<旧商工ファンド>
公正証書を無断作成 5年で101件(毎日新聞)

 毎日新聞(2004年11月24日付け)は、公正証書問題について、次のような記事を掲載している。

<旧商工ファンド>公正証書を無断作成 5年で101件

 商工ローン最大手「SFCG」(旧商工ファンド、東京都)が、金銭貸借に関する大量の公正証書を契約者の了解をとらずに違法に作成していた疑いの強いことが分かった。カーボン紙を使い、作成の委任状に無断で署名させていたケースも多く、契約者が突然給与などの差し押さえを受ける被害が急増している。日本弁護士連合会の調査でも「署名した認識がない」との回答が100件以上寄せられ、弁護士らは同社の公正証書が年間数万件に達するとみられることから「被害は氷山の一角」と指摘している。

 公正証書は確定判決と同じ効力を持ち、金銭貸借などに関し、本来は債権者と債務者・保証人との合意で作成される。契約書では支払いが滞った場合の給与や預金の差し押さえはできないが、公正証書があれば債権者の都合のいい時期に可能。契約者が差し押さえを解除してもらうため、不利な返済条件を受け入れることも少なくない。

 日弁連消費者問題対策委員会がこのほど会員の弁護士に全国規模で初のアンケートをした結果、最近5年間に公正証書による差し押さえのトラブルの相談を受けたと回答したのは180件に上り、118件がSFCGだった。うち101件が、委任状への署名の認識がなかった。

 関係者によると、SFCGは貸借契約を結ぶ際、公正証書の意味をほとんど説明せずに作成の委任状に印鑑を押させたうえ、手続きに必要な印鑑証明を出させるという。契約書類の下にカーボン紙を敷き、委任状を見せずに作成していたケースも多数発覚。差し押さえは02年以後急増し、債務者側が元本と法定利息を完済した後に差し押さえられる例も多く、日弁連の調査では、これに対抗する訴訟が少なくとも61件起こされている。

 慰謝料を求める訴訟も相当数起こされており、「勝手に公正証書を作られた」と訴えた訴訟で、SFCGが100万円の慰謝料相当額を支払って和解(先月、横浜地裁)するなど、実質的に違法性を認める裁判例も出始めている。

 公証人法は代理人制度を認めており、委任を受けた司法書士らが委任状と印鑑証明を持参すれば、公証人は契約者の了解があるとみなす。日弁連は、本人への確認を義務づけることが必要だとして、近く法務省に法改正を求める方針。

 旧商工ファンドは99年、高金利と強引な取り立てが社会問題化し、大島健伸社長が国会で証人喚問された。


 SFCGの話

 当社では契約時に公正証書についてきちんと説明し、契約者の同意を得ていると考えている。カーボン複写で委任状を作る方法は今年に入ってやめている。


 <公正証書>

 法相が任命する公証人が作成する公文書。土地や建物の売買、金銭貸借などの契約や、遺言作成に使われる。昨年の公正証書約40万件のうち24万件が金銭債務関係。公証人は検察官、裁判官、法務局経験者らが就く。




感想

 印鑑被害の最たるものが公正証書被害だと思う。

 法律家にとって、「公正証書」という言葉は、違和感がなく、どういう効力を持つものか、すぐにわかる。

 しかし、法律家以外の人にとって、「公正証書」という言葉は、全く知らない、あるいは、「言葉だけは知っていても、その意味内容、効力を知らない」ものなのだ。

 しかし、多数の書類の中に、「公正証書作成嘱託委任状」というものがあり、その書類にも署名・押捺されている。商工ファンド(現SFCG)の公正証書作成嘱託委任状の場合、表の書類は、「債務弁済契約証書」となっており、括弧内に、公正証書作成嘱託委任状と記載されている。そして、表の契約証書には、代理人の名前などを書く欄がなく、カーボンの下の委任状には、代理人を書く欄があるという形となっている。

 殆どの人が、契約書に名前を書いたあと、「印鑑を押すところが沢山あるので、こちらで押しますから、印鑑貸してください。」と言われると、印鑑(実印)を渡してしまう。そして、「ポン、ポン、ポン」と沢山の印鑑が押されてしまう。自分で押す場合でも、印鑑を押す度に、その書類を読むという人は殆どない。また、読んでもわからない。

 クレジットの契約書でも、サラ金の契約書でも、公正証書を作成するという条文がある。

 真に、「公正証書の何たるかを知った上で、公正証書が作成される」という制度にする必要がある。