公証事務上の問題点

 民事法情報・98(1994/11/10)38頁以降に紹介されている「公正証書」にかかる判例等を紹介したい。これは、法務省民事局第一課長が報告されているものです。



一、遺言公正証書

1、遺言能力

遺言能力を否定された例


遺言能力を肯定された例


2、口授

 少なくとも「はい」なり、「いいえ」なり、口で言ってもらわなければ口授にはならない、というのは確立した裁判例である(家裁月報28巻7号25号)




口授を肯定したもの

言葉が不明瞭な遺言者の発音を、日頃から聞き慣れてその意味を了解できる家政婦が遺言者の意向で通訳をして公証人に伝えたという事案。




4、証人


 遺言公正証書にまつわる争いは、まさに、骨肉の争いとなります。しかも、遺言した人は、死亡しているわけですから、相続人の間にもたらされる亀裂は、修復が困難なまでになる可能性もあると思います。

 遺言公正証書の作成に立会する証人について、次のような協議結果が明らかにされているという。

 証人についてて印鑑証明書等により身元を明らかにさせることは法律上要求されていない。しかし、証人欠格事由(民法974条)のうち成年者がどうかを確かめるために印鑑証明書もしくは住民票等を徴する必要が在る場合があろう。未成年以外の欠格事由については、証人は、遺言者の側で、その責任において選任してくるものであるから、公証人としては、その有無を一応関係人に口頭で確かめるだけで責任を果たしたとみる考え方もあろう(昭和57年2月16日東京公証人会法規委員会協議結果)。

ドイツ公証人に課せられている教示義務と比してその違いに愕然とします。

注)民法974条 左に掲げる者は、遺言の証人又は立会人となることができない。
 ・未成年者
 ・禁治産者及び準禁治産者
 ・推定相続人、受遺者及びその配偶者並びに直系血族
 ・公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び雇人