「公証事務ハンドブック」より
法務局は、管轄下の公証役場を一年に2回検閲するという。検閲の際に、公証事務上問題となることについて「指摘」をするという。それらの指摘をまとめた本として、「公証事務ハンドブック」なる本ある。(「公証事務ハンドブック」(昭和59年7月発行、「増補改訂公証事務ハンドブック」平成3年7月発行・編者東京法務局民事行政部総務課・日本加除出版)この本に紹介されている「公証役場検閲指摘事例」の中から、いくつかを紹介しようと思う。
証書原本関係
1、作成手続及び形式に関するもの
- 公証人の署名・押印について
- 署名は遺漏(法39条3号)
- 署名はあるが職印の押印を遺漏(法39条3号)
- 作成年月日について
- 作成年月日の記載を改竄したもの(法38条1項)
- 作成年月日の記載を遺漏(法36条10号)
- 嘱託人
- 住所が添付の印鑑証明書と符号しないもの
- 委任状に記載された受任者(甲)と原本に記載された代理人(乙)の相違
- 嘱託人の確認
- 証書に「面識がある」と記載すべきところ、「面識がないので印鑑証明書を提出させて人違いでないことを証明させた」と誤記したもの
- 「面識がある」との記載を脱漏したもの
- 委任状の受任者の記載
- 受任者の氏名の記載を遺漏
- 委任状の委任者の氏名・住所・押印
- 委任者の氏名の記載を遺漏
- 委任年月日
- 債権契約日以前に作成した委任状を添付しているもの
- 委任事項の記載
- 契約当事者の記載がなく具体性を欠くもの
- 陸の定めの記載があるのに原本には利息を付さずと記載されているもの、又はこの反対の記載をしたもの。
- 利息・利率・損害金が原本の記載と相違
- 物件の表示の記載を遺漏
- 印鑑証明書の添付
- 添付を遺漏
- 当事者以外の印鑑証明書が添付されているもの
- 印鑑証明書の期限
- 作成後6か月の期限を経過しているもの
2、内容に関するもの
- 消費貸借契約・債務承認弁済契約に関するもの
- 債務が特定しないもの
- 割賦弁済について割賦金合計額が貸金額を超過しているもの
- 利息及び損害金に関するもの
- 利息制限法に違反するもの
- 期限の利益送達約款に関するもの
- 債務者に対して著しく不利益なもの
- 「債務者が債権者に無断で住所・職業を転廃したとき」としたもの
- 「債務者又は保証人が債権者に対して他に負担する債務の不履行のとき」としたもの
- 「債務者が債権者に対する債務の一つでも期限に弁済しなかったとき「としたもの
このような内容について、実に事細かく事例が紹介されている。以下、項目だけ紹介する。
- 事由不明確・客観性のないもの
- 自力救済に関するもの
- 賃貸借契約に関するもの
- 借地法・借家法の規定に違反するもの
- 賃借物が特定しないもの
- その他
- 抵当権等に関するもの
- 目的物件が特定していないもの
- 債権の範囲が特定していないもの
- その他
- 遺言・遺産分割に関するもの
- 遺言に関するもの
- 遺産分割に関するもの
- 内容のそご及び文理・つじつまのあわないもの
- その他
- 強制執行について
- 認諾に関するもの
- 執行文の付与
(定款の認証関係は記載しない)
公証役場検閲の際の指摘事項は、実に様々だが、その多くは、「えっ」と驚くような内容だ。殆どすべての公証人の方は、このような指摘をされるようなことはないのだろうが、端的にいわせてもらえば、「あってはならない」はずのものだとおもうものが多い。特に、内容に関するものについていえば、「こんな指摘がされているのに、なんで、いまだに、この内容の公正証書が作成されているの?」と思うようなものだ。 ちみなに、公証人は、「身元保証金」を国庫に納付することとなっている。 身元保証金の額は、次のようになっている。
都内23区内又は大阪市内に役場設置 3万円
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