現実の立替払金の合計との差額は、契約書上は、手数料がないとされている契約における手数料と、加盟店手数料である。従って、オリコが、現実に、被告らの契約から得ることとなっていた手数料合計は次のようになる。
43,285,800円−39,811,617円= 3,474,183円+ 6,657,343円=10,131,526円)
二、三善屋にみる空売り契約の推移と、これまでのオリコへの支払額の推移
三善屋が記録して残していた空売り契約の支払明細表(昭和63年6月から平成7年2月迄・平成4年分はない)によるオリコへの支払額は、別表「オリエントへの返済額」のとおりである。
即ち、昭和63年6月から平成7年2月迄の合計は、金52,734,981円である。 現実には、昭和 62年から、オリコへの空売り契約が挙げられていたことが判明しているから、現実の返済額は、次のように推計される。
昭和62年と昭和63年1月から5月迄分 500万円以上 平成4年分(平成3年分と平成5年分の中間として) 900万円以上従って、三善屋がオリコに対して空売り契約分として支払った総額は、6600万円以上となること明らかである。
三善屋がオリコへあげた空売り契約の総額は、前記6600万円と、本件訴訟の請求額との合計額であるから、丁度、1億円程度と推測される。
三善屋がオリコにあげた契約に関する手数料額は、およそ25%であると推測されるから、オリコが現実に立替払した金額は、7500万円である。
オリコは、三善屋から、立替払金額7500万円の内、前述のように6600万円以上の返済を受けているから、オリコが現実に被った損失は、1000万円前後である。
三、本件判決の問題点
1、オリコが三善屋を加盟店にした当時、既に、三善屋は、オリコに対して多数の空売り契約をあげており、そのことをオリコが十分に知り得たと認定している。 どちらが「卵」か「鶏」かとの論争になるが、最初から、空売り契約を多数あげて資金繰りをしている販売業者を加盟店にしたオリコの責任は、少なくとも、50%以上ではなかろうか。
本判決は、三善屋が、オリコの履行補助者であることを明確に認めている。
履行補助者の責任は、すべて、履行補助者の使用者が負担すべきは当然である。
2、オリコに重大な過失がある契約であるにもかかわらず、オリコの利益分の請求が無条件で認められるのは、問題があるのではなかろうか。
少なくとも、オリコの現実の立替払金額について、どの程度請求できるかが問題となるべきである。
3、本判決では、A子に関して3契約が訴訟となっている場合、その内の1契約については、既に、55%以上の支払がなされているとして請求棄却としながら、他の2契約については、残存額があるとして55%分の支払を命じている。
少なくとも、判決の考えたでも、A子分については、トータルして過失相殺を論ずるのが普通ではなかろうか。
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差額の合計は、金 409,837円となるが、判決は、A子に対して 593,625円の支払を命じている。
4、判決は、オリコの受益については、不問に付すべきとしているが、現実の名義貸し人の立場からすれば、同じように名義を貸したという者であるにもかかわらず、その時期が、早いか、遅いかで、全くその責任が違うことになる。即ち、早い時期に名義を貸した人は、全く支払義務がなく、終わりのほうに、しかも、一度だけ名前を貸した人は、判決が認めた55%(手数料を含めて)の全額の支払義務があるということになる。これは、あまりにも公平の観点から問題であると考える。
特に、本件の場合、ジャックスが三善屋の不正に気づいて加盟店契約を解除した後、集中的にオリコに対して不正契約を挙げていることから、最後の半年間には異常な契約が挙げられている。
オリコが、不正契約によって利益をあげることを認めることは、法的正義の観点から許されないと考える。
5、今後の方針
本判決が認めたオリコの履行補助者としての三善屋が行った不正契約に基づいて、オリコが利得をするということは許されないと考える。
控訴をし、本判決が認定したオリコの加盟店管理上の過失を前提としたオリコの責任の度合いを争い、少なくとも、オリコの受益を前提として被告らの責任を論ずるべきであると主張する予定である。
本件においては、オリコが、空売り契約をすでに多数行っている三善屋を加盟店としたことによって、被告らが被害を受けたとの観点から、オリコに対して不法行為に基づく損害賠償請求訴訟を提起したいと考えている。