商工ファンドによる給与に対する強制執行に対して
200万円の慰謝料・20万円の弁護士費用を認める判決出る!

 商工ファンドは、契約時に公正証書作成嘱託委任状をとるほかに、多数の貸付が行われた時点で、複数の貸付に関する債務弁済契約書を作成し、同時に公正証書作成嘱託委任状をとる。

 商工ファンドが作成している公正証書については、多数の法律上の問題点がある。

  1. そもそも、原契約が限度額を定めて行われる根保証契約であるため、請求権の一定性がなく、そもそも強制執行認諾文言付きの公正証書は作成できないのではないかとという問題がある。
  2. 商工ファンドの貸付の在り方が、最初に利息等を天引きするというやり方であったため、公正証書に記載する元本が、手取り額を記載せねばならないのに、名目上の貸金額が貸付金額となっている。
  3. 公正証書の記載内容から、利息等が天引きされていることが明らかである。

これらのことを理由として、商工ファンドが作成している公正証書に関して、これまでに数度公正証書国賠事件を提訴し、それぞれ、和解で終了しています。
 今回の事件の内容は、拙著「サラ金トラブル」の第5話に経過を載せています。特に、今回の公正証書は、「白紙委任状」であったことが立証されています。そのため、判決内容は、双方代理も無効であるとしています。

 商工ファンドに対する損害賠償で、「小切手」(一覧払)による給与の差押え・生命保険解約返戻金に対する差押えについては、その違法性認められませんでした。
 公正証書に関するだけは、請求額が全額認められました。

主要の判旨
「本件公正証書の作成嘱託行為は双方代理に当り無効であるところ、被告会社は、貸金業を営む者でありながら、継続的金銭消費貸借契約取引に関し、当事者間でその内容が一義的に確定していない債務について、公正証書作成の必要が生じた時点でその作成嘱託が可能なように原告から「(保証)債務弁済契約公正証書作成嘱託委任状」なる書面を取得し、本件公正証書の作成嘱託行為を行い、無効な本件公正証書を取得してこれに基づき、原告に対して強制執行を申し立て、給与債権の差押命令を得たのであるから、右作成嘱託から強制執行の申し立てに至る被告会社の一連の行為は、原告に対する不法行為を構成し、これにつき被告会社には、少なくとも過失があると認められる。
 そこで、被告会社の右不法行為によって生じた原告の損害について検討するに、原告は、無効な本件公正証書に基づく強制執行により給与債権の差押えを受けたため、平成9年12月12日には右強制執行を免れるため被告会社に対し金311万958円を支払わざるをえなくなり、原告は、右差押えにより被告会社に対する債務の存在を勤務先に知られることになり、そのことも一因となって当時の勤務先を退職せざるをえなくなったなどの精神的苦痛を受けたことが認められるところ、右精神的損害を慰謝する金額としては金200万円を相当と認める。また、原告が本件訴訟を追行するために弁護士費用のうち金20万円は被告会社において負担すべきである。」

本件については、公証人の責任がなぜ認められなかったのか、残念です。

控訴するかどうかは、検討中です。